事件Ⅱ
「ニョロ……」
エレが、キラキラ光っている砂粒をすくい上げる。そして、自分のハンカチにつつんだ。
「天鼓しっかりしろよ!」
ウラニスが、天鼓の身体を擦る。
「ちょっと!みんな落ち着いて!ニュム!なんとかして!」
ソフィアが、騒ぎ立てている騎竜達を落ち着かせようと、身振り手振りで意思の疎通を図る。
助けを求められているニュムも、興奮状態なので埒が明かない。
スクトゥムもブレイブに、他の騎竜を落ち着かせるように声をかけてはみるが、ブレイブ自身もやはり興奮している。
騒ぎに気づいた生徒達も集まってきて、教員達が校舎に戻るように指導している。
「王竜を騎士団から呼んでこないと無理かもな」
と、教員達が相談している。
「じゃあ、僕が行ってくるよ」
と、ユリウスがアウラーに背に跨がった。
アウラーは、他の騎竜のように興奮しているようには見えなかったが、主人に似たのか、静かに怒っているようだ。
※
王立騎士団の騎士団副団長、アンナ・ヘスティア伯爵令嬢が燃えるような赤髪をなびかせ、王竜の番と共に王立魔法高等学校の飼育場へと降り立った。
続いて、ウラニスの兄イリオスとソフィアの兄ノアが、ユリウスと共に降り立った。
「ずいぶんと興奮しているね。クイーンが来たのに気付かないなんてさ」
と、王竜の番と共に、飼育場の中に入る。
クイーンが、頭をもたげ嘶くと、先ほどまで落ち着きなく動き回っていた騎竜達が、嘘のように大人しくなった。
「さて、次はこっちだね」
天鼓に近付いたアンナ副団長は
「こりゃひどいね……」
と、眉をひそめる。天鼓の額に回復魔法をかけながら、確認する。
「本当に浄化特化魔法を浴びたのかい?」
浄化特化魔法は、基本、術者が敵と認識した物に対して発動する術なので、『魔』以外に作用するとは考えにくいが、現に精霊は消滅し、騎竜はケガを追った。
「ちょっとここではなんだから、一度騎士団に戻ろうか」
アンナ副団長が、スクトゥム王子を捜し、膝を折り頼む。
「殿下も一緒に来ていただけますか?」
「もちろん」
アンナ団長補佐が、天鼓を王立騎士団に移動する為に、一度きりの魔方陣を展開した。
騎士団に戻ろうとして騎竜に跨がる彼等に、エレが駆け寄り、何か包んであるハンカチを手渡しながら頼みこむ。
「フォルティス様に、これをオリビアに渡して欲しいと、お願いできますか?」
イリオスが近寄り、受け取った。
「確認だけど、これは?」
「……ニョロだったものです……」
「……わかった」
と、言って、懐にしまった。
王立騎士団へと向かった彼等を見送り、ウラニス、ユリウスは、顔を見合わせる。
「これから、どうなるんだろうか……」
「ニョロ……精霊って復活しないの?復活祭とかあるじゃん」
「海龍を祀る儀式はあるけど、復活はどうだか……」
エレとソフィアも集まってきた。
「天鼓のケガも、心配よね……」
「オリビア、大丈夫かしら……」
彼女の受けた喪失感は、計り知れない。




