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すれ違う気持ち

 夏期休暇が終わる頃、課題となっていた騎竜、騎馬との仲を深めただろう『王立魔法高等学校 二年生』が、続々と騎竜、騎馬と共に寮へ戻ってきた。


 オリビアも久しぶりの友人達との『お茶会』を楽しんでいる。

 ニョロは、オリビアから離れて自由に動き回る事が増え、お気に入りの噴水にいるようだ。もちろん、手のひらサイズで。


 騎竜クラスになり、級友達と会えなくなるのだろうか?と心配したが、杞憂だった。寮に戻れば、いつでも会えるのだから。


 一人の女生徒が、オリビアに近付き、言伝てを預かっている。と言う。

「ヴァルトス様が、中庭でお待ちのようです」

 オリビアは一気に憂鬱になる。夏期休暇中、騎竜の飛行練習にかこつけて、一切連絡を取らなかった。

 たぶんその事だろう、と推測できた。

「ありがとう」

 と答え、友人達に中座の断りを入れ、中庭に向かう。


 中庭に続くテラスに出ると、噴水の側のベンチで、不機嫌に座っているハリーがいた。

(はぁ、ため息しか出ないわ……)

 オリビアは、テラスの階段を降りながら考える。

(ハリー様の事は好きだけど、何か違う気がする。あの、柔らかい微笑みが好きなんだけど、最後に見たのはいつかしら?)

「ハリー様、ごきげんよう。お待たせしました」

 ニッコリ微笑んで、ハリーの隣に座る。


「夏の間、元気だったかな?」

 オリビアの好きな柔らかい微笑みだが、どこか違う。

「騎竜の飛行は上達したのかな?」

「やっと乗れる位ですわ。乗りながら魔法操作するのは、まだまだですわ、でも、騎竜がかわいくて……」

 と、続けるオリビアの話を、どこか上の空で聞いていたハリーだったが、おもむろに

「それって、自慢?」

 と、言い出した。驚いたオリビアは、休暇の様子を聞いてきたから……と言うが、聞く耳を持たない。

 そのまま、立ち上がり男子寮の方へ歩きだした。


 ここで、追いかけてすがり付き、機嫌を治してくれるような一言でも、言えば良いのだろうが、オリビアはしない。できなかった。

 ハリーが求めているのは、騎竜クラスや選抜チームを辞退する事だから。


「婚約を破棄しましょうか?」

 独り言の様につぶやく。

「何を言っている?」

 驚いたハリーは、振り向きオリビアを見た。

「私は、騎士団に入りたくてここに来ました。努力して、選抜に選ばれ、騎竜クラスに入りました。それを無かったことにはできませんし、したくありません。それに、いきなり婚約を申し込んできたのは、ヴァルトス様です。それも、『澱み』退治のために。私の魔力を必要としているのではないのですか?」


 一気にまくし立て、しまった。と、思ったが遅かった。

「なるほどね」

 といい、ハリーは寂しそうに笑って、背中を向け歩きだした。

 オリビアは、追いかけなかった。追いかけたくなかった。


「何が正解か、わからないわ……」

 オリビアは、済みわたる青空を仰ぎ見た。

 そんな、オリビアを噴水から頭だけ出しているニョロが見守っている。


 ※


 怒りに任せて、背を向けてしまってハリーだったが、心の奥底では、自分の方が間違っている。自分のワガママだと、わかっている。

 でも、どうしていいのか、わからない。

 オリビアが大好きだ。大切にしたい。その気持ちは変わらない。


(ただ、オリビアが……自分を置いて、どこか遠い所へ行ってしまいそうで、怖いだけなんだ)

 空を仰ぎ見れば、少し歪んで見えた。頬を、暖かい何かがこぼれ落ちていった。






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