そうですねぇ、私がするとするならば
苛めの範疇とは(
「ふぇ~んっ!!苛められましたのぉ~」
に対し
3倍返しだ!!!位には冤罪に対し報復する感じの娘さんの話です
苛め、については何も痛い描写はしておりません
(多分ですが)
でもワードに対し痛みを覚える方は閲覧されない方が良いかと思われます
「アデリーナ、お前との婚約を破棄させてもらうっ!!!」
やはりそうでしたか
ドレスが届く事もなく、ご本人のエスコートもなく、一人でこさせるなんてね
ここは魔法学園の卒業パーティー
その場で壇上から声高らかに私を睨み付けてるのは、私の婚約者である第一王子であるフィリアン殿下です
あぁその腕にぶら下がってるのが例の男爵令嬢なのですね
騎士団長子息のガルティ様や宰相子息のリグト様も一緒にいらっしゃいます
ちょっとこれはもうどうにもならないでしょうね
「理由をお聞きしても?」
私は毅然として彼らを見上げます
「私の婚約者、いや王妃になろうとするものが、あることか私の愛しいマーニャを苛めたらしいな!
酷い言葉を投げ掛け、彼女の所持品を隠したり、あろうことか階段から突き落としたそうではないかっ!
そんなお前は俺にふさわしくない!!」
「苛め、ですか?確かに貴族のマナーに関した苦言はもうしましたが、所持品の隠蔽や階段から突き落としたなどということはありませんわ……何時の日時でしたでしょうか?」
知らぬ存ぜぬな私の態度にイラついたのか
「もういいっ!!お前との婚約を破棄し、この私の真実の愛であるマーニャと婚約を結び直す!!」
「そうですか、とりあえず婚約破棄だけ了承いたします……また、真実の愛をうたわれたのですから、私、そして当家との再婚約は受付いたしません」
「でも、これで縁が終わりというならば、美しき思い出ぐらいはいただきたいものですが……最後に踊って頂けません?ね、リアン」
王妃教育からは忘れてしまった笑顔で彼に手を伸ばします
リアンは息をのみ、怒りとは違う赤ら顔で私の手を取りました
私は愛しいような懐かしいような風貌で彼を迎え、そして踊り始めました
美しき思い出となるようにスロースターターな曲が流れて来ました
楽団の選曲、とてもよろしいわね
私は私の記憶に、そして彼の記憶に残るように丁寧に適切に美しく艶やかに踊りました
踊り終わりに礼の動作から流れるように膝をつき結んだ彼の手の甲に口付けします
「あの日いただいた口付けをお返しいたしましたわ、新しい恋に生きて下さいませ」
彼は惜しげにその手をしまいました
そして私達は双方に別れていきます
断罪する側と、断罪される側に
「私は苛めはしておりません、そして、私がするとするならば……ですが」
プレゼンは必要ですよね
「先ずは前例として、私に喧嘩を吹っ掛けてきたエラード子爵令嬢エレに、私を突飛ばし怪我をさせたメラニア男爵令息ガィード、私を殿下の婚約者候補から蹴落とそうとしたセレンティ侯爵家」
最近見掛けず、王都から消えた方々の名前です
が、殿下らの反応は今一つ
せめて侯爵家ぐらいは覚えてて欲しいものですが
私の後ろから従者が書類を手渡してきたので、手早く目を通します
私はその一枚目を取り出しました
「ご報告いたしますわ、そこな男爵令嬢は先程平民になったご様子です」
「嘘よっ!なんであたしが平民になるのよ!デタラメを言わないでよ!!フィルに愛されてないからって嫉妬しないで欲しいわっ!!」
マーニャは殿下に抱き付きながら、酷い酷いと罵ります
「いえ、本当の事です」
私は報告書を読み上げます
私は苛め、として彼女の家を見張らせ瑕疵あればつつく算段でした
結局彼女の家を末端として埃が立ってしまった家の中に、見付けてしまったのです彼の母のご実家を
「私は彼女の家の埃だけ叩ければ良かったのです、彼女がこの学園から去る理由を見いだせれば、と」
「まぁ彼女が大人しく妾妃に収まるつもりなら公表はしないつもりでした」
「が、殿下の母君である側妃様のご実家も此度の騒動で、大元としてその悪逆が裁かれる事になりました」
領地の横領に禁忌である孤児を奴隷にする為の人身売買や色々、仄暗い謀があったご様子で、既に私の私兵である我が家の影により陛下にも同じ報告書が上がっており、この間に調書にあった家に兵が向けられている事でしょう
「なので、ここまでの大事となりました」
「あと、此方のお二方からもお話がありましてよ」
私は場を譲るように、二人の令嬢の後ろに下がります
「わたくしステイラー辺境伯長女アンジェスタは、婚約者有責でガルティ様との婚約を破棄させていただきます」
「同じく、ラヴェンサー侯爵家次女サティアは、婚約者有責でリグト様との婚約を破棄させていただきますわっ!!」
彼女らは手にした映像記録媒体を起動させます
その映像には、王宮の庭園のベンチでガルティ様に股がるように向かい併せとなり艶かしく動くマーニャの姿と、学園の図書館内でマーニャに覆い被さるように蠢くリグト様の姿が映っております
着衣はしているようですが、どちらもマーニャの足に下着がかかっており、致してる事が明白でした
傷がつくのは私だけで良かったのに
「二人とも良かったのですか?」
「甘いですわ、ここは徹底的にやりましょう!出せる膿は出しきる方がよろしいわ!」
「肉を切らせて骨を断つ!ですわ!!私達の傷なんてほんの掠り傷でしてよ?」
逞しい二人に私は救われます
そして会場に乗り込んできた陛下とお父様、そして王宮の兵達が、報告書に上がった家の子息令嬢達を保護の名目の元、捕獲されました
「殿下、私はマーニャに対し苛めはしておりません……が、今上げた報告書が私の苛めの内容になります」
「つまり、第一王子であり、王位継承権第一位の貴方が私の婚約者となったのは、我が家の後ろ楯と私の持つ情報網と権力を貴方につける為であり、私の力を王家に留める為でした」
「そして今、真実の愛であるマーニャは先程平民となり、王家との婚姻は出来ません」
「また側妃腹の貴方が王位継承権第一なのは私が居てこそでした」
「また、私との婚約を破棄いたしましたし、私も了承済みです」
「王座にも座れず、公爵にもなれぬ選択をしたのは殿下自身です」
私にはどうしょうもありません
私はただ相手を苛めていない証拠を、私にとっての苛めをプレゼンしただけです
因みにマーニャが言う苛めに関しては冤罪ですし、此方が正しいという証拠は集めており、対策しておりました
解せぬのは、階段から突き落としたその日、殿下は私と、王妃の名代として王都から離れてた日なのにどうして彼女を信じたのか……
でもちょっとやりすぎた
大きめの埃が出てきちゃった
放置出来ないサイズの奴が
卒業パーティーは陛下のお言葉により終焉に向かうご様子
つまり、フィリアン殿下は子を作れぬ処理をされた後に廃嫡、王命でマーニャと婚姻させられ、つまりは二人とも平民落ちとなりました
そして彼ら自身の資金から、私への慰謝料が払われる様子です
影によると、王子が時折手を翳しては手の甲に口付けされていたのだとか
何処かを懐かしむその顔は穏やかであったそうです
因みにマーニャの子は彼らも預かり知らぬ誰ともにつかぬ髪と瞳の男の子だったとか
監視をされてるにも関わらず他の男性と懇ろになろうとした所を捕まり厳しい北の修道院につれていかれたそうです
彼らの子?はフィリアンが自身を反面教師として確り育成されたとか
今回の捕物帖で捕縛された方々は罪の重さにかなった処罰がされました
そしてガルティ様は廃嫡され王宮や辺境伯の息のかかった場所で活躍出来る筈もなく、小さな村の警備隊を細々しているそうです
ご兄弟(何処のだ)のリグト様も廃嫡、顔だけは美しかったので家を出された所を浚われ何処かの男娼となったという噂が出たそうです
アンジェスタは困った事にオジ専だったらしく歳の大きく離れた騎士団副団長をお選びになり、もといご実家である辺境伯家の婿にスカウトされたとか
サティアは王宮に勤め始め仕事一筋でしたが、同僚の後輩に懐かれ口説かれ落とされそうでヤバイと悲鳴をあげていらっしゃいます
王家の方ですが、フィリアンの後に生まれた王妃の第二王子がその後立太子しました
側妃は幽閉され、ご実家もなく、我が家からの支援も切らせて頂きましたので、寂しい老後を過ごされたとか
そして私なのですが、女公爵となりました
まぁ父は存命ですので次代の、ですが
現在は王命により、取り潰しにあった家の領地を統括し再分配させる事業に携わる事になりました
苛め、の結果ですからしょうがありませんわね
やっぱり苛めは良くありません
「はぁ、疲れたぁ」
淑女らしからぬだらけ具合で、私は背伸びをします
その側で紅茶を入れてくれるのは私の補佐を勤めてくれる婚約者であるレティアーク様です
私を王家に繋ぎ止める事が出来なかったので、せめてこの国から離反しないように、婚約者についてのお話を陛下と父と私とで取り決めを行いました
私王兄殿下のご子息レティアーク様と幼馴染みでした
私の初恋であり、お互いの幼き日の小さな約束で婚約の約束はあったのですが、王命(側妃のおねだり含む)によりフィリアンと婚約させられたのです
なので話し合いにて、レティアークとの婚姻がなければ私は国を出ますと、ちょっとだけ脅しを掛けました
第二王子にも婚約者はおり、どちらの婚約者が王妃となっても良いように二人とも王妃教育を受けておりました
ので彼らの睦み良い姿を微笑ましくみてましたので、彼らの間には入りたくありませんでした
ので、第二王子との婚姻も却下させていただきました
私は情報網を総括する立場にあり、日々日々戦々恐々で休まる時はありませんでした
王妃教育での貴族の微笑みという仮面は良く使わせて頂いてました
王宮には魑魅魍魎が跳梁跋扈しておりますし、情報は生き物のように蠢きあい複雑にからみあうのです
覚られることなく過ごしていくものしんどいものです
なので、癒しであるレティアークを外すことは出来ませんでした
アルカイックスマイルの中に幾つもの切り札を隠し持ちながら、私は今日も生きるのです
そして本当の笑を見せるのは愛しい婚約者のみに
婚約者のみに、です
フィリアンもあれはあれで好きでしたのですけどもね
婚約破棄から溢れでた膿はどうしょうもなかったのですが、彼らが大人しければその膿は深く深く澱み積もってても良いとはおもってました
何時断つか使うか、だけで、何時でも実行に移す事が可能でした
火の粉だけ振り払う、だけでよかったのですけどね
苛めはいけません苛めは
婚約者に割り当てられる資金を愛人に貢ぐ云々も入れようとしたけど外しました
「少しぐらいはブラフで適当に贈り物してくだされば許してさしあげたのですよ?」
といいたかったのですが
お話逸れそうなのでやめました
が、ブラフいれないからツッコミ入れられるんですよね、贈り物案件の使い込み云々は