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雪 【冬の詩企画】

作者: 遥彼方

志茂塚ゆりさま主催の「冬の詩企画」参加作品です。

頭上に広がるは 低く垂れこめた雲

雪暗ゆきぐれの空は暖かく 着ぶくれした僕をあざ笑っている


狭かったはずのアパート 好きに変えられるチャンネル

仕事以外が空欄のスケジュール帳 一つになったマグカップ


僕の周りで塵やほこりのように漂う 君との思い出よ

核となって六花むつのはなへ変わってくれないだろうか


そうすれば今さら 君のいない日々を

根雪みたいに抱えている 僕を覆い隠せるのに


二人で潜り込んだ布団 くっつけあった互いの額

繋いだ手から伝わっていたのは 温度だけだったのか


テーブルに置かれた冷たい夕飯 背を向けて眠る君

あちこちで聞こえていた 雪の声は届くことなく


ガラス一枚隔てて存在した 僕と君の

心の温度差は結露を誘って 不透明に曇らせた


出会った頃 降っていた淡雪は

溶けては凍り いつしかざらめ雪になって

耐えきれずに 雪しずった


後悔は地吹雪となって

僕の心に雪浪ゆきなみを作っている


ふいに頬へ 小さな冷たさが走った

見上げれば 白い雪片せっぺんが落ちてくる


立ち止まった僕を 幸せそうな恋人たちが追い越していく

街路樹を飾る蒼白いイルミネーションが 僕を染めた


慌ただしく浮かれる街で一人

僕は雪紐ゆきひもに縛られている




はるは 遠い


きみは 遠い

雪暗(ゆきぐれ…雪雲で暗くなること)

雪の声(木や屋根などに積もった雪が落ちる音や、雪が窓に当たる音など)

ざらめ雪(表面の雪が溶けたり凍ったりを繰り返し、ざらめ糖状になったもの)

しずる(木の枝などから雪が落ちること)

地吹雪(じふぶき…地上に積もった雪が風に舞いあげられて吹きすさぶこと)

雪浪(ゆきなみ…積もった雪の表面に、波紋の起伏ができること)

雪紐(ゆきひも…木の枝や塀などに積もった雪が溶けてすべり、紐のように垂れ下がったもの)



本作は「冬の詩企画」参加作品です。

企画の概要については下記URLをご覧ください。

https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/1423845/blogkey/2157614/(志茂塚ゆり活動報告)

なお、本作は下記サイトに転載します。

http://huyunosi.seesaa.net/(冬の詩企画@小説家になろう:seesaablog)

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― 新着の感想 ―
[良い点] 別れた後の哀愁がしっかり伝わりました。 [一言] 雪景色がたくさん出て来て楽しかったです! 上手く詩の内容とも絡んであったので 心地よく読めました。 敬愛を込めて、以上。
[一言] 暖かかった季節は遠のき、一人の冬が始まる 寂しさを映す雪と詩人の抱く切なさが印象的です 彼が見上げる空に、いつか光が差すことを祈らずにはいられません
[良い点] さすがですね! 美しく、それでいてストーリーがある! リズムもあって読みやすいです。 これが詩なんですね! (。>ω<。)
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