開拓Ⅴ
「スクトゥム王子、お待たせいたしました」
自然庭園で散策していた彼に、アルメディス侯爵が声をかける。
「素敵な庭園を楽しませてもらっているよ」
と、答えながらも声の響きは、どこか冷たい。
「湖畔の浄化をしていてたら、うっかり森に攻撃してしまったんだか、彼等は大丈夫だったかい?」
と、スクトゥムは、素知らぬ顔で聞いた。
初めは、とぼけていた侯爵だったが
「明日以降もうっかり攻撃してしまうかもしれないが、『魔』だろうから問題ないだろうか? 」
と脅かされ、渋々、ある貴族から「騎竜クラスを、観察させてほしい」と依頼があったことを白状した。
スクトゥムは、学校の許可なく騎竜クラスの情報を外へ漏らす訳にはいかないので、この瞬間から観察を中止するよう要請した。
拒否するのならば、王国への反逆心があると推測するがいいか?と問いた。
「そんなつもりは毛頭ございません。今この時より、観察を認めません」
と言い、侯爵は侍従に耳打ちした。
※
スクトゥムが後顧の憂いを断ち、駐屯地に戻るべく、騎竜のブレイブに乗り飛行していると、湖畔の辺りから、浄化ではあり得ない音が聞こえてきた。
緊急事態なのか?と、慌ててブレイブを操作し、湖畔に近付くと、ニョロは咆哮しているし、他の者達は、攻撃魔法を放っていて、砂煙が舞い上がっている。
「何をしているんだ?」
ブレイブから降り立ち、眉間にシワを寄せながら、スクトゥム王子がウラニスに聞く。
「湖畔の浄化も終わったので、魔法の課外講座みたいな感じですかね?まぁノア様が修復してくれてるので、問題なさそうですけど」
と、『地割れ』を修復しているノアを見やる。
部隊長は、こうなることを心配して、人員の補充にこだわったのだろうか、と一瞬思ったスクトゥムだった。
駐屯地に戻ったイザニコスのメンバーは、部隊長に、湖畔の浄化は終わって事を伝え、明日には森の内部と、周辺の浄化を終えるつもりだ。と伝える。
※
翌日も天気が良く、清々しい程の青空が広がっている。木陰に入ると幾分涼しく感じる。
そんな爽やかな朝に似合わない程の爆音が響いている。
荒れ地に感じられる『澱み』に、騎竜に乗ったオリビア、ウラニス、スクトゥムが、上空から魔法を撃ち込み、同じく上空でソフィア、ユリウスが風魔法で浄化している。
そして、地上ではノア、フォルティス、イリオス、エレが土魔法で浄化していた。
夕刻前には、依頼のあった範囲の開拓の為の浄化が終わったので、明日にでも結界士に結界を張ってもらう手筈になった。
ニョロが名残惜しそうに、湖を見ているので、最後に一泳ぎさせてあげようと、オリビア、エレ、ソフィアは湖畔に向かった。
オリビアは、思う存分魔法を放てた事に満足していてたので、なんとなく鼻歌を歌っていたのだが、気がつけば、声を出して歌っていた。
「オリビア様の歌、なんだか心に染み渡ります」
と、エレがうっとりして伝えれば
「なんだか、疲れが取れる気がする」
と、ソフィアは頭を左右に振りながら、不思議そうな顔をする。
「気のせいよ」
と言いながら、オリビアは気持ち良さそうに、歌を歌った。
※
翌日、イザニコスのメンバーが、それぞれの領地へ帰省した後、アルメディスの結界士が到着した。
さっそく、結界を張ろうと準備を始めたが
「もう、結界が張られてますよ? 」
と、首を傾げ不思議がった。
ノア達も、結界士の話を聞いて不思議がる。
「じめんを掘り返したのが、良かったのか?」
正直、それぐらいしか結界が張られた理由が思いつかない。
「結界なんて、少し魔法をならった位じゃ、張れるものでもないしなぁ……」
そもそも、結界は特殊で、回復より浄化、それより結界と、難しくなり、扱える魔術師も限られてくる。
何か、変わったことがなかったか、思い返してみる。
「オリビア、歌ってたよな?」
「歌で結界が張れるなんて、聞いたことないよ」
「うちのオリビアにそんな能力あるわけがない」
そうだよなぁ、ないよなぁ……と、兄達三人は、首を傾げるのだった。




