ヴァルトス領の『総魔』
花薫週間になり、ヴァルトス領へ『澱み』退治に出掛ける事になった。
騎竜クラスのイザニコスは、もちろん騎竜に乗って現地に向かう。
選抜メンバーも騎馬に乗り、現地に向かう。が、ララは編入したばかりで騎馬を選んでいない。正しくは、授業に出なかったので、選ぶ暇がなかったのだ。なので、彼女のみゲートを使用してヴァルトスへ向かう。はずだった。
「えー、なんでララだけゲートなんですかぁ?ララも騎馬に乗りたいですぅ」
と、さっそくワガママを言い出した。
教師陣が、騎馬を選んでも練習する時間がないから、となだめるが、聞かない。
仕方なく、選抜メンバーはゲートを使用して、ヴァルトスに向かった。
※
イザニコスは、王立騎士団に立ち寄り、フォルティス達と合流した。
「今回の任務は、きついぞ」
と、フォルティスが言う。
「脅かさないでよ」
と、オリビアが言うが、どうも冗談ではなさそうな雰囲気だった。
今年のヴァルトス領の『澱み』は成長スピードが早く、『総魔』になりそうな『魔』が数体すでに確認されている。
まだ、街から遠く離れた森林地帯なので、公表はされていないが、このままでいくと、街の近くにも出現する恐れがある。
偵察部隊の調べで、今『魔』の現れている一帯の『澱み』のレベルが異常なので、その一帯を徹底的に浄化し、結界を張り直す事に決定された。と伝えられた。
「ハリー達はしってるの?」
と、オリビアが聞くと、機密事項なので、他には話せないし、伝えてはいけない、と誓約魔法をかけられた。
できれば、ララの浄化特化魔法を確認する事も、盛り込まれているそうだ。
ただ、素行の悪さは、すでに王立騎士団に伝わっているようで、任務の邪魔にならないよう監督する為に、ララ専属の眉目秀麗な王立騎士団員が、一名付くそうだ。
ソフィアが
「勘違いしないといいけど」
と、鼻で笑っている。
※
今回の任務は、三チームに分かれて連携を取ることになった。
フォルティス、オリビア、スクトゥム。
イリオス、ウラニス、エレ。
ノア、ソフィア、ユリウスで分かれ、ヴァルトス領へと、騎竜で飛び立った。
イザニコスと兄達王立騎士団が、ヴァルトス領の騎士団に到着すると、さっそく問題が起きていた。
ララが、討伐に参加しないと言い出して、部屋に籠っているそうだ。
「何かやらかすと思ってたんだよなぁ」
と、ユリウスが、呆れている。
とりあえず、打ち合わせをしようと、ヴァルトス騎士団の会議室へ向かった。
日が暮れる前に一度現地を見ておきたい。との意見があり、下見に行く事になった。
「……遅くなりました」
疲れが隠せない表情のハリーが、会議室に入ってきた。
「話はだいたい聞いています。現地にご案内いたします」
と、メンバーを誘導する。
『大丈夫なの?』
オリビアがハリーに近付き、こっそり聞く。
『まぁ、なんとか……自分は、乞われて討伐に参加してあげてるのだから、客室に泊めろってさ』
なので、今、ヴァルトス領館の客室に案内中だそうだ。
そんな二人の様子を見ながら、フォルティスは、ウラニスに聞く。
「あの二人、雰囲気変わった?」
「ハリーが、オリビアに追い付きたいって、ヤル気を出してから……ですね。ちゃんと選抜にも選ばれたし」
「じゃ、婚約破棄はなさそうだな」
と、フォルティスは兄の顔になった。
※
ヴァルトス領の外れに位置する森林地帯を、騎竜に乗ったイザニコス達討伐メンバーが、離れた所から視察する。
ハリーは、騎士団の騎馬を操り先導していた。
『澱み』が濃くて、簡単に近寄れない。オリビアが、念のために持ってきた弓矢を、『澱み』のより濃い所に『雷』をまとわせて、撃ち込んでみた。
瞬く間に『澱み』が帯状になり、弓矢を包み込み『雷』を無効化してしまった。
ウラニスが『火球』を連続で撃ち込むが、少し『澱み』が薄くなった位で、あまり効果が見られない。
すると、フワフワと付いてきていたニョロが炎を吹いた。ウラニスの『火球』よりは『澱み』が消滅しているように見えた。
その時、何かキラキラ光るものが見えた気がしたオリビアが、魔法を準備しながら
「ニョロ、もう一回!」
再びニョロが炎を吹く。それに合わせてオリビアがキラキラ光る何かに『雷槍』を撃ち込んだ。
すると、そこ一帯だけ『澱み』が晴れた。
「オリビア、どうやったんだ?」
皆が口々に聞く。
「一瞬、『澱み』が晴れた所にキラキラした物が見えて、それを狙いました」
そんなもの見えたか?と不思議がるメンバーだったが、試して見ようにも、日が暮れて来たので、騎士団に戻る事にした。
帰り際、ソフィアが『大地の癒』を放ち浄化してみた。上手くいっていれば、明日この一帯の『澱み』は消滅しているはずだ。




