第27話:黒田、なぜか好感度が爆上がりする
「お姉ちゃん、頑張ってたんだね。偉い偉い」
どうしてこうなったのか。寮に帰ってきた途端、待ちわびていたルビアに捕まってしまった。
原作だと、聖魔法を一人で勉強していたことにルビアが怒り、姉妹喧嘩に発展するはずなのに……。
「ツラかったよね。頑張ったよね」
なぜかルビアの好感度メーターが吹っ切れて、泣いた子供でもあやすように抱きしめられ、頭を撫でられている。
「ルビア、私は別に……」
「いいの! 何も言わないで! 同じ双子なんだもん、気持ちはわかるよ」
聞く耳を持ってくれそうにない。女性らしい成長を遂げる我が儘ボディをぶつけてくるのは、私に対する自慢だろうか。
新しいタイプの姉妹喧嘩を勃発させてくるとは、良い度胸ね。勝てるフィールドで戦おうとするのは、当然の戦略だもの。
いや、さすがに疲労がピークに達しているので、ルビアと言い争う元気は持ち合わせていない。
早く休ませてほしいわ……と思っていると、コンコンッと部屋をノックして、ポーラがやって来る。
「クロエお嬢様……」
ルビアがいるから詳しいことは言えないけれど、ポーラのおかげでアルヴィイベントが発生したのよね。お礼を言っておかないと。
「ポーラ、色々とありが――」
「感服いたしました!」
こっちも聞く耳を持たないパターンね。いったいどうしてこうなってしまったのか。
「ひたむきに努力を重ねた己の姿を見せ、ルビアお嬢様に歩むべきを道を示すなんて、無器用なクロエお嬢様らしくて、とても立派です!」
なるほど。疲れ果てて気づかなかったけれど、治療している光景をポーラも見ていたのね。街中でルビアとはぐれてほしいとお願いしておいたから、気になって尾行していたんだと思うわ。
「でもね、聞いてほしいのよ。私も深く考えていたわけでは……」
「わかっています。クロエお嬢様の気高くて美しい心は、私にはあまり理解することができないでしょう。それでも、怪我をされている人を助けたい、その一心で動かれていたんですよね?」
ポーラの目がキラキラと輝いている。逆ハールートを進みたい、その一心で動いていたなんて、絶対に言えないわ。
「そ、そんな感じかしら」
「やはりそうなんですね!」
思っていた展開と全然違うわ。完璧な行動を取るために努力するクロエは、略奪愛システムが働くため、嫌われたり嫉妬されたりすることが多いはずなのに。
何でこんなに好感度が上がっているのかしら。
「私の自慢のお姉ちゃんだよ~」
ただでさえルビアはシスコンだったのに、重度のシスコンになったわね。
度が過ぎた行動を取ると、クロエの評価が上がるのかしら。どのみち略奪愛システムが働いて、ルビアの好感度に変換されるとは思うのだけれど……、アルヴィも良い評価をしてくれていたのよね。
まあ、オリジナルルートを通った影響で、まだ補正が利いていないに違いないわ。アルヴィはルビアのことをかなり意識していたし、そのうち二人は結ばれるはずよ。
「ルビア、いい加減に離れてもらってもいいかしら。早くお風呂に入りたいのよ」
「もう意地っ張りなんだからー、お姉ちゃんは。仕方ない、今日は一緒に入ろっか」
唐突に変なことを言い出したルビアの言葉を聞いて、双子の姉である私は何が目的なのかを察した。
「正直に言いなさい。怖くて一人でお風呂に入れないのね」
「ち、違うよ。が、頑張って帰ってきたお姉ちゃんの背中を、な、流してあげたいと……」
「大丈夫よ。一人でお風呂に浸かってのんびりしたいの」
「遠慮しなくてもいいんだよ。ほら、二人でお風呂に入った方が楽しいでしょ? ……お願いします」
この日、妙にベタベタしてくるルビアがお風呂だけでなく、ベッドにまで潜り込んできたのは言うまでもないだろう。
私も悪夢にうなされた時期があったため、仕方なく付き合って上げることにするのだった。




