表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢に転生した私が、最高の当て馬になろうと努力したら、溺愛されたみたいです  作者: あろえ
第二部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

51/104

第51話:黒田、隣に推しが来る

 早朝トレーニングとライルードさんの治療が終わると、いつもの平凡な学園生活がやって来る……はずだった。


「この問題の計算式は……」


 数学の授業が淡々と進むが、私は授業にまったく集中できていない。


 なぜなら、隣の席にグレンがいるのだ。それも、一年生の教科書がないという理由で机を引っ付けている。


 原作では、ルビアの後ろがグレンの席だったのに。護衛対象が私に変更されたことで、まさかこんなことになるなんて……。


 推しと教科書を共有しろだなんて、ハードルが高すぎるわよ!


 必死にクロエムードを貫く私に対して、なぜか朝からムスッとしているグレンがノートに文字を書いて見せてきた。


『今朝、寮にいなかったな』


 またハードルが上がった気がする。隣の席に座る推しとメッセージのやり取りをするなんて……、幸せ過ぎるわ。


 って、ダメよ。脳内をお花畑にしていたら、ルビアの略奪スイッチを踏んでしまうもの。


 あと、ちょっと変なのよね。ライルードさんの治療のこと、王妃様から聞いてないのかしら。極秘事項ではあると思うけれど、息子なら知っていてもおかしくないのに。


 でも、ライルードさんの性格を考えれば、呪縛の件は隠すような気もする。


 ひとまず私は、推しとのメッセージを全力で楽しむことにした。


『もしかして、迎えに来てくれた?』


『仕事だ』


 まあ、そうよね。私のことを気にしてくれるはずもないから。


『ごめんなさい。王城に用があったの。王妃様の許可ももらっていたわ』


『学園の敷地外に出かけるときは俺に言え』


『昨日はジグリッド王子と稽古していて、とても声をかけられる雰囲気ではなかったけれど?』


『……そういう日もある』


 一応、グレンに声をかけようとして、お茶会の帰りに訓練場に立ち寄っている。でも、真剣に剣を打ち合うグレンとジグリッド王子を見て、声をかけられなかった。


 推しと推しが私のために戦っている……そんな妄想に浸りながら、普通に寮まで帰ったわ。


 自覚がある分だけマシだと思うけれど、本当に黒田って危険な存在よね。でも、そういう時間が一番幸せだったりする。えへへ。


 今朝合流できなかったことが、自分の影響もあったと知ったグレンは、頭をポリポリとかいていた。その不器用な姿が、やっぱりアルヴィとは違う可愛さに見えてくる。


『いつもあんな風にトレーニングしているの?』


『昨日はたまたまだ。剣術大会で戦う相手がいなくなったからな』


『あら、もう剣術大会で優勝する気でいるのね』


『ジグリッドがいなければ、骨のある相手はいない。つまらん大会になってしまった』


『そうかしら。今年は一番面白くなると思うわ』


『一年で有力候補がいたか?』


『ええ。私よ』


『……そうか。怪我しないといいな』


 機嫌が戻ったと思ったら、またグレンはムスッとしてしまった。


 気持ちがわからないわけでもないけれど、それは秘密兵器黒田に対して失礼よ。


『怒らないでよ』


『貴族令嬢の遊びでやるものではない』


『わかってるわ。今朝も王城でトレーニングしてきたし、私は本気よ』


『……本気で取り組むなら構わないが』


 もう一度、剣道をやろうとしている影響もあってか、こうやってグレンと過ごしていると、心まで若返った気分になる。


 剣のことしか考えていない純粋なグレンは、見た目とは裏腹に少年っぽい。クラスメイトのほとんどが貴族で大人びた対応を余儀なくされるし、こういうグレンみたいな男の子は少ないのよね。


 今回は対戦して勝たないといけないから、心を鬼にしないといけないけれど。


『こっちばかり見て、癖の研究をしようとするな』


 推しの純粋な心に見とれていた、なーんて言えるわけもないので、適当に誤魔化すことにする。


『どうやって負かそうか考えていただけよ』


『授業に集中しろ』


『話しかけてきたのはグレンでしょ?』


『記憶にない。わからなくなっても教えるつもりはないぞ』


『残念ね。私、この間のテストは全部満点で学年一位だったわ』


『今度は下から一位になるかもしれないな』


 授業中に推しと文字だけでやり取りするという高揚感を覚えつつ、私は何気ない平凡な日常にソワソワするのだった。


 推しが近すぎるというのは、良くも悪くも精神的に大きな負担がかかると学んだ授業である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ