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再会

 ウェントス領に、イザニコスメンバーとオリビアの婚約者ハリーが訪ねてくる。


 エントランスで彼等の到着を待つオリビアは、大好きなラベンダー色のドレスを身にまとっている。白銀の髪色に良く映える。

 緊張している彼女の後ろには、騎竜の天鼓(テンコ)と氷龍のニョロが控えている。


 オリビアの視界に馬車が入ってきた。姿勢を正して到着待つ。

 フォルティスも屋敷から出て来て、オリビアの横に並んだ。

「緊張してる?」

「えぇ、かなり」

 と、答えたオリビアは、深呼吸をする。


 エントランスに止まった馬車の扉をフットマンが開ける。オリビアは、ドキドキしながら()()()が降りてくるのを待った。


 しかしながら、降りてきてのは一人だけだった。


「久しぶり、オリビア。僕は、ハリー・ヴァルトス、君の婚約者だよ」

 と、柔らかく微笑んだ。オリビアが大好きな微笑みだ。

「ごきげんよう、ハリー様」


 挨拶を返しながら、胸が締め付けられるようなドキドキ感と、全身に鳥肌が立つような恐怖の相反する感情に戸惑っていた。

(私と婚約者との関係って、どんな様子だったのかしら?)


「何故お一人で?」

「最初、皆で騎竜に乗って訪ねるつもりでいたんだけど、僕は認めてもらえなかったよ。なので、僕だけ馬車なんだ」

 おどけて見せたハリーだったが、どこか寂しそうだった。


「認めてもらえなかった。とは?」

「あぁ、記憶がないんだっけ?騎竜乗りの候補にはなったんだけど、騎竜に選んでもらえなかったのさ」

「それは、残念でしたね」

「あぁ、今年こそ、オリビアと同じ景色が見たかったんだけどね。来年の最終選考にかけるよ。それまで、呆れないで待っててくれる?」

 と、オリビアの手を取り唇を落とした。


 真っ赤になっているオリビアの耳に、咳払いが聞こえた。ハリーが頭を上げると、なんとも言えない表情のフォルティスと目が合った。


「よく来たな、ハリー。屋敷に案内しよう」

 と、フォルティスはハリーの腕を取り、ズンズンと歩きだした。

 オリビアは、置いていかれないように、早足で二人のあとを追った。


 ※


 談話室で、オリビアは一人、皆の前に立つ。


「皆様、ごきげんよう。オリビア・ウェントスですわ。記憶が無くなってしまったので、御迷惑おかけすると思いますが、よろしくお願いいたします」

 と、カーテシーをする。


「オリビア!元気そうね。それにしても、ずいぶん雰囲気が変わったわね、私はソフィア・アルメデス。兄のノアが、オリビアのお兄様と同じく王立騎士団よ」

 若草色の髪色が綺麗な令嬢だ。


「ニョロと並んで立っていると、月の女神みたいだわ。私はエレ・クロニエ。同じクラスよ。」

 透き通ったアクアマリンの瞳が印象的な令嬢だ。


「私はスクトゥム・エーリオン。同じクラスだ。」

 褐色の肌がたくましく見える。


「僕は、ユリウス・ドゥーカス。隣のクラスだよ。」

 穏やかなそよ風のような雰囲気だ。


「ウラニス・フォンターナ、同じクラス」

 相変わらず、ぶっきらぼうだ。


「僕は……大丈夫かな?」

「はい。ハリー様です」

 ニッコリ微笑みながら、答えた。


 ソファーに腰掛けながら、オリビアは心配をかけた事を侘びる。そして、学校生活の事はフォルティスとサルビアが知っている事だけは聞いているが、なにせ記憶が無いので、騎竜クラスや他で迷惑を掛けてしまうと思う。と謝った。


 スクトゥム王子が、ゆっくり思い出せばいいし、記憶が無くたって、イザニコスの友情は変わらない。と、オリビアを安心させた。

 そして、オリビアの記憶を取り戻すきっかけになればと、学校生活の想い出話に花を咲かせた。


 ※


「ニョロー、助けてくれよ。ララがしつこいんだよ」

 ユリウスがニョロを撫でながら、愚痴をこぼしていた。

 基礎クラスに戻る度に近寄ってきて、自分も騎竜クラスに入りたいだの、今度一緒にお茶をしようだの言い出すので、煩わしいようだ。


 ララ、と言う名前を聞いた時、オリビアの紅茶を持つ手が一瞬止まった。

(何だか胸騒ぎがする。それに不快だわ。何かしら?)考え込んでいるオリビアを見て、ハリーがユリウスをつつく。


 エレが話題を変えるように、領地に遊びに来ないか?とオリビアを誘った。

「この時期の『魔』は狂暴性がないから、腕慣らしに丁度良いと思うわ」

「三年になる前に、討伐の感覚を思い出せたらいいわね」

 と、ソフィアも賛成する。


 エレの父親であるクロニエ伯爵が、正式にイザニコスに討伐依頼を出しているはずなので、夏季休暇の後半に連絡が行くと思うから、楽しみにしていて。と伝える。

「寒い地域の『魔獣』は巨大だから、それだけ覚えておいてね」


 騎竜クラスではないハリーだけが、つまらなそうに話を聞いていた。


 ※


 楽しい一時はあっという間に過ぎて、皆、領地に帰るために騎竜の元へ向かった。


「またね、オリビア」

「エレの所で会おう」

 お互いに別れの挨拶をして、小さくなっていく友人達を見送った。


 ハリーの馬車の支度も済んだようなので、エントランスに向かう。

「この休みも、オリビアは討伐で忙しいんだね」

「そうなのですか?。去年も討伐に出ていたんですか。それなら、攻撃魔法の感覚を早く取り戻したいですね」

 急にハリーが立ち止まる。

「ねぇ、オリビア。卒業したらどうするの?」

「王立騎士団に入団するのでは?」

 と、答えながらオリビアは、以前にも、こんな話をしたような気がしていた。

「そうだよね……」


(この人は、何を言っているのかしら?王立魔法高等学校は、騎士団を目指す学校だと思ったけど……)


 返事に困って黙り込むオリビアに

「ごめん。僕の悪い癖だ。騎竜乗りになれなくて、ちょっとね」

 と、寂しげに笑う。


 エントランスに着いたハリーは

「じゃぁ、学校で」

 と、オリビアに手を降りながら、馬車に乗り込んだ。


金曜21時に、投稿できるよう、頑張ります。

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