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23・そして、問題を解決する

 大正といえば15年しかなかったはずだが、兄は結構元気だぞ?


 事故でも起きて亡くなるのか?


 などと考えていたのだが、最近どうも様子がおかしい。


 権兵衛さんや乃木さんにも相談したのだが、どうやら、史実ではかなり病弱であったらしい。


「まあ、今のこの姿で言うのは本来不敬なんですが、遠眼鏡事件というのがあったと噂されておりまして、うつ病や精神疾患であったのではないかともいわれております」


 そう、権兵衛さんが言う。だが、これまで兄にはそんな様子など無かったが、今はそう言えばと思わなくもない。


「はい、実は、伊藤候が存命中は、陛下によく相談を持ち掛けられ、彼が支えになっておられたようです。それがフグに中って亡くなり、そのショックに加え、これまでの様に悩みを打ち明ける相手も居ないというのがよほど堪えているのではないかと」


 という話だ。


 そして、本来ならばすでに皇太子を摂政として静養に入っている時期なのだが、これまで元気であった事から皆、史実とは違うと安心しきっていたらしい。


 そして、1924年の夏になると、体調を悪化させてしまい、史実通りに摂政を置こうという話になってしまうほどにまで至る。


 しかも、なぜか兄は俺を摂政にしろ、何なら譲位するからと言い出しているらしい。


 だが、それは色々具合が悪い事だらけだと本来ならば皆が分かっているはずの事だった。


 それでもそう言っているというので、宮城へ向かう。


 そこには皇太子殿下もすでに居り、ほとほと困った様子だった。


「上総宮からも何とか言ってください」


 そう言われては仕方がない。


 兄に対面すると、あれだけ元気そうだった顔がやつれ、人は一年程度でこうまで変わるのかとショックを受けてしまった。


 だが、ボケっとしては居られない。


「陛下、私は摂政や、ましてや天皇になど」


 そう、今の状態で俺が天皇に等なってはいけない。


 俺の嫁はアナスタシア。


 確かに、政治的にも東ロシアとのつながりは重要である。それを否定する理由はどこにもないが、まだまだ関係がかくある物になっても居ないにもかかわらず、どちらが下かといった争いが起きかねない状態を作る訳にはいかない。


 もちろん、兄が賢明であったからこそ、伊藤さんや権兵衛さんは東ロシアとの婚姻関係を勧めていた訳で、こうなってはその前提が覆りかねない。


 東ロシアにはオリガさんが居る。


 オリガさんの旦那も帝室の地を引く人物であり、何となればオリガさんの子を帝位につけることも出来る。

 もちろん、現状で露骨にそんなことは起きないだろうが、兄が言うように、俺が天皇になってしまっては、どうなるか分からない。


 兄には男子が2人居るのだから、俺に譲位をするなどという話など本来ならばあり得ない。


 俺の存在は東ロシアを日本につなぎ留めておくための鎖なんだと説明したが、納得しているのかしていないのか。


「父上、御心配なさりますな。時が来れば私が上総宮の子息へと位を譲りますゆえ、どうかここは抑えてください」


 皇太子殿下がそう言うので、納得は出来ないが、それならば仕方が無いかと折れてくれるらしい。


「だが、それならばすぐに譲位だ。いつでも上総宮に位を譲れるようにしておかなければ」


 と、譲位を再開するための改定を主張しだしたので、こちらもこれ以上押し留める事も出来ず、兄の言うように譲位を復活させ、1925年1月1日をもって皇太子に譲位すると決定させてしまった。


 そうして、1925年は祝賀ムードの中で迎えることになった。


 宮城を離れる兄は病状も改善し、顔も以前の様に精悍さを取り戻している様だった。


「上総宮、あの頃はどうにも思い詰めていた様だ。今から思うと、そう急ぐことでもなかったのだがな」


 そう言って来たほどだ。だが、さっさと男児を作れとせっつかれた。


 上総宮家には、今のところ内親王しかいない。そうか、次は男の子か。


 などと思いはしたが、こればっかりは思うようにはいかない訳で。


 そんな騒動があり、一年早く昭和を迎えることになった。


 疲れ果てた権兵衛さんや乃木さん、俺。今日も元気な南部さんと中島さん。対比が酷いよ。


 そんな日本、金融恐慌のきの字もないほど順風満帆である。


「えっと、何だって?石炭なのに石油?意味が分からないんだが」


 中島さんからそんな話を聞いた。


 水が燃料みたいな話をされても理解できない。


 そう思って説明を求めると、ドイツから掻っ攫った技術の中に石炭液化というものがあり、その権利を有するドイツ企業にお構いなく日本が好き勝手やって良いらしい。


 ああ、あのビックウェーブでドイツが反日になってそうやな。


 日本はドイツでベルサイユの印籠をちらつかせて様々な技術を日本へ導入している。


 旋盤をはじめとするマザーマシンは南部さんが国産の基礎を築いたとはいえ、より土台が強化されたのはドイツから掻っ攫う事が出来たからだ。


 そんな技術に、アンモニア製造?やアルミ合金技術など、これから必要となるものがたくさんあり、ドイツに多大な損害を与えてるんじゃないかと南部さんがぼそっと言っていた。


 でも、ドイツ人には悪いけど、ナチを弱体化するためにはよかったんじゃないの?


 そう思うのは俺だけだろうか?


 そうやって連れて来た技術者やらなにやらの中には、二宮飛行機で指導を行う者もいる。エンジンは中島さんがドイツ側に教えるほどだが、機体技術については二宮が教わる側だ。


 そんな中、曲技飛行チームを率いてショーをやったり、陸海軍の航空隊行脚をするパイロットが居る。


 ヒャッハーしてる破天荒な人だが、ゲーリングと並ぶドイツ空軍の要人だったような?


 まあいっか。


 

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