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悪役令嬢に転生した私が、最高の当て馬になろうと努力したら、溺愛されたみたいです  作者: あろえ
第三部

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第86話:黒田、徹夜した

 翌日の昼間、学園がテスト期間に入ったこともあり、とても重苦しい雰囲気になっていた。


 昼休みに屋上でごはんを食べる時でも、それは同じこと。一国の王子ということもあり、プレッシャーのかかるジグリッド王子は早くも目にクマを作っている。


 そして、徹夜してテスト対策問題集を作成した私もクマができていた。


「ポーラにコピーしてもらったから、ジグリッド王子とアルヴィにも渡しておくわ」


 ここが異世界とはいえ、ゲームの世界が舞台ということもあり、コピー機が使えるのは便利だ。さすがにパソコンやスマホがないので、すべて手書きなのはツラかったが。


 その影響で腕がパンパン、寝不足で顔もパンパンだった。ポーラの誤魔化しメイク術によって、見た目でわからないのは本当に助かっている。


 受け取ったジグリッド王子とアルヴィの顔を見れば、徹夜してよかったと思う。


「クロエ嬢……助かる!」


 ジグリッド王子が涙目になっているので、相当なプレッシャーを抱え込んでいるのだろう。こんなことで手助けできるのなら、私は毎日徹夜してもいい。


「ありがたく使わせていただきますね」


 キラキラッと輝くエフェクトでも発生しているのではないかと誤解するほどのアルヴィスマイルに、私の心が浄化されていく。


 拝みたくなってくるのは、気のせいだろうか。この笑顔を見ることが、私の生きる意味なのかもしれない。


 推しに癒され、疲れ切った体が宙に浮かびそうなほど軽くなってくると、グレンが興味深そうに問題集を眺めていた。


 一応、グレンの分も用意してあるので、サッと差し出す。


「必要ならあげるわ。騎士に必要なのかわからなかったから、迷ってたのよ」


 などと言い訳をするが、完全に嘘だった。


 まだ正式に決まってないとはいえ、グレンは私の騎士になっている。つまり、これが主になった私の初めての贈り物になるわけであって……。どうしよう。主なんて言っちゃったら、私のものって感じがして変に意識しちゃうわ。


 もちろん、グレンをモノ扱いをしているわけではなくて……えへっ。



 必要以上に意識する私とは違い、何気ない表情で受け取ったグレンは、パラパラと問題集を見始めた。


「本当に頭がよかったんだな。去年、テストに出題された問題と被るところが多い」


 とても心外である。私はグレンのあ、あ、あ、主だというのに……!


「去年の問題を覚えている方が意外よ。グレンも勉強できたのね」


「騎士団が厳しかったからな。三回赤点を取ったら、除隊処分が下るように決まっているんだ」


 なるほどね。騎士でも勉強できて損はないし、良いことだと思うわ。


「みんないいよね……。スパルタお姉ちゃんの勉強会に出なくてもいいんだから」


 ルビア、今はアルヴィとグレンの前よ。好感度を下げるような発言はやめなさい。


「こうやってクロエ嬢がテスト対策を手伝ってくれて、俺はありがたいよ。良い姉だと思うけどな」


 なんと! ここでジグリッド王子がフォローしてくれた。


 こういうのはアルヴィの役目だと思い込んでいただけに、素直に嬉しい……!


「何気なく渡してくれていますが、重要な部分をまとめるだけでも時間がかかります。クロエ様は面倒見がよくて、とても優しいですよね」


 やっぱりアルヴィもフォローしてくれるのね。誰よりも優しいのはアルヴィで間違いないわ。


「まあ……貴族なのに、世話好きではあるよな。厳しいのは愛情の裏返しでもある」


 そして、まさかのグレンまでフォローしてくれた。


 みんなどうしたのかしら。まるで私が愛されているみたいじゃない。


 主人公はルビアなのよ。双子の妹という立場だし、ゲームでプレイしてきた第二の私ともいえる存在なんだから、もう少し優しくしてあげてほしいわ。


「私だって頑張ったもん……」


 ほらっ、拗ねルビアになっちゃったじゃない。学生にあるまじき行為であったとしても、授業中に寝ないと過ごせないほど大変で、ずっと頑張っていたのよ。


「わかってるわ。ルビアは頑張り屋さんだもんね、よしよし」


「うぅー、お姉ちゃ~ん」


 まあ、ジグリッド王子と結びついてもらうために、スパルタ授業はやめませんが。

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