回想
「ソフィア、ありがとう。すごく、すっきりしたわ!」
「あれだけ派手に魔法を撃ち込んでるんだもの、スッキリしなかったらおかしいわよ」
「気分が晴れたのなら、良かったですわ」
オリビアとエレは、ソフィアに別れの挨拶をしている。
彼女達の再会は、『王立魔法高等学校 第二学年』だ。
ピンク頭の登場まで、後一年だがオリビアは『悪役令嬢物語』の記憶が消えてしまっている。
※
ハリーとの婚約破棄を回避するために、『仲良し大作戦』を行っていたが、ハリーの嫉妬心がひどすぎて、成功しているのか、失敗しているのか悩むところだ。
オリビアが大好きな、魔力全快攻撃魔法を「従順な女性が好きだ」と否定されてしまい、落ち込んでいる。
スクトゥム王子は、婚約破棄は仕方ないものとして、冤罪回避に協力してくれるようだが、「その代わり……」と、取り引きを持ちかけていた。
ふさぎこんでいたオリビアを、友人のソフィアが気遣い、彼女の領地で、心置きなく魔力全快攻撃魔法をぶっ放つ機会を設けてくれた。今、気分最高のオリビアがいる。
オリビアの精神状態が安定、または、解放感からか『精霊の使い魔』と言われていたニョロが変体した。
その姿は、蛇に足が四本生え、基本四つ足で歩くが、二本立ちも出来る。
そして、ウニョウニョ空を飛ぶ。
オリビアの婚約者であるハリー・ヴァルトスは、彼女を大切にしたい、愛おしいと思ってはいるが、領地でのオリビア人気に嫉妬し、自身が選抜チームにも、騎竜クラスにも選ばれなかった事から、彼女に対して、なんとも言えない感情を持ち始めていた。
※
そんなハリーが、ヴァルトス領に帰って来た。馬車の中で、オリビアを我が領地に呼び寄せる手筈を、ずっーと考えていた。
(オリビアは、僕の婚約者だ。僕の物だ)
呪文のように、ブツブツと言い続けてながら。
領館に着くなり、挨拶もそこそこに父親である侯爵の元へ急ぐ。
「父上、『澱み』は現れていないのですか?オリビアを呼びたいのですが」
取次もなく、いきなり執務室に入室してきた息子を、怪訝そうな表情で、見上げる。
「オリビアを呼びたいなら、招待すれば良いだろう。立派な働きをしてくれた彼女に対して、不遜な態度を取っていた、と聞いている」
と、再び書類に目を落とした。
「違うんです。父上。休み前にオリビアを誘おうとしたのですが、騎竜の特訓中で話しも出来なかったのです。なので、『澱み』退治……」
「ハリー」
話を途中で打ち切ったヴァルトス侯爵は、
「オリビアを婚約者に選んだのは、『澱み』や『魔』を騎士団と共に退治してくれる事を期待してだ。彼女の成長の邪魔はするな。それに、今発生している『澱み』は、我が領地のみで対処できるし、騎竜クラスを呼び寄せる『澱み』は、この時期は現れない。依頼を出しても、選抜がくるくらいだろう。話は以上だ」
ハリーは、学校にオリビアを指名して依頼すれば、簡単に呼び寄せられると思っていたのだが、騎竜クラスは呼べない。と知り、愕然とした。
(騎竜クラスは、そんなにすごいのか?知りたい)
ハリーは、ソフィアの領地にオリビアが招待されていたのを思い出し、人を送り込もう。と端的に思い付いた。
アルメディス侯爵宛に、騎竜クラスの実力を知りたいので、観察の為に数名、ヴァルトスの者を派遣させて欲しい。と手紙を持たせ、勝手に送り込んだ。
困ったのは、アルメディス侯爵だった。
依頼と共に人が送り込まれ、断りようもない。いや、断ればよかったのだろうが、婚約者のオリビアが心配なんだろう。彼女の働きを知りたいのであろう。と、勝手に解釈した。そして、許可してしまった。
その結果、スクトゥム王子に王国への反逆心まで疑われた。
ソフィアの友人達として考えてはいけない。王国の認めた騎竜クラスなのだ。と再確認した。
「我が娘ながら、すごいクラスに所属したものだ……」
と呟いた。
※
ウェントス領に戻ったオリビアは、兄のフォルティスの提案に従い、騎竜の天鼓との意志疎通を図るため、日々天鼓とともに飛行訓練をしていた。




