ヴァルトス領の『総魔』Ⅲ
あちらこちらで、爆音と砂煙が舞い上がる。
上空で、騎竜を器用に操りながら、各々が攻撃魔法を放っている。
地上では、ハリーが指示を出しながら、的確に浄化を行っている。
しかしながら、消滅、浄化の進捗状況は良くない。どこからか、『澱み』が涌き出ているかのようだ。
スクトゥム王子が『澱み』の濃い所を重点的に消滅させていくのはどうだろうか?と提案した。
「そろそろ、地上の選抜も疲れてきているだろうし」
と、下を指さす。そこには、疲労困憊の選抜メンバーが、座り込んでいた。もう、魔力も尽きる頃だろう。
たった三人で、浄化を担当していたのだから、無理もない。
一度休憩を挟み、作戦会議を行うことにした。
選抜メンバーには、今日は業務を終了してもらい、明日は、騎馬を連れて来てもらうことにした。
騎竜とちがって騎馬は、普通の馬とおなじで余程の事がない限り、騎乗者を選ばない。
午前中は、手前から順番に消滅を行っていたが、『澱み』が溢れてきて、要領が悪いので、『澱み』の濃い所を先に消滅させていこう、ということになった。
元を叩けば『澱み』は薄くなり、消滅しやすくなるだろう、と考えての事だ。
さっそくチームで別れ、『澱み』の濃い所を目指す。
オリビアは、ニョロが気にしている湖の付近の濃い『澱み』を狙った。フォルティスに意見を聞くと、ニョロが気にしている、事の方に、興味を持ったようだ。
その『澱み』に近づくと、なんとも言えない悪寒がする。上空から見ているせいか、蠢いている様にも見える。
「さて、一発撃ち込んでみますか」
フォルティスが『流星群』を放つ。一瞬、毛虫が跳ねたような動きを見せただけで、いまだ蠢いている。
「なるほど」
再びフォルティスが魔法を放つ様子なので、オリビアは払う準備、スクトゥムは核を狙う準備をした。
『流星群・旋風』
『乱気流』
『雷槍』
立て続けに、攻撃魔法が放たれる。が、オリビアには核が、複数見てた気がした。
慌てて『雷槍』を放つ。スクトゥム、フォルティスも気づいたようで、続けざまに攻撃魔法を放った。
砂煙が舞う。手応えは、合ったように感じたが、不安だったオリビアは『突風』を放った。
視界が晴れ、眼下が見渡せる様になった。取りこぼした核に『澱み』が集まっているのが見えた。
瞬時にフォルティスが『土槍』を打ち込む。
叫び声が、聞こえたような気がした。
スクトゥムが『全癒』を放ち、浄化を行いなが
「今までに、このような事例は報告されているのか?」
と、フォルティスに聞いている。
「自分は、聞いた事がありません。本部に確認します。必要なら応援も……」
と言いながら、他の隊を見て「必要なさそうですね」
と、笑い合う。
他の隊も、異例な事態に上手く対処していたようで、『澱み』が消えている。もはや『澱み』という名称が正しいのか疑問だ。
一旦集まったイザニコス達は、核が複数存在する事を確認しあった。
本音は、王立騎士団本部に確認を取りたいところだが、もう一回だけ『澱みもどき』を攻撃してみて、同じかどうか再確認して、今日は終了する事になった。
※
再び上空に集まり、騎士団に所属している兄達が、相談している。
「やっぱり核が複数個あったね」
「これって『総魔』なのか?形になってないよな?」
その横で、イザニコスのオリビア達は様子を伺っていたが、ソフィアが叫んだ。
「見て、これ全体が規則的に動いてる!」
その声に、皆が眼下を見下ろすと、黒く太い紐状の物が蠕動運動をしているように見えた。
「『澱み』の濃い所は、節なのか?」




