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7・そして、暗澹たる事態が進んでいた

 遼東半島売却の話が紛糾している頃、俺はちょうど陸海どちらへ入るかの選択を迫られていた。


「では、海保で」


 と、にこやかに言ってみたが、そんなものは無いと言われた。


「海上警備隊ですよ」


 そう言うと、驚かれた。


 どうやら、窓際や陸軍に居場所がなくなった者たちの掃き溜めなんだという。そんなところに宮様を送り込むなんてと困惑顔だ。


 唯一、権兵衛さんが警備隊の地位向上になると喜んでくれたので入る事が出来た。


 そもそもが海軍傘下なので、海軍兵学校で学び、配属となった。


 その頃には遼東半島は米国に売り払われ、多額の売却金を得るとともに、米国資本が入ってきて線路や貨車の製造が日本で始まると景気の良い話が始まっていた。


 俺は宮さまと言う事で最前線の対馬への配属はされなかった。


 1908年の対馬は本当に酷い状態だ。


 戦争が終わって2年が経つのに戦時下である。


 毎日のように海賊と称する韓国軍がやって来て海上警備隊や陸軍と交戦しているような状態である。


 南部さん曰く、三八式の活躍の場らしい。どうやら最近は軽機関銃の開発にも乗り出しており、後の九六式に近いモノを既に設計中だという。


 そんな情勢下、俺が配置されたのは済州島だった。


 ここには港が整備されて大連への中継点となっている。


 対馬海峡がどうにもならないので九州を廻るルートが主流で、ここで一息ついて大連へ向かうのだという。


 俺が乗り組むのは警備艦の一隻、鉄船だが、軍艦と言うより漁船みたいな感じがするシルエットで、最高速度も22ノットだとか。


 この時代にしては高速だという。武装は6斤砲が2門に機関銃、後は立検隊が有する機関短銃。


 俺はその立検隊の隊長である。実際の指揮は新品の俺ではなく、陸軍からやってきた古参の下士官だが。


 以前聞いていた海上警備隊の悪い話がここではまるで見当たらない。


 確かに士官のレベルは高くないらしいが、如何せん小さな船である。士官も兵隊も無い。デカい船なら明確に分かれているらしいが、小型艦では一蓮托生、全員の顔を覚える事が出来る程度の乗員しかおらず、海賊が乗り込んでくるようなら逃げ場も無い。銃撃されたら被害も平等に受けることになる。


 そんな中では腐っている暇も無いのだろう。


 そして、満州帰りや朝鮮帰りという陸軍からの転向組の戦意旺盛な事。更には、騒乱で身内を殺された者など、中々に復讐心旺盛であるらしい。


 そんな、皆殺し上等の警備態勢なので、海賊船を捕捉したら逮捕などと言う手段はとらない。即撃沈。それが無理なら皆殺しである。


 有無を言わさぬトリガーハッピーには呆れるしかなかった。


「良い鮮人は死んだ鮮人だけだ」


 そんな西部開拓時代の名言が普通に語られている。


 だが、それでは後々困るだろうと立検隊の在り方を変える提言を行った。


 要するにSWATのような人質救出が可能なスキルを身に着けようというモノだ。


 現状では動く人影があれば尽く撃ちまくるので同士討ちすら起きている。


 さすがにこれはヤバいだろと提言して、自身も半年程度みっちり訓練に励むことになった。


 1909年、そんな訓練を受けて戻って来た警備艦での任務である。


 訓練が横須賀で行われていたので南部さんが三八の不具合は無いかと足しげくやって来て、改良型機関短銃を試験してくれと渡してきたのは迷惑な話だった。


 といっても、今やそれがこの艦では試験配備されている。これ、MP5と何が違うん?


 南部さんによると、高級なローラーロッキングなどと言う機構は使っておらず、三八のままだというが、外見から分かる話ではない。


 三八と試製二型機関短銃の大きな違いは固定式弾倉から着脱式弾倉へと変化して、装弾数が30発に増えた事だろう。


 もろMP5のようなバナナ弾倉が生えている。そして、防弾チョッキこそないが、腹や胸を防護するように6本の弾倉を仕舞える弾倉袋(マグポーチ)?と言う奴を抱えている。これで海賊の持つ拳銃弾なら防げるが、Gew88は無理だ。


 そうそう、韓国なのだが、武装強化著しい。


 その原因は、英国に次ぐ白い粉(アヘン)の密売人に成り下がっているからだ。


 土地の痩せた朝鮮ではマトモな作物が育たず、ケシ栽培が普及しているらしい。


 そして、それを満州の朝鮮族や馬賊を介して大陸へと密売している。


 その売却益で武器弾薬をしこたま買い込んで対日闘争とやらに突っ込んでくるのだからどうしようもない。


「前方に商船。国籍旗ありません!」


 そんな声を聞いて準備命令を出す。ほどなく正式に艦橋からも命令が届く。


 船はどうやら大人しく従うらしく、停船した。船員は中国人らしいな。


 だが、怪しさ満点。プンプン匂う。


「乗り組みはじめ!」


 接舷するとともに俺たちは商船へと飛び移り、ニコニコしていた中国人風船員を拘束。流れる様に船内を捜索して抵抗しようとした船員を射殺し、抵抗を諦めた連中を拘束した。


「積み荷は子供っておい・・・」


 船倉にはすし詰めにされた子供たちが居た。


 今の半島情勢を象徴するような情勢だった。


 輸出品目が白い粉と人。もうどうしようもない崩壊国家だろ、コレ。


 この様な積み荷は最近増えているという。


 奴隷貿易は陸上よりも海上が効率が良いらしく、上手く誤魔化せば捕まらない。単に今回の船員が匂い過ぎただけだ。


 あの半島は今どうなっているのか考えたくもない状況だと覚悟を決めた瞬間だった。


 それからも毎日のように済州島から大連までの警戒を行っている。


 遼東半島には米国海軍も駐留するが、ロシアの要求もあって大型艦は巡洋艦2隻までと決められており、駆逐艦や日本から購入した警備艦ばかりが屯している。


 ロシアにしてももちろん日本にしても、金で買った土地に艦隊駐留されるのはさすがに癪だし、そこのところは米国も理解しているらしい。


 黄海での警備は海賊殲滅だけでなく奴隷貿易の摘発という項目が加わって、ただ敵を見たら撃ちまくれば済む対馬近海よりも厳しい海域となっている。


 もちろん、奴隷貿易船を摘発したと言っても、保護した子供を半島に還したって明るい未来があるとは思えんのだが、仕方がない。 

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