水の精霊を捜せ
オリビア・ウェントスは風の精霊に守られし、雷の使い手だ。という事で、基本魔法は雷で、風の精霊の力を借りられる。
前にも言ったが、漆黒の髪に、アメジストの瞳。悪役令嬢そのものの容姿だ。
彼女には兄姉が3人いて
長兄ビエントスは、風の精霊に守られし、火の使い手で漆黒の髪にアメジストの瞳。
次兄フォルティスは、風の精霊に守られし、土の使い手で白銀の髪に、アメジストの瞳。
姉サルビアは、風の精霊に守られし、水の使い手で白銀の髪に、アメジストの瞳。
兄たちは眉目秀麗、姉も容姿端麗である。
オリビアの記憶にはないが、攻略対象であってもおかしくない。
現在、オリビアは十五歳で基礎学院の二年生だ。夏休み明けには、いよいよ、オリビア・ウェントス生存確率の分岐点『王立魔法高等学校』への推薦書がもらえるかどうかの瀬戸際となる最高学年になる。
今までの所、成績は学年三位には入っている。このままでけば、推薦書は確実だろう。
そして、夏休み明け早々に試験が行われる。その試験では、基本魔法と精霊の加護との簡単な合わせ技を披露する事になっている。
ここで確実に推薦書を貰えるようにしたい。
オリビアの場合でいうと、雷と風で『雷の渦』が一番簡単な合わせ技だろうか。竜巻の中に稲妻が走るようなものだ。
で、彼女は今、夏の休暇を利用して領地に帰ってきている。
領地のウェントスは、赤茶色の渓谷に挟まれたドラコー川を中心とした自然豊かな土地である。オリビアは、その川の下流にある敷地の端のドラコス湖畔で昔見た『ダイヤモンドダスト』を編み出してみたい。
雷と水の精霊で、なんとかダイヤモンドダストができないものか……と
紺碧の水を湛えた湖と周りの木々の深緑のコントラストが絵画のようだ。
オリビアはボーと、湖み見つめながら『去年の冬に来てればよかったじゃない』と少し後悔している。
もしかしたら、氷の精霊に会えていたかもしれない。
水の精霊は、そこかしこに姿が確認出来るのだか「力を貸して欲しいの」と声をかければ、クスクス笑いながらフワフワ飛んでいってしまう。
オリビアは、湖畔の砂利を音をたてて歩きながら、半ばあきらめつつ『最悪、稲光を小さくして風に舞わせて、それっぽく見せようかしら?』と思案していると、なにやら白っぽい紐のようになって干からびている蛇を見つけた。
数日前の大雨で湖から飛び出してしまったのだろうか?
オリビアは岸辺の水に浸けてみる。
「元にもどるかしら?」
乾物などは水に浸けて戻すではないか。
しばらく、干からびた蛇を見ていたが、ふと、歌を口ずさんだ
(あぁ、私、合唱部だったんだ……)
オリビアの前世の記憶が急に蘇る。だからなんだ?という内容だか、すこぶる気分が良いので、気が向くまま口ずさんでいた。
どれくらいたっただろうか。オリビアが、ふと、干からびた蛇に視線を落とすと、ふっくらとした紐になっていた。
春霞のような青白磁色で太く短いフランクフルトのような形をしており、クリクリした大きめの黒真珠のような目が、とても愛らしい。
オリビアが手を伸ばしてみると、手のひらにチョコンと乗った。そのまま、肩まで登ってくる。首もとがヒンヤリと涼しくて気持ちいい。
「あなた、もしかして氷だせないかしら?」
ふと、思い付いて聞いてみてのだか、蛇に氷はないな……
すると、回りの空気が急激に冷えて氷の結晶が舞いだした。
なんて事だろう!望みが叶ってしまった!
「やだ、ニョロちゃん、すごいじゃない!」
思わず、ニョロニョロしてるので、ニョロちゃんと呼んでしまった。心なしか喜んでいるように見える。
オリビアとニョロちゃんは、日が暮れるまで雷と氷の合わせ技の練習をした。
屋敷に戻り、オリビアの砂ぼこりにまみれたドレスと左肩に乗っている白蛇に、侍女達が腰を抜かしたのは秘密でお願いいたします。
『魔法だらけの世の中で、式神使いはいかがでしょう』
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