課外授業
花薫週間(春と夏の間にある、長めの休暇)に、オリビアはヴァルトス領へ『王立魔法高等学校』の同級生と向かった。オリビアの婚約者、ハリーの領地である。
王立魔法高等学校では、成績優秀者で構成された選抜チームを派遣して『澱み』を殲滅する課外授業を行っている。
早めに『澱み』を殲滅することで、『魔』の発生を抑えるのだ。
『澱み』状態は、初歩的な攻撃魔法でも殲滅…というよりも、消滅可能なので、学生の校外活動に適している。と、考えられてる。
もちろん、学生なので基本は騎士団の後方支援に徹底し、攻撃は遠距離攻撃のみとなっている。
例外として、領地騎士団の責任の元、前線での魔法攻撃が許可されている。
ヴァルトス領に向かう選抜チームは、第五王子スクゥトゥム、ウラニス、オリビア、エレの四人で構成された。
本来ならば、ハリーのクラスの選抜メンバーが派遣されるのだが、オリビアが婚約者であることから、彼女のクラスで構成された。
無事、『澱み』を消滅させた後、オリビアの領民への御披露目が予定されている事もある。
ヴァルトス領は、湖と森に囲まれた自然豊かな領地だ。今回向かう『澱み』は、森林の奥地にある。
領内でも十分対応できるレベルなのだが、なにせ数が多かった。初級魔法で十分に退治できる『澱み』が、あちこちに大量発生していて、それらが結合する前に消滅させたい。と考えていたので、人海戦術を行うことにした。
前もって騎士団により、学生でも十分に対応できることが確認されている。
第五王子スクゥトゥムとウラニスは、騎士団と共に前線近くまで行き、魔法攻撃による消滅を行い、ハリー、オリビア、エレは後方にて、回復魔法による浄化を行う事になった。
前方で、派手な爆発音が響く。
「殿下とウラニス、はりきってるわね」
「ここでは、力加減しないで魔法を出せるものね
」
と、オリビアとエレは、クスクス笑いながら回復魔法で浄化している。
ハリーとオリビアは、風魔法に乗せて大気の浄化、エレは土魔法に乗せて土壌の浄化をしている。
「それにしても、オリビアのクラスは派手なんだね」
と、前方の土煙を見ながらハリーが呟く。
「オリビア様も、あれぐらいできちゃいますよ?」
と、エレが答えれば
「僕は、淑やかな女性がいいかな」
「まぁ、僕と一緒にいて攻撃するような場面は、ないと思うけど」
と、柔らかく微笑みオリビアを見つめる。
どちらかといえば、攻撃魔法の方が得意なオリビアは、苦笑いをするしかなかった。
しばらくは、大人しく回復魔法による浄化を行ってはいたが、段々とオリビアとエレは、物足りなくなってきた。前方の爆発音がうらやましい。
オリビアは、ニョロの氷魔法で遊び出した。風魔法に氷粒を乗せて回復をかけた。エレがそれを見て「土は地味だわ……」と落ち込む。
地面に魔力を流していたエレの動きが急に止まる。
「ハリー様! 前方の騎士団とは別の方向から、『澱み』を感じます」
ハリーは、直ぐに近くにいた騎士団をまとめ、エレが察知した方向へ進む。
(さすが、領主だわ……)と、てきぱきと指示を出す婚約者に惚れ惚れするオリビアだった。
「……なんか、空気が重くない?」
「確かに……息苦しいかも……」
と、異変を感じはじめていた所、騎士団とハリーも少人数では危険かもしれないと、後退する事にした。
「雷球体」
「土壁」
突如出てきた『魔』に対して、咄嗟にオリビアとエレは防御魔法を放つ。
そのまま流れる様に、『雷霆』『土槍』で『魔』を消滅した。
ハリーはというと、騎士団に守られていた。嫡男で跡取りなので、まずは身の安全を確保するという、普通の行動なのだが、令嬢二人に助けてもらった形になってしまい、微妙な空気が流れる。




