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悪役令嬢に転生した私が、最高の当て馬になろうと努力したら、溺愛されたみたいです  作者: あろえ
第一部

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第22話:黒田、当て馬計画のミスに気づく

「クロエお嬢様、学園に体操服をお忘れになりましたか?」


 治療師の仕事が終わり、寮に帰宅すると、ポーラに指摘されてしまった。


 学園へ取りに戻ったのだけれど、ルビアとアルヴィの邪魔をできなかったなんて、さすがに言えないわ。


 なお、治療院に遅刻したこともあって、ルベルト先生には散々いじられた。そのことを考えれば、キョトンッとするポーラには癒される。


「ごめんなさい。うっかりしていたの。明日は忘れずに持って帰ってくるわ」


「いえ、明日は()()()()()で学園がお休みです。私が代わりに取りに行ってまいります」


 一瞬、私はポーラの言葉が理解できなかった。


 学園の創立記念日はアルヴィイベントが発生する日であり、そのために治療師として活動してきたのだから。


「いま、なんて言ったの?」


「えっ? クロエお嬢様がわざわざ足を運ぶのもなんですから、私が学園に取りに行こうかと」


「違うわ、その前よ。創立記念日って言わなかった?」


「もしかして、多忙で日付の感覚がなくなっていますか? 明日は創立記念日で、学園はお休みになりますよ」


 ポーラの言葉で血の気が引き、急いでカレンダーを確認する。が、確かに明日は創立記念日だった。


 マズいわね……。治療院の仕事が忙しすぎて、スッカリ忘れていたわ。


 明日、アルヴィイベントがある日じゃない! ルビアとアルヴィのファーストキスが行われる大事な記念日よ!


 どうしよう、何の根回しもできていないのに。ルビアがしょうもない貴族令嬢の誘いを受けて、街に出かけて迷子にならないとイベントが発生しないのよ。


「ポーラ、明日のルビアの予定は聞いてる?」


「特に聞いておりません。いつも通り、クロエお嬢様とお過ごしになるつもりかと」


 終わった……。今までの努力が水の泡となって消え、逆ハールートが消滅……した……。


 もしかしたら、今日の放課後にアルヴィとルビアが恋仲に発展しなかったのは、フラグが立てられなかった影響なのかもしれない。


 普通に学園生活を楽しみすぎた弊害が、こんな形で出てしまうなんて。まだまだ序盤なのに、失敗が早すぎるわ……。


 突然、ズズーンと絶望に襲われる私を見て、ポーラが慌て始める。


「ク、クロエお嬢様? 大事な予定がありましたか?」


 予定が作れなかったから落ち込んでいるのよ……と言いたいところだけれど、諦めるのは早いかもしれない。


 まだアルヴィイベントを発生させる方法はある。疑似的に同じ状況を作り出せば、同じ結果が生まれるはずだから。


 そして、協力してくれそうな人が目の前にいる。


「ポーラ、お願いがあるの。明日、ルビアと一緒に出かけてほしいのよ」


「何かほしいものがあるようでしたら、私が買いに出かけますが」


「それじゃあ、ダメなの。ルビアと一緒に行って、王都を案内してあげて。東地区にできたばかりの雑貨屋さんがいいわ」


「別に構いませんが――」


「そこで、わざとルビアとはぐれてほしいの」


 突然、ルビアを(おとし)めるような行為を強要され、明らかにポーラが警戒心を高めた。


「聞き間違えたのかもしれません。おっしゃる意味が理解できかねます」


 ポーラが反発したくなる気持ちはわかる。でも、ポーラしか適任者がいないのよ。


 私がルビアと出かけたら、はぐれることができないほどピッタリついてくるもの。メイドのポーラと一緒なら、さすがにルビアもしっかりしようと努力するはず。


 ここは適当な理由を付けて、ポーラに頑張ってもらうしかない。


「最近ね、ルビアが変わろうとしているのよ。学園でも大勢の子と話すようになって、私の後ろを歩いてきたルビアは、もういないの。私の隣に立って、一緒に歩こうとしてくれている。だから、ルビアの力になりたくて……」


 どうしよう、うまい理由が思い浮かばなかった。ルビアの力になろうと思って、逆に迷子にさせるという発想に、普通は――。


「わかりました。ルビアお嬢様を迷子にさせましょう」


 なるのね。やろうとしていることは、ハッキリ言ってイジメよ。


「正直なところ、クロエお嬢様の真意はわかりかねますが、ルビアお嬢様が変わろうとしているのは、私も肌で感じております。ちょうどいま、初めてできたお友達の部屋に遊びに行っているところです」


 さすが天然のルビアだわ。誰も予想できないアシストをしてくれるもの。原作では、友達の部屋ではなく、クロエの部屋しか訪ねたことがないのに。


 いや、本当にただの偶然なのだけれど。


「受け入れにくいことだと思うけれど、ポーラにしかお願いできないことよ。ルビアのためになるのは、絶対に約束するわ」


 本当に私のことを信じてくれているのか、ポーラは笑顔を向けてくれる。


「おそらくですが、いまのクロエお嬢様の姿を見て、ルビアお嬢様も変わろうと思われたのでしょう。学園にやって来てから、お二人は確実に変化しています」


「それはなんか、申し訳ないわね」


 クロエは悪い方に変わっている気がします。主に、黒田的な意味で。


「クロエお嬢様がよく話してくださるようになって、私はとても嬉しいですよ。いまのクロエお嬢様の方が好きですから」


 まあ……身近にいてくれるポーラがいいと言うのであれば、悪くはないのかもしれない。と、私は都合の良い解釈をするのだった。

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