プロローグ
オリビア・ウェントスは、青々とした芝生の上でひっくり返っている。
目の前には、一点の曇りもない快晴の青空。遠くで聞こえる鳥のさえずり。
そして、覗き込んでくる、アメジストの瞳の眉目秀麗な男性二人と女性一人。
瞬間、オリビアの脳内に不思議な記憶が流れ込んできた。
あぁ、そうか。ここはゲームか小説の世界なんだわ…好きだったわ、異世界転生物の物語。大抵、悪役令嬢に生まれ変わって断罪回避の為に頑張るのよね…
あら、私、なんで、死んじゃったのかしら?
オリビアは思い出そうとするが、だんだんと視界が暗くなっていく……
ふと気が付くと、オリビアは真っ白な世界に漂っている。目前に自身の映像が流れている。
中央の映像を中心にして、複雑に枝分かれを繰り返している。
各々のストーリーを眺めてはみるが、誰かの婚約者になって、学校の卒業パーティーでの婚約破棄からの断罪は確実のようだ。
ヒロインは、回復か浄化魔法のスペシャリストのテンプレ。
なぜか、登場人物の顔がぼやけていてハッキリしない。どの転生物なのか、これじゃわからない。
『大事な所なんだけどな……』
あぁ眠いわ、とても眠いの……オリビアは再び目を閉じる。
誰かの話し声がする。
オリビアは、揺さぶられて、重い瞼を開けてみる。
「大丈夫?」
「急に倒れるから、驚いたよ」
「どこか、打ってない?」
先程の男女が、口々に心配してくれてる。
「ビエント兄様、フォルティス兄様、サルビア姉様」
あえて、オリビアは個人個人の名前で呼んだ。不思議そうではあるが、ちゃんと彼女を見ながら返事をしてくれる。
一呼吸おいて、絞り出すようにオリビアは言う。
「私、悪役令嬢みたいです」
しばらくの沈黙の後、三者三様のリアクションがきた。
「大丈夫か?どこかぶつけたんじゃないのか?」慌てる長兄ビエント。
「悪役令嬢って何?どうしたの?大丈夫?」心配する姉サルビア。
「こんなにかわいいオリビアが悪役?」ひたすら笑っている次兄フォルティス。
コホンと、咳払いをして、先ほど自分の身に起きた不思議な出来事を説明した。
サルビアがオリビアの背中をさすりながら、問いかける。
「よくわからないんだけど、あなたは婚約破棄された上に、罰をうける運命から逃げたいって事でいいのかしら?」
「そうですわ。とにかく死罪や流刑はいやです。お家断絶も困ります」
「婚約破棄された後、助かる方法ってあるのか?」
ビエントが聞いてくる。
「あるには、ありますが……」
攻略対象者を味方に付けて『ざまぁ展開』に持ち込む技があるが、前もって話の構成を知っていないと出来ない裏技なので使えない。と伝えた。
「信じられない話ではあるけど、オリビアが嘘をつくような事でもないしなぁ」
フォルティスが訝しげに話す。
「私が一番嫌なのは、兄姉様に嫌われて、裏切られる事ですわ」
オリビアはとうとう泣き出してしまった。
泣き出した彼女を見て、サルビアがフォルティスに怒りだした。
何で信じてあげないのっ!と責めている。まぁ、直ぐに信じられる話ではないと思う。
サルビアが、その物語に自分達は出てくるのか聞いてきたが、記憶にないので出てこないと思う。と伝える。
それなら、自分達兄姉がオリビアを断罪することはないのではないか?と、サルビアは、ホッと胸を撫で下ろした。
その後、オリビア達は頭を付き合わせて、彼女の運命を変えるためには、どうすればいいのか考えた。
結果、『逃げるが勝ち』ということで、舞台になりそうな学校を避ける事にした。
フォルティスの『王立魔法高等学校』なら、きらびやかな貴族が少ないんじゃないか?。という一言で、オリビアは『王立魔法高等学校』への進学を目指すことに決めた。
ヒロインは、きらびやかな令息が好きなイメージがあった。確率は低い方がいい。
「よし、みんなでかわいいオリビアを応援しようじゃないか」
兄も姉も笑っている。オリビアは大丈夫な気がしてきた。
「そうだ!王立魔法高等学校は、基礎学院の推薦書がないと入れないから頑張れよ」
と、フォルティスが思い出したかの様に言ってきた。
この時、オリビアは基礎学院に入学する年齢だった。
ビエントとサルビアが無言でオリビアの両手をギュッと握るのでした。
※
長兄ビエント 17歳 王立学校2年
次兄フォルティス 15歳 王立魔法高等学校 入学直前
姉サルビア 14歳 基礎学院2年
私オリビア 12歳 基礎学院入学直前
エピローグの題で、投稿していましたが、先程、間違いに気付きました。
序章です。始まりです。すみません。
https://ncode.syosetu.com/n5227ib/
『魔法だらけの世の中で、式神使いはいかがでしょう』も、よろしくお願いします