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事件Ⅲ

「やめて!離して!」


 取り乱しているオリビアを、ハリーがなだめようと必死に声をかける。

「落ち着いて!騎士団に任せよう!」

「ニョロは?ニョロはいなくなってしまったのよ?」

 オリビアは、渾身の力でハリーの腕から逃げようとしている。

「なんで、ここにいるの?あなたがララのパートナーにならないから、物語が変わったのよ。ニョロを返して。あなたのせいよ!」

「何を言っているんだ?」

「私は悪役でいいから、婚約破棄でいいからニョロを返して!」

 オリビアは、ハリーの胸を拳で叩く。そんな、オリビアの肩をさすりながら、ハリーは途方に暮れていた。


「オリビア、そんな言い方はハリーに失礼だぞ」

 オリビアの兄、フォルティスが医務室に入ってきた。

「兄様……」

 オリビアの涙でぐちゃぐちゃになった顔を、フォルティスがハンカチで拭う。


「しばらく領地で静養させようと思う」

 誰に言うでもなく、フォルティスがつぶやく。

「会いに行ってもいいですか?」

「オリビアが落ち着いたら、連絡する」

 フォルティスに即され医務室を出るオリビアを、ハリーは見送る事しかできなかった。


 ※


 王立騎士団の騎竜専門医務室に、王立騎士団のアンナ、ノア、イリオス、オスカーそれにスクトゥム王子が集まっている。


「おかしいんだよね……普通のケガなら回復魔法が効くはずなんだけど……」

副団長のアンナが首をかしげる。

 他の回復魔術師も不思議そうに額に手を当てる。

「何かあるんですよねぇ。ここに」

そう言いながら、いまだ塞がらない傷口を指差す。

「なんですかねぇ?何か混ざってるような……」

「受けたのは浄化特化魔法じゃないんじゃないですか?」

部屋が静まり返る。皆が心に思っていた事だ。


「でも、ウェントス領で『総魔』を一発で消滅させてたしなぁ……」

「近くで見ていたけど、おかしな点は無かったよね。ただ、わざわざ特例で王立魔法高等学校に入学させるほどかとは思ったけど」

王立騎士団のイリオスとノアが、不思議そうに話す。


「実は……」

と、スクトゥム王子が話を切り出した。

 オリビアが謹慎に入った頃に、校内で古代魔法の『魅了』が使われているようで、術者はララ・モラレスのようだ。

 教員も含め生徒の半数近くが『魅了』にかかっているようで、狂信的にララを崇拝している。

 今後、ララの魔力が強まったら、王立魔法高等学校はどうなるか、わからない。

 そして、ララはオリビアを敵視していて、オリビアが謹慎処分を受けたのは、ララが『オリビアに階段から落とされた』と騒いだせいだ。と伝えた。


「なるほど……」

一堂が納得した。

 ララはオリビアを()()していたから、オリビアを守る物に対して()()()()()()が効いた。ということだ。


「そうなると、オリビアと仲の良い令嬢達、エレやソフィアも……」

「考えたくはないが、攻撃は効くだろうな……」

「でも、なぜオリビア嬢が謹慎してから、急に『魅了』が発動したんだ?」

ノアとイリオスが考え込む。


「いや、『魅了』自体は、前からララ嬢は使っていたと思うよ?」

と、オスカーがヴァルトス領で、ララのお守りをしていた時に、不快感を感じて解除魔法を使っていたことを話した。

「今思えば、私も使われていたかもしれない」

スクトゥム王子が、階段から落ちたララを抱えて、医務室へ運んでいたときの不快感を話す。

「君たちは、本当に魔力が高いんだね。取り込まれなくて良かったな」

と、アンナ副団長が、豪快に笑う。


「……ニョロなのか?」

考え込んでいたスクトゥム王子が、思い付いた。


 思い返せば、ニョロはオリビアといつも一緒にいた。三日間、校舎内に居なかったのは()()()だ。


「ニョロが()()()()ではなく、()だとしたら、あり得なくもないかも」

 イリオスが、我が領地に伝わる話だけど。と、前置きをして話し出す。

「フォンターナ領では、海龍伝説があるんだけど……」


 古来、龍が人々と共に地上を守護していたが、知恵を付けた人類が龍を悪用するようになり、龍は人々の前から姿を消した。

 以来、龍は結界に守られた世界に住んではいるが、変わらず地上を守護している。


「その結界に守られた()()()が、我が領地内にある。と言われていて、その里から流れ出ていると伝わる川がドラコー川と言い、ウェントス領を流れニョロが居たというドラコス湖にたどり着く」

と言って、一堂を見渡す。

「言いたいこと、わかる?」


「古代魔法は、()には効かない。とも言われています」

回復魔術師も同意する。

ニョロは、ララが校舎内で発動させていた『魅了』を、打ち消していたのかもしれない。


「だとしても、ニョロは、もういない……」

スクトゥム王子がうつむき、拳を握りしめる。


「龍は()()()()って、言われているんですよ。殿下」

 イリオスが、スクトゥム王子の肩をトントン、とつつく。

「じゃあ、フォルティスに行かせる?」

と、ノアが言ったところで

「何か用か?」

フォルティスが騎竜専門医務室に、入ってきた。


「オリビアの様子はどうですか?」

スクトゥム王子が心配そうに、フォルティスに尋ねる。

「取り乱している。ひとまずタウンハウスで隔離している。あいつが本気を出したら、街一つくらい、簡単に消滅するからな……」

と、首をふる。冗談には聞こえないので、誰も笑えない。

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