1・そして、いつものように
連休に入ってそれまで読んでいたネット小説を、自分でも書いてみようと思い立ったんだ。
何のことは無い。よくある第二次世界大戦モノだ。
そう、今更と言って良いものだが、アイデアが浮かんだからやってみようと思ったんだ。
もちろん、そんな本格的なものじゃないが、最低限の事は調べてみようと思った。
ネットでポチポチやればある程度の事は分かる。ハズだ。
さて、いつから始めるのが良いだろうかと思ったが、ゲームの様に未来アイテムが降ってくるわけじゃないから、昭和10年代と言うのは無しだ。そこからスタートしても何もかもが足りない。
ちょっと戦後について考えてみようか。
戦後の日本は飛躍的な復興と経済発展を遂げたわけだが、それにしたって、最低でも東京オリンピックがあった1964年あたりの技術力じゃあまだ心もとない。
実際に飛躍と言えるのは大阪万博のあった1970年頃からではないだろうか。
実際に基礎が固まり、大きく発展を遂げるのはそのくらいだろう。
20~30年はかかるって事。
そうすると、昭和15(1940)年を起点に考えると、昭和ではなく、大正から始めなければいけない事になる。
第一次大戦後、ドイツからの賠償を得る時期か。実際、史実日本もここで色々な技術を学んだはずだ。
しかし、もっと基盤を整えるのであれば、大正どころか明治だろう。
戦後日本が「独自技術」で世界に乗り出していく時期は敗戦から40年近く経っての話だ。
それは、戦前の軍事史を語る上でも都合が良くは無いだろうか?
飛行機が飛んだのは1903年、大艦巨砲の鏑矢であるドレッドノートが完成するのが1906年。
機関銃が本格的に使われるのも1904年の日露戦争から。
つまり、40年後の開花を目指して基礎を作るというのにちょうど良くはないか。
などと考えてネットで調べ物を始めたのだが、何故だか、知っている事ばかりが出てきてしまう。
ちょっと意味が分からない。
もちろん、飛行機を世界で最初に飛ばしたのはライト兄弟だし、大艦巨砲の鏑矢と言えばドレッドノートだ。
だが、色々おかしい事に気が付く。
そして、ふと昨日の事を思い出してみた。
そうだ、そう言えば昨日の夜にも小説を書こうと調べていたではないか。
様々な小説を読んでいて、どう言った設定にするかと言った考えでもって調べていたんだ。
そして、今考えているように、日露戦争前後のスタートってところまでは思い至っていたじゃないか。
で、だ。
そこでなぜか画面がブラックアウトしたんだった。
「日本のやり直しか?」
などと言う老人が画面に現れるという怪現象。
なぜかよく分からずにただ眺めていた。
「おっと、ゲームをやっていた訳ではない様だな。火葬戦記というやつか。ふむふむ。これもゲームみたいなものだな」
などと、よく分からない供述をしていた。
「火葬戦記と戦略ゲームは似たようなモノじゃないか。ゲームは対戦相手やAIが何を起こすか分からないが、小説も書き手のアイデア次第で色々な事が起る。読み手にとってはゲームをやっているのと同じようなもんだ」
などと、更に具体的な供述を続けている。
「ん?どうした。小説を書くなら、ちょっと戦略ゲームがどんなものか、実際にどうやれば良いか試してみたいとは思わんか?」
と、何やら怪しい事を勧めてくる。
ゲームな。
確かにゲームは良いかもしれんが、戦車や軍艦のオンラインゲームをやったことはあるが、何か小説のひらめきになったかと言うと、そう言う事も無かったな。
戦略ゲームは、動画サイトで他人のを見た事はあるが、時間かかるんだよな。ちょっとそこまでやろうとは・・・
「何、夢の様に寝ている間にやれば良い事だ」
などと、全く意味不明の事を言いだしていた。
正直、何を言っているのか分らん。
「ところで、火葬といっても、色々な話があるが、どこをどうしたいんだ?」
と言う。
どこをどうって、何の事だろうか。
などと少し考えてみた。
そうか。
主人公を軍人にしてしまうと、戦争遂行はうまく運ぶかもしれない。
だが、それは往々にして陸軍、ないし海軍のみの話になる。だってそうだろう。
ああ、世の中には秋山兄弟のような例があったか。
だが、それでも関われる範囲は限定されそうだな。
では、技術者ならどうか。
これもこれで問題が無いわけじゃない。
専門分野では大きな変化を起こせても、全体。特に政治を動かせる訳じゃない。
受動的な部分がどうしても出てきてしまう。
ぼ く の か ん が え た さ い き ょ う か そ う せ ん き
を書こうとしても、主人公が大立ち回りをしないと意味が無いんだよな。陸海軍をコントロールできて政治にも力を持っていて、それでいて技術者で。
どんな超人だ?ソレ
「ほう、なかなか行き詰っておるな」
と、そう言えばディスプレイに老人が居たんだ。
いっそ、チートな召喚モノみたいに、適材適所で人を配置できれば事は簡単ではあるんだが。そんなバカな話も無いからな。
「なるほど、複数転移か」
まあ、そんな事をやると話が飛びまくって大変な分量になると思うが。
「ならば、リーダーをやれば良いではないか。言い出しっぺが」
言い出しっぺはアンタだがな。
「コイツは一本取られたわい」
などと会話が成立してしまっている。おかしいと思うんだが、なぜか、この時はそうは思わなかった。
そして、そう言えば、読んだ小説に、ロマノフ家を助けて金髪の嫁さん貰うのあったなぁ~などと考えていた。
「なるほど、そう言う事か。ならば、そう言う地位で逝こうかの」
ふと物思いにふけった瞬間、意識がトンだ。