白蛇と伯爵令嬢
王立魔法高等学校の三年になった。悪役令嬢物語の本編だ。 ヒロインは1年早く編入学してきたが。
婚約者であるハリーは、ヒロインに引かれていき、何かの事件をきっかけに、本物の愛が芽生える
寮にいるときは気付かなかったが、校内は少し嫌な雰囲気が残っている。まだ、『魅了』の効果が残ってるのだろう。 ニョロが戻ってきて、どうなるだろうか。
オリビアの両脇には、エレとソフィアがピッタリ寄り添い、ララを警戒している。
クラス替えはないので、ソフィアは隣のクラスだ。
三年時、騎竜クラスは、ほぼ王立騎士団との合同練習になる。ホームルームのみ、基礎クラスに戻る。
ソフィアと別れ、エレとクラスに入ると、髪色が変わっている事に、ざわめきが起きた。
「嫌な事があったから、気分転換よ」
ニッコリ微笑むオリビアに、何かを察してくれて、それ以上は聞かれなかった。
※
騎竜クラスに戻ると、ソフィアとユリウスが慌てて、オリビアに駆け寄ってきた。
「ねぇ、この夏の間、ララがハリーの領地にいたって聞いてる?」
「え? 聞いてないわ……」
ララは選抜チームだが、編入してきたので討伐の実戦がない。なので、ハリーの領地で、討伐の実戦をハリーと行っていた。と言うことらしい。
正確には、ハリーのクラスの選抜チーム全員で。なのだが……
「それだけじゃなくて、なんだか二人、ずっーと一緒だったらしいわよ」
オリビアは、実際に見たり聞いたりしたわけではないので「ありがとう。気に止めておくわ」と返した。
※
「あの、言いにくいんですけど、ヴァルトス様とクロニエ様、距離が近いと思うんです」
「今日も二人で、テラスでランチをしていました」
オリビアのところに、ハリーとララの情報が嫌と言う程、耳に入ってくる。
みんな、何をそんなに心配しているのだろうか?同じクラスで、同じ選抜チームではないか。
オリビアは、あまりにも異口同音なので、一度ハリーに話をしておこうかと考えた。
昼食時に、よく二人がいる。と言われるテラスに、エレと共に訪れてみた。
中庭の噴水が見えるテラスに、向かい合って座っているハリーとララを見つけた。
オリビアとエレは、バイキングで選んだ食事をトレーに乗せ、彼らの近くへ向かった。
「御一緒して、よろしいかしら?」
ハリーがオリビアを見上げるが、なんで?とでも言いたげだった。
「他にも席、空いてるけど?」
「少しお話したくて」
違和感を感じ、涙が溢れそうな程、オリビアは緊張した。そして、吐き気を催す程の不快感を感じた。
後ろのニョロを見ると、テラスの周りをクルクル周りだした。
ハリーは、何も言わずに、空いている椅子を少し引いてくれた。
その様子を見ていたエレが、ララに声をかけた。
「ララ様、私達はあちらで御一緒しませんか?お二人は、積もる話もありますでしょ?」
「なんで?ララがいて困る話はないけど?」
ハリーが不思議そうに、エレを見上げる。
「オリビアと二人で話したいって、思わないの?」
思わず砕けた口調になってしまっていた。
「なんですかぁ?オリビア様、嫌われちゃったのおぉ?」
ララが、頬杖を付き、ニヤニヤしながらオリビアを見上げる。
音を立てトレーを置き、座る。なんとも言えない気持ちだ。
「オリビア様、お行儀悪いですよ?伯爵令嬢ですよね」
「そうね。でも、あなたもお行儀悪いわよ。人の婚約者と二人きりで過ごしているのは、どうなのかしら?」
穏やかにハリーに話すつもりでいたのだが、ララに言ってしまった。意地悪ではないだろうか?とオリビアは心配する。
ハリーとララは、顔を見合せ、声をあげて笑った。
「オリビア、そっくりそのまま返すよ。君も、ウラニスや殿下と二人きりで過ごしているよね?」
「何の事ですか?」
思わず、オリビアは立ち上がる。
「そうゆう事だよ。本人達にその気がなくても、周りからは、違って見えている。って事だよ」
「ハリー様、オリビアは、けっして二人きりでなんてなっていません!クラスのみんなと一緒です。私もいつも一緒にいます!」
エレが、声を荒げる。
「それを言うなら、私たちも一緒ですよ。ほら」
ララが指し示した先には、選抜チームがいた。
「ほらって、かなり離れていませんか?」
「仕方ないだろ?席が、そこしか空いていないんだから」
不機嫌に言い放って、ハリーは立ち上がる。
「ララ、外に食べに行こう」
まだ半分以上、手付かずで残っているトレーを持ち、二人は食堂へ戻っていった。
オリビアは、力が抜けたように、椅子に座り込んだ。
「大丈夫?」
心配そうにエレがオリビアに声をかけた。うつむくオリビアの瞳から、涙がこぼれる。
(こんな気持ちで、婚約破棄なんてできないじゃない)
膝にシミが広がっていく。
「ニョロが来て、不快感感じはなくなったのに、ハリーの様子、変わらなかったわね……」
エレが、オリビアの背を撫でながら呟く。ニョロがオリビアの腕の中に頭を突っ込んでいく。
「フフッ、慰めてくれるの?」
不快感は消えていたのに……と、ニョロの頭を撫でながら、オリビアも、そう思っていた。
(本当に、ララを気に入ってしまったのね)
オリビアの頬を、再び涙が濡らす。




