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階段の罠

 それからというもの、何かにつけて、ララはオリビアに絡んでくる。


「オリビア様!私が大事にしていた鉢植え、落としましたね!」

「オリビア様!私の教科書がありません!」

 毎回、違う男性を片腕に、取り巻きを連れてやってくる。


「オリビア様!移動教室の持ち物の連絡が来ません!」

 今日も、ララは訳の解らない言い掛かりを付けに、オリビアのクラスにやって来た。

 そもそも、ララは隣のクラスであり、移動クラスはない。移動教室があるのは『騎竜クラス』だけだ。


「ララ様は、暇なのですか?」

 オリビアが、移動教室の準備をしながら、ため息と共に聞く。

 次は騎竜クラスなので、飼育場に移動しないといけない。少し急いでいるオリビアは、声を荒げた。

「くだらない言い掛かりは、止めてください」

と言いながら、エレと共に教室を出た。


 一階への階段を、降りている途中で気がついた。

(まずいわ。()()だわ!)


 後ろを確認すると、ララが階段の上に立っていた。微笑んだ?と思った瞬間、落ちてきた。正しくは、飛び降りてきた。

 まずい!と思ったオリビアは、とっさに風魔法で、ララを拾った。


 フワッと、ララを床に下ろす。ララが、降り立ったと思ったその時


「キャーーーー!」


彼女は、悲鳴をあげて、座りこんだ。そして、叫んだ。

「オリビア様に、突き落とされました!」


(あぁ……積んだわ……)

と、オリビアは全てを悟った。

今までの言い掛かりは、全て、この()()()()()()の為だったのかもしれない。


 騒ぎを聞き付けた人々が、集まってくる。

「階段から、落とされたらしいよ」

「騎竜クラスの子が、魔法で落としたんだって」

「私、あの子が魔法を使っているのを、見たわ!」

「違うよ。突き落としてたって」

 だんだんと嘘が真実であるかのように、広がっていく。


「ひとまず、医務室に行くわよ」

 と、オリビアはララに声をかけるが

「やめて!触らないで!」

 と、暴れる。仕方ないので、エレが連れて行こうとするが、やはり暴れて難しい様子だ。


「何しているんだ?」

 飼育場に行くために、通りがかったスクトゥム王子が、二人に声をかけてきた。


「殿下!聞いてください!オリビア様が私を、階段から突き落としたんです」

「なんだって?それは大変だな、医務室へ行こう。痛まないか?」

と、チラッとオリビアを見た後、ララを抱き抱える。

周りから、声にならない歓声があがった。


「殿下、私も御一緒します」

と、オリビアが並ぼうとすると

「いや、オリビアは寮で、連絡があるまで待機していてくれないか?」

と、言い残して、ララと二人で、正確には、取り巻きの男性数名と共に、医務室へ向かった。


(寮で待機って、私……謹慎?)

 血の気が引き、固まっているオリビアに、ウラニスが近寄ってきて、囁く。

『状況確認できるまで、寮にいた方が安全って事だよ』

 オリビアが周りを見渡すと、視線が痛い。みんながコソコソと自分を見て、何か話している。

「怖い」初めて恐怖を感じたオリビアは、言い付け通り寮の自室で待機しようと歩きだした。


 ザワザワとした雑踏の音が、すべて自分を悪く言っているように聞こえてきた。

 必死に涙をこらえ、前を向き歩いているオリビアを、エレとウラニスが追いかけ「送るよ」と、一緒に来てくれる。とても心強く感じるオリビアだった。


 ※


 スクトゥム王子に抱き抱えられて、医務室へ向かっているララが、彼の両手が塞がっているのをいいことに、スクトゥムの()()の頬に手を当てた。

「この肌色、かっこいいですよね……」

「……いい想い出はないがな、そう言われるのは、うれしいな」

「ご苦労されたのですね……」

 と、ララはスクトゥムをいわたるように話しかける。


 そして、今まで褐色の肌色の事で色々悩んだかもしれないが、私にはあなたの苦労が、手に取るようにわかる。理解できる。これからは、私に悩みを話して欲しい。一人で抱え込んではいけない。と、切々とスクトゥムに訴えた。


 スクトゥムは、身体にまとわりつくような()()()()()を払いたくても、手がふさがっていて払えないという、もどかしさと闘いながら、ララの話を聞いていた。

 自分の心が乗っ取られるような、恐怖を感じたときに、ようやく医務室についた。

 スクトゥムは心の底から安堵し、ララを養護教員に引き渡した。

 解除魔法を自分にかけながら、この不快感はなんなんだろう?と不思議に思うのだった。



スクトゥム王子の母親は、南国の王女の為なのか、皆より少し肌色が濃く、褐色である。

~課外授業 Ⅲ 参照~

次話は、金曜日の21時頃を予定しています。

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