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課外授業 Ⅱ

 オリビアは、漆黒の髪にアメシストの瞳。エレは、輝くようなブロンドにアクアマリンの瞳。

 どこから見ても、(あで)やかな年頃の令嬢で、『魔』を前にして、怯むことなく、攻撃魔法で消滅させるような、お転婆には見えない。


(やってしまった……)二人は顔を見合わせて、居心地が悪そうに微笑む。


「さすが、選抜に選ばれるだけの事はありますね」

 騎士団の部隊長から、称賛された事がきっかけで、微妙な雰囲気が和らいだ。

 ハリーは、服の埃を払うような仕草をしながら

「オリビア、危険なことは止めてくれないか?」

 と、心配そうにオリビアの頬に手を当てた。

 とても、冷たい手だった……。


 前方の騎士団と連絡を取り合い、別行動にて『澱み』に対処していこう。という話になり、オリビア達も『攻撃魔法』を存分に放つ機会をもらえた。

 ハリーは、浮かない顔をしていたが、その方が早く『澱み』を消滅させられるから。と、部隊長に説得され、根負けした形だ。


「一回やってみたかったんだよね! 」

 と、エレは意気揚々と魔法を放つ。土と氷の会わせ技『氷土礫』を『澱み』に撃ち込む。続いて『永久凍土』で消滅させる。

 オリビアは、巨大な『雷魂』を撃ち込み、『風の癒し』で浄化する。

 見た目とは裏腹に、派手な攻撃魔法を連続で撃ち込む令嬢二人の姿に、皆、呆然としていた。


 午後のお茶の時間には、予定していた『澱み』の消滅は終了し、満足そうな四人の学生と、どこか不満そうな一人の学生の姿があった。


 ※


 ハリーの婚約者オリビアの御披露目と、王立魔法高等学校の選抜学生の慰労に合わせて、夜会が開かれた。

 オリビア達は、学園の制服で参加している。

 ヴァルトス領嫡男として、ハリーは正装して参加するはずだったが、スクトゥム王子が「なぜ、王族の自分が制服なのに、ハリーが正装なんだ?」と言い出して、ハリーも制服での参加となった。

 なので、オリビアの御披露目は、二人共制服姿という、とても初々しいものとなった。


 一通り有力者への挨拶を済ませ、同級生の元に戻ってきたオリビアとハリーは、「お疲れ様」と、(ねぎら)いの言葉をかけられた。

「殿下が、オリビアの放った雷魔法について、詳しく聞きたいみたいよ?」

 と、エレが果実水をオリビアに手渡しながら、殿下の方を見る。

「同じ雷を扱う物同士として興味があるだけだ」

 と、ニョロに氷菓子を食べさせようとする。



「オリビア様、見事な攻撃魔法でした」

「オリビア様が、わが領地に来てくださるなら、もう『魔』は怖くないですわ」

 先程から、オリビアに話しかけようと、様子を伺っていた人々が、代わる代わる声をかける。

 その様子を見たスクトゥム王子は、「なるほど…… 」と、独り納得をしていた。

「みんな、ごめんね。オリビアも疲れているから、又にしてくれないかな?」

 ハリーが静止して、オリビアを背後に隠す。


 ※


「オリビア、危険なことは止めてくれないか、と言ったよね?」

 人々の輪から抜け出して、テラスに出たなり、ハリーから告げられた言葉に、オリビアは戸惑う。

「あの……『澱み』を消滅しなければならないのでは?」

 おそるおそる答えると、ハリーは、呆れたように首を振る。

「オリビア……君は僕の婚約者だよね?」

「はい……」

「だったら、僕に()()()()くれないか?」

「……」

 オリビアは、どう答えれば良いのか、分からなくなった。

「あの……あの場合は、防御から攻撃するのがセオリーだと…」

 ハリーは、とても残念そうな表情をしつつ

「違うよ。その後だ。君まで攻撃魔法を放つ事はないよね? 友人に任せておけば良かったじゃないか」

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