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10・そして、新たな同志を見つける

 歴史は俺たちの意図と関係なくずれていく。


 大韓帝国が暴走して1910年にはロシアに併合された。


 同じ年、日露関係の協議に赴いていた小村寿太郎が暗殺された。


 遼東半島は米国のモノとなり、満州にも米国資本の進出著しい。


 もちろん、その恩恵は日本にも齎されているのだが、中には困ったこともある。


「山本さん、農地解放とか考えていませんよね?」


 ある時、どうやら史実より随分速く農業の機械化が始まろうとしていると言い出した権兵衛さん。


 もちろんの事として、農地解放の話をしそうな気配がしたので、機先を制してそう言った。


「なぜ?小作農という農奴政策など百害あって一利なしでは無いですか?」


 まあ、そう言う面から見ればそうかもしれない。


 この時代の農機具がどのくらいするのかは分からないが、元の時代で考えれば、農地解放が愚策だと良く分かるんだ。


 確かに、農奴制じみたモノは時代遅れではあった。


 しかし、機械化されれば自然と農奴など必要が無くなる。


 そして、農地解放で零細個人経営とされた農業がどうなったかを考えた方が良いと思う。


 農業、まず、基本となる稲作で考えてみれば、トラクターが必要になる。コンバインももちろん必要だ。当然だが、田植え機も必要になる。


 さて、これらはどれくらいするのだろうか?


 ヘクタールクラスであれば、トラクター600万、コンバインは800万、田植え機で300万、起農の初期投資は2000~3000万円と言われる。


 ただ、実際には更なる設備が必要になるので、経営を安定させるには更なる経費とそれなりの時間もかかる事になる。


 もちろん、ヘクタール、一般に町単位の専業や大規模と呼ばれる農家だけでなく、兼業と言われるより小規模の農家もある。


 だが、ここはさらに厳しい。


 機械は小型化するが、それでもトラクター300万、コンバイン300万、田植え機120万円ほど。


 生産面積に対してさほど機械は安くならない。兼業のため作業効率を悪くも出来ないのが原因だ。安くを求めればもっと廉価、小型な機械はあるが、1日2日で作業を終えなければ、休暇を利用した農作業など出来ない。

 

 つまり、労力をいくらかけても利益はなく、能率を求めれば赤字にしかならない。


 それが日本の農業の実態な訳だ。


 その原因は、地主ではなく小作に土地を小分けしてしまったがために土地効率を悪くしてしまった事、本来資本力がある地主ではなく、資金力の低い小作が中小農家となったことで、機械化という時代にまったくついて行けなくなった事が大きい。


 そうして、小さなところから離農が起り、収益が出ないことから後継者がいない。


 そんな末期産業となり果てている。


 挙句、離農や兼業による農地縮小に起因する無計画な土地売買は農地分散も招いてより一層、効率化を阻害してしまう。


 団地や市街地に歯抜けのように残る田畑はそう言った例だ。


 そう言った田畑は区画整理も出来ず、大型機械の導入を阻害する。


 結果、大規模化、集約化といった中でさらに取り残されて草や笹の生える荒れ地が残されてしまう。


「むやみな農地解放というのはそう言った弊害を生むんですよ。小作の待遇改善、機械化に伴う法人化や企業化といった、史実日本と違う形態を目指した方が良いでしょうね」


 権兵衛さんにそう釘をさすと考え込んでしまった。


「分かりました。他の産業と共に考えてみましょう」


 そして、新たな話題が出て来た。


「どうやら、二宮という人物が会社を興して飛行機を作っているらしいですな」


 何と二宮さん、南部さんがカラス型ゴム動力飛行機を大胆に改設計した飛行機を飛ばしているらしい。


 新たに人を雇って飛行機開発を始めているとかで、何とも頼もしい限りではないか。


 そして、南部さんによって官業としての工業生産力は飛躍的に向上している。


 米国資本による工場建設で民業でも史実以上らしい。


 そんな中で、すでに工業規格の話が出ているという。


「もう10年取り組んでますから、そろそろ日本自身がマザーマシンを作れるようになりますよ」


 と、南部さんが胸を張る。


 あと、良いニュースとして陸軍で新たに一人同類が居るという。


「乃木保典、乃木閣下の次男ですな。どうやら九死に一生を得て、というか、そうなったらしいです」


 彼は陸軍で日露戦争の戦史研究から新たな戦術を編み出しているという。


 そして、そこで必要な火器がまさに突撃銃だというではないか。南部さん、我が意を得たり。


「乃木君の考えはユティエ戦術に近いですが、より後年のソレではないかと思い。が、技術が追い付いていないのがなんとも」


 と、腕組みをする。


 南部さんは軽機関銃をほぼ完成させている。新式機関短銃も制式化間近だろうという。


 ただ、今の日本では突撃銃を大量生産するのは難しいし、そもそも三十年式実包ではまだ反動が大きいらしい。


「現用弾を用いるならば、21世紀のアサルトライフルよりも大型のマズルサブレッサーや複雑な内部機構が必要なんですがね。流石にちょっと、計算もままなりませんし製造となると厄介です。狙撃ならともかく、突撃銃とするなら、もう少し弾頭を軽く、装薬も少なくして反動を軽減した方が良いでしょうね」


 との事だった。


 そして、九六式軽機関銃をリファインしたような南部さんの軽機関銃も、現在の技術ではやはり10kg程度になるのは仕方がないとの事だった。


 突撃銃はこれとは全く別の構造を持たせる必要があるし、何より、今の軽機関銃では突撃銃に随伴する事が出来ない。


 AK47とRPKのような出来るだけ重量が近い銃器の開発が必要になるだろうという。


「確かに、後の時代には当たり前の戦術ですが、技術がまだ追いついては居ない。その事を彼が分かっていれば良いのですが」


 話を聞て俺もそう感想の述べる。

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