オリビアの異変
花薫休暇が明けて、いつも通りの学園生活が始まった。
一年生が講堂に集められ、演説台の前に、スクトゥム王子、ウラニス、オリビア、エレが並び立ち、ヴァルトス領での選抜メンバーの活躍が伝えられた。
ハリーが、ヴァルトス領主代理として、学園と選抜メンバーに感謝の意を伝え、オリビア達は、割れんばかりの拍手と称賛が浴びせられた。
エレが、高揚しながらオリビアの肘をつつき(すごい事になっちゃってるわね)と、囁いてきた。
拍手喝采の中、オリビアはひとり憂鬱になる。
オリビアの父親から手紙にも、ハリーの領地でオリビアの人気が、ものすごい事になっている。と、あった。
これで、もう『魔』に悩まされる事はないだろうと、オリビアが婚約者で良かった。と、領地をあげての御祝いムードになっているそうだ。
そして、ハリーの「従順な女性が好きだな」と言いながらの冷たい微笑み……
オリビアはひとり身震いをした。
浮かない表情で、手を振っているオリビアを、スクトゥムとウラニスが盗み見ていた。
『オリビアは婚約者殿と、ケンカでもしたのかな?』
『たぶん、殿下のせいですよ……』
心当たりがまったく無い。と言うスクトゥムの脇腹をつつきながら言う。
『兄がオリビアの兄と友人なので、相談しておきます』
※
オリビアだけが、少し元気がない。
いつも通り、事あるごとにハリーに会いに行き、昼食も二人で取っている。二人見つめ会い微笑み合う様子もいつもと変わらない。
仲よく過ごしている様に見えるが、どこか怯えているようにも見えた。
魔法の授業でも様子がおかしい。今までは魔力全快で、先生も苦笑いをする程の『攻撃型防御魔法』を放っていたのに、とても控え目だ。
必死に魔力を抑えようとしているように見えた。
まぁ、『防御魔法』の授業なので、防御魔法を放っている事は、間違いではないので、先生も何も言うことができなかった。
※
ある昼下がりの午後、授業が始まるまでの一時、教室の窓辺に座っていたエレが、ふと中庭を見下ろすと、ベンチに仲良く座っている、オリビアとハリーが目に止まった。
(相変わらず、仲の良いこと)と、頬杖をつきながら眺めていると、何やら言い合いをしているように見えた。
ハリーが、オリビアに背を向けながら後ろに手を振る。それを見送る彼女は、泣いているようにも見えた。
「ねぇ、オリビア、最近おかしくない?」
ベンチに独り座るオリビアを指差し、ウラニスに問いかける。
「確かになぁ……」
と、答えながら、兄に相談していることを伝えた。
「このままだと、彼女は選抜から外されるぞ?」
「えっ?」と、驚くウラニスとエレに、スクトゥムは最近、魔法の成績が芳しくないので、一旦外してみよう。という話が職員の間で、上がっている事を伝えた。
少し考え込んだウラニスは
「放課後、王立学校にいってみないか?」
と二人に提案した。
王立学校には、オリビアの姉、サルビアがいる。
ウラニスは、兄に相談していたので、もしかしたら、サルビアに話がいっているかも。と考えた。
もし、話が通っていなくても、オリビアの件で相談がある。と伝えれば、話は聞いてもらえるだろう。とも思った。
なにせ、ウェントス家は、兄弟仲が良い。
それなら、とスクトゥムは指を鳴らすと、急に目の前に軽装の騎士団員が現れた。
目を見開くウラニスとエレを横目に
「これでも、私は王族だよ?」
と、得意気に笑い、騎士団員になにやら囁いている。
彼が頷いたと同時に、姿が消えた。再びウラニスとエレは驚き、スクトゥムは、高笑いをしていた。




