白夜の国
オリビアは天鼓に乗り、エレの領地、クロニエに向かっている。
天鼓の額の傷痕は、もう消えないようだ。自分を守る為に、身体を張ってくれた事は聞いたが、その理由までは思い出せないし、誰も教えてくれない。
きっと、聞かない方がいい理由なんだろう。と思った。
途中、隣の領地のウラニスと合流した。相変わらず寡黙だが、オリビアの記憶の彼は、いつも嫌味を言ってきていた。その事を尋ねてみると「うるさい」と、一蹴された。
「そろそろ寒くなるから、マントを着たらどうだ?」
ウラニスは、ごそごそとカバンを漁り、マントを羽織った。
オリビアも、マントを羽織ると、近くに火球が浮かんでいるのに気がついた。ウラニスの魔法だ。
「相変わらず優しいのね。暖かいわ、ありがとう」
「フン」
ソッポをむくウラニスだったが、頬が少し紅くなっていた。
※
エーリオン王国の北の端、クロニエ伯爵領にやって来た。領地の半分以上は凍てつく大地の為、土地を魔法で暖めて、生活しているらしい。その仕組みは、よく分からない。
初めて見る雪景色に感激していると、ウラニスが「そろそろ伯爵家に着くみたいだ」と、下を指差した。
何頭かの騎竜が屋敷の前に、たたずんでいるのが見えた。
手を振っている令嬢も見える。エレだろうか。
白銀の世界に降り立つと、寒さに身震いする。
ニョロは雪に潜ったり、転がったりと全身で楽しんでいる。氷龍だからなんだろうか。楽しそうだ。
エレに連れられて、オリビアとウラニスは応接間に通された。
そこには、すでにソフィアやスクトゥム王子、ユリウスがソファーに座って待っていた。
クロニエ伯爵の話によると、この時期に結界の張り直しをしているだが、結界の側にハグレ魔獣が現れることがあるので、それの退治を頼みたい。との事だった。
「魔獣……」
オリビアが、初めてみることになる、魔が生き物に取り付いた魔物だ。
討伐の仕方は、『総魔』と変わりないと言われるが、生き物の姿をしていると思うと、自信がなくなる。
「可愛い姿だったら、どうしよう……」
割と本気でオリビアは心配している。そんな様子に気付いたウラニスが、小馬鹿にする。
「心配しないでも、魔獣は可愛い姿ではない」
「……っ、可愛い魔獣だっているかもしれないでしょっ」
「万が一、可愛い姿をしていたら、どうするの?」
ユリウスが、笑いを噛み殺しつつ聞いてきた。
「……て……手懐ける?」
クロニエ伯爵までも笑いだす。
「白蛇令嬢だけではなく、魔獣令嬢の通り名も付いてしまいますね」
大笑いしているソフィアやエレに慰められながら、明日からの討伐の説明を受けるオリビアだった。




