サルビア
放課後になり、オリビアがハリーの元へ向かったのを確認したスクトゥム、ウラニス、エレの三人は、階下へ降り、エントランスに出た。
(なぜ、四頭立ての馬車がいる?)
ウラニスはスクトゥムを睨んだ。
「これだけ派手に動けば、オリビアの姉上も断れないだろ?」
いかにも王族が乗ってますよ。と言わんばかりに派手に飾り立てられ、王家の紋章が付いた四頭立ての馬車が、鎮座していた。
エレが、フットマンの手を取り馬車に乗り込んでいて、早く早く!と手招きしている。
得意げ乗り込むスクトゥムの後ろを、ウラニスは、ため息をつきながら、付いていった。
※
王立学校は、ちょうど双頭門を挟んだ反対側に位置している。
造りも配置も、ほとんど王立魔法高等学校と変わらない。唯一違うのは『装飾』だ。
全てが優雅で美しい。王立魔法高等学校では、ただの円柱の門も、王立学校では、細かな装飾が施された彫刻の円柱の門だ。
まるで、美術館にいるような錯角を覚える。
制服も、こちらは、魔術師を思わせる黒に銀の縁取だが、あちらは、王族を思わせる白に金の縁取だ。
スクトゥム曰く、他国の芸術や豪華さに動揺しないように、敢えて華美で豪勢にしているそうだ。
「日々、豪華絢爛に慣れておくのも必要らしいよ」
と、ウラニスを見ながら、声を殺して笑う。
※
王立学校のエントランスに着くと、オリビアの姉、サルビアと思わしき令嬢が待っていた。
馬車のドアが開くと、見事なカーテシーを披露する。
「あなたが、オリビアの姉のサルビアかな?」
スクトゥム王子の問いに、答えようとする彼女の言葉を静止し
「まずは、馬車に乗ってもらえるかな?」
と、中に招き入れる。
「私は今、オリビアの友人として、あなたに会っていると考えていて欲しい」
「かしこまりました。殿下」
と、サルビアはスクトゥムに笑顔を向けた。その瞬間
「で、あなたがハリーの嫉妬心に火を付けたのね?」
と、スクトゥムに詰め寄った。
「普通に考えればわかるじゃない。自分より婚約者が称えられたら、プライドがズタズタよ。それも、王族に」
と、腕を組んでスクトゥムを睨む。
「ま、オリビアと話をしないと、何とも言えないけどね」
と、サルビアは、窓に流れる風景を眺める。
呆気にとられているスクトゥムを見て、ウラニスとエレは、声を殺して笑っていた。
※
彼らが、王立魔法高等学校のエントランスに着くと、スクトゥム王子の侍従が、オリビアは、女子寮の談話室にいる。と、報告しに来た。
スクトゥムとウラニスが、彼女達が女子寮への渡り廊下を歩く姿を見送り、男子寮へと踵を返したその時、ウラニスは、何かを見たような気がした。
※
談話室にサルビアとエレが入ると、オリビアは窓辺のソファーに腰掛けて、紅茶を飲んでいた。
「オリビア」
サルビアは、入り口で声をかけ手招きする。
そのまま、外からは見えない、死角になっているソファーまで誘導し、座るように言う。
「姉様、お久しぶりです」
ニッコリ微笑むオリビアに、少し痩せた?と聞く。
しばらく、三人は近況や学校の様子など、他愛もない話をしていたが、サルビアが「そろそろかしら?」と、席を立つ。
オリビアとエレも、手招きをするサルビアに続いて席を立ち、部屋を出た。
すると、以前から不思議に思っていた、取手の無い扉の前に立ち、おもむろに銀色に輝くカードを、かざした。
すると、魔方陣が浮かび上がり、音もなく扉が開いた
。
クスクス笑うサルビアは、驚くオリビアとエレの背中を押しながら、扉の中に消えていった。




