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6・そして、また厄介な問題が待っていた

 何とか終わった戦争だが、日本国内にも深い爪痕を残すことになっている。


 宮城襲撃事件をはじめとして各地でいわゆる鮮人騒乱が吹き荒れ、半島人と関係者の徹底した排除が行われている。


 銃器を持って暴れた地域は限られるが、一時は日本へのロシア軍上陸という噂まで流れていたので、その噂や大韓帝国の宣戦布告によって鮮人だけでなく、そのおこぼれにあずかろうという輩まで暴れていた。


 いわゆる社会主義者も居たので、後に言う赤狩りも徹底して行われることになった。


 ホント、とんでもない大疑獄事件で、関係あるのかどうかも分からない様々な人が投獄される事態に発展してしまった。


「戦争が終わってみると、被害を抑えるという目的から大きく外れてしまったな」


 そう言って権兵衛さんが肩を落とした。


 強引に陸軍にも麦飯やパン食を導入させたことで脚気を抑え、戦病死を極端に少なくできていたのだが、ロシア軍の大攻勢によって、旅順攻略戦による戦死や脚気による戦病死を抑え込んだにもかかわらず、結局は史実と変わらないほどの戦死者を出してしまった。


 あげく、陸軍では、入営すれば白米が食えると喜んでいた兵隊が食いたくもない麦飯や慣れないパンを食わされて不満だったという。

 もちろん、カレーをはじめとする豪華な具材でその不満を何とか抑えはしたのだが、軍に入っても所詮は麦飯という不満が日本中に蔓延してしまう事になった。


 そんな不満が国民に蔓延しているのだが、一方ではトンデモナイ負けと空前絶後の完勝を一気に味わったことに対する処理をどうすべきか、どうしようもないモヤモヤをも抱えていた。


 満州での敗退によって、一時は総動員体制によって女性の工場労働が実際に計画、実行されたところもある。


 中には気の早い事に郷土防衛の為に動き出したなんて話まであった。


 そんな混乱も、戦争が終わってみると半島海賊という問題の積み残しとなっていた訳だが、この事態にほくほく顔の人がいる。


「機関短銃がバカ売れですよ」


 とニコニコしている。


 例のマシンガン。昨年制式化され、三八式機関短銃として軍が正式に採用した。


 そして、陸軍の制式装備となった上に、海軍にも採用されている。


 最も熱心に導入しているのは海賊対処を行う海上警備隊だろう。


 さらに、騒乱事件が多発した事から、警察にも武装部隊が各道府県に設置されることになり、そこへも配備されるという。


 もちろん、皇宮警察にも制式装備となったし、内務省には警備専門部隊が作られるとの事だ。


 何とも物々しくなっていく。


 そして、話しはさらに続く。


「今次戦争の戦訓として新たに採用すべき小火器の研究が進んでいますが、塹壕戦主体であった鞍山攻防戦の記録を精査した結果、ナチスが得た戦訓に近いものが判明しました」


 と、ニコニコしている。


 とりあえずはフェドロフ?とかいうショートケーキ?なライフルをベースに開発を行うそうだが、後々、ストレートブル式をモノにして、ガス圧作動式の突撃銃を作りたいらしい。


「一応、実包は三十年式で良いのですが、弾頭の改良や装薬の改良を行って、もっと性能を上げていきたいですね」


 と、上機嫌である。


 片や権兵衛さんだが、どうやら悩み顔だ。


「海賊対処のために多数の船を必要とするので、大型艦の建造をいくつか中止しなければなりません」


 どうやら、大型艦を中止して海上警備隊の整備を行うそうだ。


「韓帝国に海軍を持たせないというのは間違いかもしれませんな。治安維持すらままならない状態を野放しにした挙句、対日攻勢と称して海賊を扇動、支援している様です。自己解決能力を持たせて対処要求を突き付けた方が良かったかもしれませんな」


 と言っている。


 さらに困ったことに、ロシア軍も地上部隊しか駐留しないので海賊対処はまるで無関心である。今のロシアは極東の海に出る手段がない。


 そんな最中、更に事態は続いていく。


「いや~、上手く講和はまとめたんじゃが、米帝の要求が過剰で、遼東半島売却の話が出とります」


 と、伊藤さんが頭を掻いている。


 どうやら、満州鉄道を手に入れた後には、その開発に噛ませるという密約があったらしく、仲介料をせがんできているらしい。


 満州を追い出された日本が持っている権益と言えば遼東半島だけ。


 他にも樺太やカムチャッカの権益もあるにはあるが、米国の欲しいものではないらしい。


「せっかく手にした遼東半島をくれとは、さすがジャイアンですね」


 と、俺も伊藤さんに賛同した。


「しかし、悪い話でもないので、困ってるんです」


 という。


 何が悪くないのかよく分からないが、日本に大きな利益はあるという。


 どうも、ロシアも満州の鉄道については資金難であるらしく、米国はそこにも噛もうとしていると、伊藤さんが言う。


 そうなると、更に遼東半島の重要性が・・・


「だからです。米帝にうっぱらう代わりに、鉄道資材を日本から買うと言っとるんですよ。まあ、日本国内に米国資本の工場を作る気ではいるようですが、そこから派生するものが多いですからね」


 なるほど。


 遼東半島を高値で買ってくれた上に、日本にも資本投下を行って、それを満州へと。


 確かにこれは悩ましい話ではある。

 



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