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42・そして、海戦は新たな課題を生み出す

 米艦隊がどこへ向かっているのかさっそく捜索が始まったが、なかなか見つからない。


 前世であればフィリピンを目指す形でマリアナへ現れるという予想が出来たが、現状はフィリピンも中立を宣言しており向かえない。


 戦争目的である満州を守るという主張からすれば、日本へ向かっていると見るのが一番有力な観測だが、韜晦航路を採ってオーストラリアへ向かうのではないかという意見すらあった。


 このため、何とか運用が間に合った九五式飛行艇が太平洋各地で哨戒飛行を行っている。


 ただ、数が少ない上に全く捜索範囲を絞れていないので全く見つけることが出来ない。


 最初に「何か」を発見したのは哨戒を行う航空機や艦船では無かった。


 太平洋側の主要都市近辺に配備が進んでいる地上レーダー施設が複数の反応を捉えて警報を出した。


 まず発見したのは釜石近郊の施設だった。


 だが、周辺に飛行場はなく、迎撃に上がった戦闘機が到着するより先に製鉄所施設が爆撃を受けてしまう。


 悠々と引き上げていく米艦載機をただ見送るしかなく、次はどこへ来るのか、そもそも、敵がどこにいるのか、捜索が続けられ、何とか発見したのは翌日になっていた。


 10月25日、ようやく発見した敵艦隊は東北から220kmの距離に居た。


 まさかいるとは思っていないような至近距離に居た敵に慌てて出撃する日本海軍。


 米艦隊を発見したのは九六式偵察機であったため、その小ささから米軍は発見出来ずに悠々と航海を続けていた。


 そもそもが陸地に近いので米側は偵察機の無線発信とラジオや地上基地、周辺の日本艦船の交信を識別できなかった。する気が無かったのかもしれない。


 そして、幸運にも存在に気付かれることなく監視を継続しているうちに艦隊へと地上を発進した攻撃隊がが殺到する。


 だが、押っ取り刀、とにかく海軍機の先導で駆け付けた陸軍機は要領えない投弾しかできないし、海軍機にしても戦闘速度で走る艦隊を襲撃した事など無かった。


 結局、米側は戦闘機を上げるのが間に合わず攻撃を受けたが、至近弾こそあったが命中弾はなく、そのままやり過ごす事が出来た。


 日本側も迎撃をたいして受けることなく攻撃態勢に入れたので損害も軽微だった。


 そうして、昼を過ぎて第二次攻撃隊が編成されて攻撃に向かったが、こちらは警戒されており、すでに上空に居た艦載機に発見されるや続々と上がって来る戦闘機に追い回されて攻撃どころでは無く撃墜され、逃げ惑ってしまう事になる。


 半数近くが帰ってこなかった第二次攻撃隊の惨状に頭を抱える日本軍。


 そんなころ、ようやく会敵を果たした駆逐艦の監視のもと、翌朝、何とか戦艦部隊が米艦隊と会敵する事が出来た。


 日中の海戦であり、日本側もちょうど横須賀にあった蒼龍を随伴して海戦に臨んだ。


 蒼龍には九六艦戦隊が居たので米艦載機を蹴散らす事は造作なかったが、如何せん、実戦投入を急いだ結果、攻撃隊の編成配備まで手が回っていなかった。


 積んでいるのは九六艦戦24機、九六偵察機4機でしかない。


 無理を押しての第三次攻撃隊は九六艦戦のサポートもあって砲戦を開始した米艦隊の隊列を乱す事には成功したが、思い描く様な戦果を挙げることなく終わった。


 だが、この攻撃で陸軍機が数うちゃ当たる式に小型爆弾を投下し、戦艦の観測機能を奪う事に成功した。


 8隻の戦艦を投入した米艦隊に対し、6隻の長門型で挑んだ日本。


 当初は劣勢であったが、陸軍機のファインプレーで何とか体勢を立て直す事が出来、夕方までに1隻を撃沈、3隻を撃破、他4隻も水雷部隊やなけなしの第四次攻撃隊の奮戦もあって降伏に追い込むことが出来た。


 随伴した空母サラトガはその巨体から攻撃対象とされ、小型爆弾による損傷で飛行機能を失ってしまい、煙突への損傷もあって戦艦部隊と共に降伏する道を選ぶことになった。


 何とも締まらない結果に終わった海戦。日本側戦艦も沈没こそ出なかったが、2隻が大破し、無傷の戦艦は無い状態。駆逐艦3隻沈没、軽巡1隻大破漂流、重巡は戦艦と撃ち合って早々に大破していたりと、ユトランド海戦よりはマシだが、日本海海戦のような劇的な勝利とはいかなかった。


 結果として勝てたのは良かったが、砲門数に勝る米戦艦に圧倒され続ける状態で、2隻が観測能力喪失となっていなければ結果は分からなかった。


 後の調査によると、米戦艦も無傷の艦はなく、38cm砲弾によってかなりの打撃を受けていた。


 複雑な揚弾システムが祟って故障をきたした艦もあったし、防火扉一枚が爆沈を防いだ例もあった。


 日本側も大和をモデルにした集中防御を取り入れていたが、溶接が未熟で鋲接と溶接の混用が弱点を作り出す原因となっていたり、装甲が36cm砲弾を防いだものの、衝突と爆発の衝撃によってひずみが生じて砲塔機能を破壊していたりもした。


 弾を防げたからとそれで機能を守れるほど生易しくない。そんな現実を再確認されることになった。


「米国はまだSHSの導入がなされていないようです。その従来砲弾でこの破壊力ですから、今後40センチを超える巨弾となれば、いくら貫通を防いだとしても当たり所によっては砲塔旋回や砲塔機能を破壊してしまうのは避けられませんね。集中防御と装甲範囲、装甲重量をとにかく減らすために三連装3基という配置が最適という思想でやってきましたが、装甲範囲や重量が増えたとしても多砲塔型。つまり4基の砲塔を持つ戦艦の方が継戦能力や生存性が高いやもしれません」


 どうやら平賀さんは大きなジレンマを抱えることになったらしい。


 4基の砲塔を持つなら三連装4基とすれば大火力と生存性を両方追い求めることが出来る。


 しかし、40cmを超える巨砲を三連装にすると砲塔重量が駆逐艦1隻を超えることになる。砲塔だけではすまず、4基分の長さを守る装甲帯を考慮すれば、巡洋艦1隻分は優にくだらない重量増になる。下手をすれば3基搭載艦と4基搭載艦では1万トン近い重量差が生まれかねないのだという。


 せっかく建造を始めた真打である大和型戦艦に進水前に疑問符がついてしまった。

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― 新着の感想 ―
[一言] パールハーバーの騙し打ち詐称がない状態だと米側の戦意はそれほど高く無さそう。 しかもモンロー主義が依然として米国民の基本的な考え方にありそうだし。 そもそもラストフロンティアだとかいう満州を…
[一言] いや、これルーズベルトと与党に振り回されるアメリカ海軍かわいそうすぎる。 満州とフィリピンがあてにできない状況で、日本近海で艦隊戦しろとか苛めでしょう? 補給線は伸び切るし、負傷した艦の修理…
[良い点] 実戦を経験しないとわからない事や、問題点はなかなか浮かび上がってこないモノですね。 [一言] とりあえず、ルーズベルトが送り込んできた第一の刺客は倒したけど、アメちゃんはどう反応するかな。…
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