開拓Ⅳ
アルメディス侯爵家に戻ったスクトゥム王子は、そのまま、侯爵へ面会を申し出た。
しばらく、応接室で紅茶を飲みながら待っていたが、飽きてきたので、フラフラと廊下へ出てみた。
目の前には、絵画の様な庭園が広がる。色とりどりの小花が咲き乱れる、手入れの行き届いた、素敵な自然庭園だ。
庭園を歩きながら、湖畔での出来事を思い返す。
森の中に監視がいた。報告では、ヴァルトスの者のようだ。オリビアの婚約者、ハリーの家だ。
(婚約者の休暇まで、監視するとは……何が目的なのか。魔法の威力の確認なのか? オリビアが監視されている事に気付いたら、可哀想な事になるなぁ)と、オリビアの瞳と同じ紫の花を見つけ、指でつつくのだった。
※
スクトゥムを除いたイザニコスのメンバーと彼等の兄達とで、残り半分になった湖畔の浄化をすることにした。
オリビアと兄のフォルティス、ソフィアと兄のノア、そしてエレが左半分の残り。
ユリウス、ウラニスとイリオスが右半分の残りの浄化を行う為に別れた。
オリビア達は、風と地面に魔力を流して浄化する。
「なんで今日に限って、浄化メインなのかしら?」
ソフィアが不満そうにつぶやく。
「ソフィアの家なんだから、ソフィアが攻撃するのは、怒られないんじゃない?」
と、エレがいたずらっぽい目をする。
「そっか!」
と、変に納得したソフィアは、風魔法で周りを浄化しながら、探る。
『風の刃』
おもむろに、森の方向に魔法を放った。
フォルティス達が止める間もなかった。
「あーぁ」と、ノアが嘆く。
保存してほしい。と言われていた森が、切り株だらけになっている。
『癒しの大地』 ノアが、森を再生させる。
「手加減って、知ってる?いい加減覚えてよ!」
兄弟ゲンカが始まった。
「元に戻せるんだったら、いいじゃない!」
「そうゆう問題じゃないよっ!」
オリビア達は、お腹を抱える程笑い転げた。
(こんなに笑ったのはいつぶりだろう。婚姻を結んでしまったら、もう、思いっきり魔法を放つ事も、大声で笑うこともできないんだろうか……)
ふと、オリビアは考えてしまい、一人憂鬱になるのだった。
浄化することに飽きてきたオリビア達は、ちょいちょい無駄に魔法を放って、穴を開け、エレの土魔法で埋めたり、誰が一番遠くまで、浄化できるか競争をしたりと、遊び始めた。
もう、フォルティスにもノアにも止められない。
諦めたノアは、遊びつかれドグロを巻いて寝ているニョロに気づいた。
「伝説の海龍は、咆哮で攻撃したらしいんだけど、ニョロも咆哮するのかな?」
と、フォルティスに聞いてみた。
「さぁ、どうなんだろう?」
と、フォルティスは、ニョロに語りかける。
モゾモゾと動き出したニョロは、まん丸の瞳でフォルティスの顔を見て、おもむろに湖の方へ顔を向けた。
そして……
地響きのような咆哮と共に、湖に上に一直線の氷の道が出来た。
オリビア達も気付いて、「格好いい!」と騒ぎながら、ニョロに近寄る。
「ニョロは、やっぱり氷なんだ、炎だったら格好いいよなぁ」
と、ノアが言うと、今度はノアの顔をしばらく見つめ……
再び地響きのような咆哮と共に、炎を吹いた。
反対側を回っていた、ウラニス達とも合流し、イリオスがニョロに駆け寄ってきた。
「見てたよ!ニョロはやっぱり海龍の仲間なんだろうか?」
と言いながら、ニョロの背中を撫でる。そして、身体を少し持ち上げ
「ニョロがフォンターナに来たら、神様になっちゃうね! ニョロ様だ!」
と、頬擦りを始める。ニョロの表情はわからないが、きっと、困惑しているだろう。
※
「土魔法って地味じゃないですか?私、派手な魔法を使いたいんです」
エレは、同じ土魔法を操るフォルティスやイリオスに質問する。
「意外と、土も派手なのあるよ」
と、イリオスは『地割れ』と言いながら、地面に片手を付く。
すると、手を付いた所から!一直線にひび割れが起きた。
「これに、地震を付属させると、もっと大きな地割れになるよ。ここでは、出せないけどね」
と、ウィンクをする。
大技を見たオリビアとソフィアが、自分達も派手な魔法を出したい。と、荒れ地なのをいいことに、魔法を放ち出した。
ノアが文句を言いながらも、土地を修復し、驚いて飛び出してきたであろう『魔』をウラニスとユリウスが消滅する。
もはや、魔法の課外講座になっていった。




