初めての騎竜の旅
清々しい程の青空に、六匹の騎竜が、三角の編隊飛行をしている。
先頭は、スクトゥム王子だ。その後ろに、ウラニス、ユリウス。そして、最後列にソフィア、オリビア、エレと続く。
天候も良く、このまま順調に飛行すると、後、数時間でソフィアの領地、アルメディスに着くだろう。
アルメディス領は、土の妖精の守護を受けているので、様々な作物の収穫が見込める。
ただ、渓谷や砂漠も多く、魔法の力を借りて開墾している。
ソフィアの頼みは、荒地の開墾、開拓時に現れる『澱み』や『魔』の消滅だ。『澱み』を浄化してから『結界士』が結界を張り、妖精の加護を高めてから開墾する。
結界を張らないと、妖精の加護が『澱み』に吸われてしまい、作物が育ちにくくなる。
また、時間が経つと 再び『澱み』が現れるので、街の予定地にも、結界は必要不可欠だ。
騎士団の調査で、初級程度の『魔』の反応しかないため、オリビア達でも問題ないとされた。
眼下には、緑豊な森林が広がっていて、所々、清流や草原が垣間見得る。
エーリオン王国は豊な国だ。と再確認できる。
スクトゥム王子達が、釣りをするか、狩りをするかでもめている。
それを聞いていたソフィアが、時間はたっぷりあるんだから、両方すればいいじゃない。と呆れる。
エレの領地は、寒い地域らしく一年の半分以上が、雪で覆われているらしい。だかなのか、眼下に広がる緑に、感動している。
学校より譲り受けた『鞍』は、どんな魔方陣が仕込まれているのか謎だが、飛行時に風圧を感じる事がなく、普通に会話もできる。寒さ暑さも感じない。
スクトゥム王子にも、『鞍』の仕組みは秘密とされているようで、わからないそうだ。
王宮には、すごい魔導師がいるんだ。と感動する。
「で、竜の名前はどうした?僕はアウラーにしたよ。そよ風って意味で、穏やかな雰囲気が好きなんだ」
と、ユリウスがアウラーを撫でる。
スクトゥム王子は、『ブレイヴ』勇者という意味で、とにかく強くありたいそうだ。
ウラニスは、『イグニス』火という意味で、そのまんま!と、皆に笑われていた。
ソフィアは、『ニュムパ』妖精という意味だが、言いにくいので『ニュム』にするそうだ。ニョロに似てるわね、とカラカラ笑う。
エレは、『ルナ』で月という意味だ。領地の月がとても綺麗なの、今度は、私の領地に来てよね。と言っている。
「私は、天鼓にしたわ、雷鳴って意味よ」
と、オリビアが答えると、みんな口々に、テンコ?初めて聞く言葉だ、と言い出した。
(確かに。テンコっていう言葉は、聞いた事がないかも……)と、思ったオリビアだが、たぶん何かの本で見かけたのかも。と答えた。
「そうね、オリビアは暇さえあれば、図書館に籠って本を読んでいるわよね」
と、エレとソフィアが納得したように、顔を見合わせる。
そうこうしているうちに、ソフィアの領地が見えてきた。話に聞いていた通り、渓谷や砂漠が見える。所々に森が点在していて、大河や湖も見えた。
だんだんと、緑が増えてきて、首都に入ったようだった。
そのまま、アルメディス騎士団の駐屯地へ向かった。
※
アルメディス騎士団の騎竜小屋に騎竜を預けて、ひとまず休息を取るため、侯爵家に向かった。
美術品に造詣が深いと、言われるだけあって、玄関ホールは、まるで美術館のようだ。
壁から高い天井までが、一枚の壁画のようになっていて、バランスよく絵画が飾ってある。
オリビア達は、美術品の価値は、あまり良くわからないが、圧倒される美しさは、感じることができた。
アルメディス侯爵の挨拶を受け、夕食の時間まで、くつろいでほしい。と客室に、案内された。
※
夕食を終え、寝る支度を終えたオリビアは、テーブルに置かれていた、ポットの紅茶を頂きながら、一息ついていた。
ふと、テーブルに視線を落とすと、なんだか凝った彫刻が施されていることに、気づいた。
一つ一つ、彫刻を観賞していたが、やはり、慣れない大空の旅で疲れていたのだろう。目が開かなくなってきた。
ふかふかのベッドに潜り込み、大きく息を吸う。
(みんな元気かなぁ……)
急に、ウェントスを思い出し、郷愁の念にかられながら、眠りについた。




