表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢に転生した私が、最高の当て馬になろうと努力したら、溺愛されたみたいです  作者: あろえ
第二部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

53/104

第53話:黒田、ルビアと恋愛話をする

 早朝トレーニングをして、学園生活を過ごし、ルベルト治療院で仕事を終えるというハードスケジュールをこなした私はいま、ルビアと一緒に寮へ帰っていた。


「今日はすごい疲れたね……。これから毎日こんな感じになるのかぁ」


 ルビアが嘆く気持ちはわかる。でも、ライルードさんの治療はルビアにしかできないことなので、頑張ってほしい。


 絶対にやらなければならないわけではないが……、優しいルビアなら、見過ごせるはずもないだろう。ましてや、攻略対象の身内なのだから。


「ライルードさんはグレンのお父様なのよ。誠心誠意治療すれば、婚約の話が出てきてもおかしくないわ」


「そういうつもりで治療するのは、さすがにどうかと思うなー」


 私もまったく同じことを思う。でも、オリジナルルートを通った影響で何があるかわからないので、ルビアには頑張ってもらいたい。


 剣術大会に出場することになった以上、私がフォローできる部分は限られてくる。完璧な(パーフェクト)クロエの力を発揮して、略奪愛システムを起動させるしか方法が見当たらなかった。


 しかし、一般的な視点で見ると、私とグレンの距離が近いわけであって……。


「それにね、一日中護衛してもらってるお姉ちゃんに言われても、なんか説得力がかけるんですけど」


 誤解されるのも無理はない。


 狙っているわけではないんだし、略奪センサーは切ってちょうだいね。ここまでストーリーがずれて、私も護衛されるとは思わなかったんだから。


「王妃様の命令なだけであって、グレンは私に興味ないわ」


「実際はどうなんだろうね。見ている側からしても、王妃様の命令で仕方なく受けた、っていう印象が強いんだよね」


 わかってるのなら、嫉妬しないでほしい。冗談抜きで命に関わるのよ。


「ルビアの方はどうなの? 昼休みは、随分と積極的にグレンに声をかけていたじゃない?」


 どういう心境の変化があったのか、昼ごはんを食べた後に教室に戻ってくると、私の席にルビアが座っていて、グレンと仲良く話していた。


 人見知りのルビアにしては、違和感を覚えたのよね。だって、ボディタッチまでしていたんだもの。


「うーん……自分でもハッキリとはわからないの。でも、お姉ちゃんと仲良くしてる姿を見たら、頑張らないとって思って」


 略奪愛センサーがバリバリ反応してるじゃない。その結果、二人の距離が縮まるなら良いのだけれど。


 それに、ルビアとグレンは一番うまくいくと思うの。男爵家のグレンは庶民よりだし、ルビアは公爵家でありながら庶民的だから。


 逆ハールートを目指す以上、そんなことも言ってられないが。


「ジグリッド王子がいることは忘れちゃダメよ?」


「わかってるよ。でも、グレンくんは妙に気になるんだよね」


 逆ハーが当たり前の感覚になったのか、ルビアが言い返してくることはなかった。


 まだ本命を決めかねているから、ハッキリと言えないのかな。最推しを三人も持つ私が言える立場ではないのだけれど……。


「ルビア。随分と惚れやすい体質なのね」


 二人とも一目惚れみたいなものである。


「うっ。言い返す言葉が見つからない」


「でも、それくらい我を忘れて恋をした方がいいわ。いつまでも引っ込み思案のままでいたら、知らないうちに政略結婚しか残されていない状況に追い込まれるもの」


 変な男と結婚生活を送るくらいなら、黒田みたいに独身でいる方がマシだと思う。でも、貴族はそういうわけにいかない。


「お姉ちゃんはいいよね、アルヴィくんと両思いで。あとは互いの家を説得するだけだもん」


「な、な、何を言ってるのよ! アルヴィとはまだ友達よ!」


「まだ、なんだ?」


 お願い、ルビア。少しは手加減して。こっちは中身がアラサーなのに恋愛初心者よ。手が触れただけでハッピー状態になって、手を洗うか真剣に悩む重傷者なの。


 少しくらい欲望が言葉に混じるのは自然なことよ。


 おまけに略奪愛属性を持つルビアがいたら、まともな恋愛なんてできない……はずだったのよね。


 なぜか抜け道を通って、私とアルヴィがくっつきそうな印象があるんだもの。ルビアも応援してくれているし。


「アルヴィは……、好きと言ってくれたわ。でも、恋愛的な意味とは限らないじゃない?」


「お姉ちゃん、ほんっっっとうに恋愛音痴だね。いや、恋愛に関してだけ、自分に自信が持てないのかな。私の背中は押そうとするのに、自分は消極的なんだもん」


 そんな冷静な分析はやめてください。ルビアの動向が気になって、どうしても前に進めない……ということにしておきます……。


「私のことはいいのよ。元々恋愛は諦めていたし、今のままでも十分に幸せなの」


「それが良くないんじゃないかな。諦めていたものを掴めるなら、ちゃんと掴みに行くべきだよ」


「先にグレンの恋心を掴んでから言いなさいよ。王城に出入り自由な環境になったいま、騎士団の練習に励むグレンにアピールするチャンスなのよ」


「私はうまくできる自信があるから。グレンくんは私に似てる部分があるし、なんとなく気持ちがわかるんだもん」


「……確かに、人前で話したがらない部分が似てるわね」


「そこじゃないと思うよ」


 姉のだらしない恋愛を見せている影響か、少しずつルビアが姉離れをしているように感じた。いつもだったら「お姉ちゃんも王城まで付いてきてよ」みたいな形で、巻き込んでくるはずだから。


 本来なら、ルビアとクロエの関係に亀裂が入っていて、関係性が悪化する一方なのよね。姉妹関係だけは、明らかに原作よりも良いルートを通っていると断言できるわ。


 互いの恋愛を応援し会う双子の関係でいられる今の状態が、一番良いのかもしれない。そんなことを考えながら、私は寮へと帰っていくのだった。


「私って、まだ暗い印象ある?」


 自分の評価を気にするルビアと一緒に。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ