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ヴァルトス領の『総魔』Ⅵ

 騎士団のメンバーやイザニコスに、持ち上げられ気分を良くしたララは、オスカーに言われるまま、指定された『濃い澱み』に浄化特化魔法を撃ち込んでいく。


 イザニコスの令嬢達に比べると、威力は若干、劣る所があるものの、一発で消滅・浄化できるのは効率がいい。

 オスカーも、一発で消滅・浄化できそうな『濃い澱み』を選んで指定している。

 ララは、オスカーにおだてられ上機嫌だ。


 その様子を確認した、他のメンバーは、各々『濃い澱み』の消滅、浄化に向かった。


「キチンと授業を受ければ、もっと威力が増すのに勿体ないわね」

 と、エレがララをチラリと見ながら、ソフィアに囁く。

「そうなのよねぇ。せっかくの浄化特化魔法なのに、私達でも到達できるレベルだからね」

「あれくらいなら、オリビアの方が凄まじいわよねぇ」

 と、天鼓(テンコ)に跨がり、鼻歌を歌いながら、器用に種類の違う、複数の攻撃魔法と浄化を操り放つオリビアを見る。

「のってくると、威力が増してくるのも怖いわー」

 と、彼女達は笑い合う。


 見られていることに気付かないオリビアは、大きくなっていたニョロと、連携を取りながら、次々と『濃い澱み』を消滅、浄化していく。


 ハリーも、風魔法で砂煙を払い、浄化し、撃ち洩らしの()を見つければ『火槍』で消滅と、騎竜クラスには、威力ではまだ劣るものの的確に、消滅・浄化とサポートできている。

 他の選抜メンバーは、砂煙を払うだけで精一杯の様だった。


 そんな様子を見ていたウラニス、ユリウスは、騎竜に選ばれる素質さえあれば、学年終わりにチャンスがあるかもしれないね。とメンバーが増えるのを、期待するのだった。


 ※


 順調に『濃い澱み』の消滅・浄化を行っていたメンバーだったが、ララが帰る。と言い出した。

「ねぇ、オスカー。これだけ私が浄化特化魔法を使ったのだから、後は、騎竜クラスでできるはずじゃない?」


 オスカーは(まだ三十分も経ってないよ)と呆れたが

「じゃあ、後は任せて帰ろうか、挨拶だけしておこうよ」

 と、騎士団メンバーに声をかけた。


「ララ嬢、助かったよ。ゆっくり休んで」

「ありがとう」

 と、口々に感謝を伝えたものだから、ララは気分良く手を振っていた。

 その後ろで、オスカーが申し訳なさそうに両手を合わせていたのには、気付いていない。


 ララ達が帰ってから、しばらくして蠕動運動をする黒い紐状の『総魔』の消滅・浄化が終了した。

 ニョロが気にしていた湖の浄化も行い、後は結界士を待つだけとなった。

 湖で泳ぐニョロを見ながら、湖畔に座り、オリビアは歌を口ずさんでいた。


「オリビア、気分が良いみたいね」

 エレが声をかけ、オリビアに並んで座った。

「早く戻って、お茶が飲みたいわ」

「エレも、ずいぶん派手にやらかしたわよね」

 と言いながら、ソフィアも横に座る。

 今年の花薫週間も討伐で終わるわね。と三人で笑い合った。

「そうだ。今年の夏期気分は、私の領地に遊びに来て下さい。ソフィアと違って、開拓はお願いしませんから」

 と、エレが二人に提案した。

「夏の間、太陽が沈まないんです。とっても幻想的ですよ」

 と、彼女はウットリしながら、ふたりに領地をアピールしていた。


 ※


 昨年、ソフィアが二人に開拓を頼んだのは、落ち込んでいたオリビアに、魔力全開攻撃魔法を放つ機会を設ける為の口実だった。


 そのお陰で、ニョロは変体し、オリビアは元気を取り戻して、ハリーと向かい合う勇気を持てた。

 結果、ハリーは自分の気持ちの整理が出来て、オリビアに並ぶ為の努力を惜しまなくなった。


 ※


 オスカーから連絡を受けていた、ヴァルトス騎士団が結界士と侍女達を連れて、現場に到着した。

 侍女達が、討伐メンバー達に、昼食を用意してくれたので、結界士達が、結界を張り終わるのを、食べながら待っていた。


 新しく結界が張り直され、この森林地帯は、数十年は『澱み』の心配はないだろう。

 討伐メンバーとヴァルトス騎士団達が、帰り支度をしていると、結界士達が、不思議そうに話をしていた。


「湖畔周りだけ、新しく結界が張られていたんだよ」

「不思議だよなぁ」

「ララって子は、湖畔周りは近寄ってないらしいし……」


 その会話を盗み聞いてしまった、フォルティス、ノア、イリオスは

(もしかして……)

 と、オリビアを見るのだった。

「いや、無いな」

「ないない」

「あるわけがない」

 と、顔を見合わせ笑いあった。

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