開拓 Ⅲ
初日に、駐屯地から湖までの間にあった『澱み』を消滅させ、ある程度浄化できたので、二日目の今日は、湖の周りを浄化する事になった。
今日の作業も、イザニコスとオリビアの兄達に任された。
スクトゥム王子が
「じゃあ、今日は釣りだ!」
と、ウラニスとエレに釣竿を、押し付けている。
部隊長から、周りの森に、多少だが『魔』の反応があるので、まだ、手出ししないように注意された。
あくまで、湖の周りとその周辺の『澱み』だけを消滅させるように、念を押された。
ニョロは湖を気に入ったらしく、さっそうと泳ぎに行った。
ウラニスが「魚が逃げる!」と文句を言っているが、ニョロは気にしない。わざとウキの周りを泳いでいる。
オリビア達は二班に別れ、左右から湖を一周することにした。
オリビア兄弟とスクトゥム王子とユリウス、ソフィア兄弟とウラニスの兄イリオスで別れた。
フォルティスが地面に魔力を流して、土地の様子を確認する。
「あぁ、確かに森の方に『魔』がいるなぁ」
と、森の方を見つめる。
「今日は、大人しく浄化だけしといた方がいいかもなぁ」
オリビアもフォルティスの見ていてる方向に視線を向けるが、異変には気付けない。
風に魔力を乗せて、様子を見ようとするが、フォルティスに止められた。
「今日は、止めておけ」
オリビアは言われた通り、大人しく湖の周りの浄化をし始めた。
オリビアが浄化に専念し始めたのを確認して、フォルティスはスクトゥム王子に耳打ちする。
「気付かれてますか?」
「あぁ、連絡があった」
と言って、二人は同じ方向、森を見つめる。
「婚約者が自分より優れている。というのは、そんなに気になるものなのか?」
スクトゥムは首を傾げる。愚かな配偶者なんて必要ないじゃないか。と、つぶやく。
「どうされますか?」と、聞くフォルティスに
「こうするだけさ『雷霆』」
と、見つめていた森の方向に魔法を撃ち込む。
「何してるんですか!殿下!」
「ごめん、間違えた」と、睨むオリビアにスクトゥム王子は、笑いながら謝った。
見晴らしが良くなった森を見ながら、王族を、怒らせてはいけない。と、フォルティスは心から思った。
それまで、彼らの後方にいて、一言も話さなかったユリウスが、おもむろに背負っていた弓を取り出し、見晴らしが良くなった、数メートル横の木立に、風魔法をまとった弓を放った。
驚いて振り向く二人に
「僕だけ、蚊帳の外?」
と、次の弓を準備しながら、神秘的な微笑みをみせた。
※
「ちょっと、用事を思い出したから、侯爵と話をしてくる」
湖畔の浄化を半分程終え、一旦駐屯地で休息を取っているオリビア達に、スクトゥム王子が、いきなり言い出した。
部隊長が、今日中に湖畔の浄化を済ませたいから困る、と懇願していたが、王族の気まぐれを、変えられる訳もない。
それならば、アルメディス騎士団の者を一人手伝わせよう。と提案したのだが、フォルティスが断った。
「このメンバーだけで、十分ですよ」
なお、引き下がる部隊長に、ソフィアやノアも、不信感を顕にした。
「じゃあさぁ、釣りをして待っているのはどう?」
と
ユリウスが釣竿を手に取り、外へ出ていってしまった。
慌てて、オリビア達も釣竿を持ち、後を追いかける。
「スクトゥムが戻ってきたら、残り半分ちゃんと浄化するから、心配しないでよね」
ソフィアとノアが、部隊長に念を押して後に続いた。
スクトゥム自身も、「用が終れば直ぐ戻ってくるし、今日中に湖畔の浄化を終了できれば問題なかろう」と、言い残し出ていってしまった。
後には、困りきった顔の部隊長と、所在無さげな隊員が残った。




