その後Ⅱ
ヘルバとエレ、ソフィア、ウラニス、ユリウスは王立騎士団内を歩いている。
それも、誰にも不審がられずに。
王立騎士団の門の前まで、ヘルバを案内して別れる予定だったが、ヘルバに、もう少し付き合いなさい。と言わた。
ウラニスが守備兵に声を掛けようとすると
「お待ちしておりました」
と、門が開けられた。
その後は、ヘルバがクンクンと匂いを嗅ぎながら「あっち」「こっち」と、騎士団内を自由に歩き回っていた。
「あぁ、ここだね」
と、騎竜専門医務室と書かれた扉を開ける。
中には、王立魔法高等学校で会った、アンナ副団長、オリビアの兄フォルティス、ソフィアの兄ノア、ウラニスの兄イリオス、ララのお守り役だったオスカー、スクトゥム王子と回復魔術師達がいた。
一同の視線が集まる。大丈夫なのか?とウラニス達が心配したが、当の本人は「やぁ」と言いながら、中に入っていった。
ただ一人、フォルティスだけ表情が固まった。
「本当にあなたは必要だと思う時に、瞬時に来ますね」
と、アンナ副団長がヘルバに歩みより、肩を抱いた。
「私は何でもお見通しだよ?で、この子だね」
と、部屋の中心でうずくまる騎竜の天鼓に近寄った。
額の傷口を見ながら「立派だったね」と声を掛ける。
カバンをゴソゴソと漁ったヘルバは、いくつかの瓶を取り出し、乳鉢と乳棒をで調合を始めた。
「さて、出来たよ」
と、天鼓の傷口に調合した調合薬を塗り込む。
そして、違う瓶を取り出し
「あなたとあなたとあなたと……あなたも、今から出す薬草茶を飲みなさい」
スクトゥム王子、オスカー、ノア、イリオスが指をさされた。
なんだ、なんだ?とざわついている彼等を他所に、いつの間にか準備されたポットに、煎じた薬草を入れている。
「さ、飲んで飲んで」
ヘルバが薬草茶の入ったコップを握らせる。
コップを握らされていないウラニス達にも、あの薬草茶の匂いが漂ってきた。
「うっ……」
スクトゥム王子が、コップの中身を見て怯む。しかし、意を決して一息に飲み込んだ。
「……気分が晴れたぞ? 」
不思議そうにコップの底を見た。同じように、薬草茶を飲み干したオスカー達も「胸の支えが取れたようだ」と感想を述べた。
その様子を見ていたソフィアが
「兄さん達も『魅了』にかけられてたって事?」
と、ヘルバに尋ねた。
「待って。僕は掛けられてないはずだよ?解除魔法は得意なんだ」
と、否定するオスカーに
「見事に『魅了』にかかったもんだね」
と、ヘルバが呆れる。
どうやら、解除魔法が得意だと慢心していた隙をつかれ、『魅了』にかかっていたようだった。
ウラニス、ユリウスと同じように、あと数週間あれば、すっかりララ信者になっていただろう。
「私達は、ヴァルトス領でしかララ嬢に会っていませんが……」
と、イリオスがヘルバに尋ねると
「一度ターゲットを決めて『魅了』をかければ、離れていても『魅了』する事はできるよ。まぁ効果は直接よりかは、落ちるけどね」
なるほど……と一同が納得したところで、ノアが尋ねる。
「なぜ、フォルティスは『魅了』されていないのですか?」
そう言えば、フォルティスは薬草茶を飲むように言われていない。
「彼は龍の加護があるんだよ。ねぇ」
と、意味深にフォルティスの顔を覗き込む。
「……私は、話すことができません」
と、依然として固まったまま答える。
「なんだ、誓約魔法か」
と、アンナ副団長が残念そうに聞くが、そんな可愛い魔法じゃないですよ!とフォルティスが膨れっ面をする。
カラカラ笑いながらヘルバは、フォルティス達に向き直り
「フォルティス、イリオス、ノア。ニョロの欠片とオリビアを連れて龍の里に来なさい」
と言って、騎竜専門医務室を後にした。
王立騎士団の外に出たヘルバは、すっかり暗くなった空を見上げながら
「フォルティス、大きくなったな」
と、懐かしそうにつぶやいた。




