ヴァルトス領再び
花薫週間が近くなり、再びヴァルトス領の『澱み』退治の依頼が来た。
今回は、騎竜クラスのスクトゥム王子、ウラニス、ユリウス、オリビア、エレ、ソフィア。それと、選抜チームの四名だ。
選抜チームには、ハリーとララがいた。
数日前の事になるが、二年の選抜チームのメンバーが講堂に張り出された時、ハリーの名前を見つけたオリビアは、嬉しくて泣いてしまった。
ハリーは、照れ笑いをしながら、優しくオリビアの肩を撫でていたのだった。
一時期、仲違いをしているように見えていた二人だったが、関係修復が、できたようだった。
ララは相変わらず真面目に授業を受けることはなく、眉目秀麗な男性を侍らせていた。
本来なら、選抜メンバーに選ばれる事はあり得ないのだが、浄化特化魔法を操れる者は貴重なので、実戦を経験させる為に、半ば強制的に参加させられていた。
しかし、ララはスクトゥム王子を見るや否や、積極的に話かけてくる。そして、今回の討伐メンバーに興味を持った。
スクトゥム王子を始め、ウラニス侯爵令息、ユリウス公爵令息、ハリー侯爵令息と、彼らは、眉目秀麗なうえ、優秀であり、地位も高い。ララの興味を引くには十分すぎる。
討伐の説明があるため、教室に集められた騎竜クラスと選抜メンバーだったが
「今回の討伐は、ハリー様の領地なんですね」
と、ララは目をキラキラさせながら、オリビアの目の前で、ハリーに抱きつく。
オリビアが唖然として、何も言えないでいると
「淑女が男性に抱きつく物ではないよ?」
と、ユリウスがたしなめた。
「もぉ、ユリウスさまぁ。焼きもち焼かないでくださぁい」
と、見当外れの返答をして、ユリウスにしなだれかかる。
今のうちに。とでも言いたげに、ユリウスがしっしっと、ハリーとオリビアに手を振る。
ハリーとオリビアは、ララから離れた窓際の席に並んで座った。
オリビアは、ハリーと一緒に任務に当たれる事が嬉しくて、また涙ぐんでしまった。
去年、あんなに冷たく当たられていたのが、嘘のようだ。思い出すだけで、また泣けてくる。
「オリビアはいつから、そんなに泣き虫になったの?」
オリビアの大好きな、柔らかい微笑みで、頬の涙を拭ってくれる。我慢できなくなったオリビアは、はしたないと、わかってはいるが、ハリーの首に腕を回し泣きじゃくった。
そんなオリビアに、ごめんね。辛かったよね。と言いながら、ハリーが頭を撫でていた。
※
今年のヴァルトス領の『澱み』は例年より成長が速く『魔』になりかけているものも多い。
また、『魔』の集合体、『総魔』に近いものも現れそうだ。との報告があり、早急に消滅に向かう事となった。
学生達だけでは、万が一の時に対処が難しくだろうから、夏期にアルメディス領で行動を共にした、オリビアの兄達、騎士団のフォルティス、ノア、イリオスも同行すると伝えられた。
※
後日、騎竜クラスでは『総魔』の対処の方法が伝授されていた。
『魔』と同じように魔法で一見消滅できるようにみえるが『総魔』には核があり、この核に魔法を撃ち込んで初めて、消滅となる。
教師が出した幻術の『総魔』を相手に攻撃をする。形が崩れると、小石程の大きさの、キラキラ光る宝石のような石が、宙に浮かんでいた。
その宝石の様な小石が核で、瞬時に消滅させないと、周りの『澱み』を引き込み再び『総魔』の形を成す。
これがなかなか難しく、核になかなか魔法が当たらない。
何度か試した結果、オリビアに関していえば『雷槍』を風魔法に乗せて、命中率を挙げた。
これを、騎竜を操りながら行わなければならない。その為の練習を、花薫週間が始まるまで、何度も何度も繰り返し練習した。
砂煙と汗で汚れた顔で笑い合う、騎竜クラスのメンバーを、遠くから眺めるハリーは、いつか自分もオリビアの隣に立つ。と、自分に誓い、選抜メンバーの訓練に、励むのだった。
次話は、金曜21時頃、投稿出来ればいいな。、と思ってます。




