彼女と再会・三
彼女は疲れていないように言う。
「まあ、今日は客が多かったからね。疲れが大きいんだよ」
接客業は苦手だ、と橋本は思った。一日で倒れてしまうだろう。友達と会話するのは難しくないのだが、生徒の前で何かを発言するというのは昔から大嫌いだ。
「それで、どうするんだ?」
「うーん、そういえば私、まだ食べてないんだよね」
明るい口調で中川は言った。
「じゃあ、何か買うか」
橋本はコンビニに目を向ける。すると彼女は、
「えー、店で食べようよ。そのほうが会話もしやすいし」
と可愛らしい笑みを浮かべて言った。店で食べる、か。ということはマクドナルドとかファミレスとかそういう場所に行くことになるわけか。再開した初日にそんな場所に行くなんて緊張するなあ。しかも女子と一緒に行く。まるで全校生徒の前で発表するような気分だ。
そんなことを橋本が思っていると、彼女は突然訊いてきた。
「その前にお金は持ってるの?」
「三千五百円ある。まあ、中川のも払えるけど」
後半部分の台詞は何故か、勝手に口から出てしまった。見栄というものだろう。他人から良く思われたいという考えが俺にそう言わせたのだ、と橋本は考える。
「自分のは私が払うから大丈夫。まあ、橋本もそれだけお金があるなら、平気だよね。近くのファミレスに行っても」
ファミレスは近くに一店ある。自転車に乗って行けば五分くらいかかる。一年前からある店で、数ヶ月くらい前に行ったことがあるが、値段は安いし、味も良かった。
「じゃあ、そうするか」
と橋本が答えると、中川がそのファミレスに向かって歩き出す。それに続くように橋本も歩き出した。
足を前に出すと同時に、心が飛び跳ねる。しかし、それは苦痛ではなかった。橋本はこういう経験は初めてだった。
歩き始めてから、橋本は「最近、生活はどう?」と訊いてみた。中川は笑顔で答える。
「順調だよ」
「俺も。今は、大学へ行くために勉強をしている」
そう言うと、彼女は驚いた表情を見せて返事する。
「大学? 私には無理だなあ。私は高校を卒業したら、働こうと思ってる」
どこで働くのか訊いてみたかったが、大学へ進もうとしている俺が訊くと嫌味だと思われるかもしれない。そう考えた橋本は質問はしなかった。
「そうか」
左にある道に一台の車が通っていく。その後、橋本が訊いた。
「学校生活は?」
聞いた彼女は楽しそうな口調で答える。
「楽しいよ」
続けて、彼女は最近起こった面白い出来事などを橋本に話し始める。コンビニが完全に見えなくなり、ガソリンスタンドの前を通り、気がつくとファミレスが見えた。橋本と中川は会話を続けながら、店内へと足を入れた。
店内の雰囲気が少し変わっている。その理由が、テーブルなどの配置が少し変わっているからだと橋本は気づいた。
中川は窓側の席へ向かう。橋本は彼女に合わせることにした。というより、どこに座るかなんてどうでもいい。まあ、トイレの近くだけは無理だが。
席に座ると、彼女はメニューを広げて、何を選ぶか迷っているような表情を見せながら訊いた。
「どれにする?」
橋本はもう一つのメニューを広げて見てみる。色々な料理が美味しそうに写っている。……これにするか。橋本は選んだ料理の名前を言った。
「ハンバーグ定食で」
すると、中川も自分が選んだ料理を右手の人差し指で指して言う。
「このスパゲッティにする」
「じゃあ、店員呼ぶぞ」
橋本は呼び出しボタンを押す。店内に呼び出し音が鳴り響いた。店員がこちらに向かってくる。到着して、水の入ったコップを二つ、テーブルの上に置くと、「ご注文は何でしょうか?」と訊いてきた。さっき選んだ料理を橋本は店員に言うと、彼女も自分の選んだ料理を店員にメニューを広げて人差し指でその料理の名前を指しながら言った。
わかりました、と優しい口調で店員が言うと厨房へ向かった。料理が来るまでの間、橋本は中川と話していた。話題は学校生活のことが中心だったが、それ以外にも色々と話した。一番驚いたのが、彼女は一人暮らしをしていることだった。マンションに住んでいるらしい。
携帯電話のメールを確認しながら、彼女はそう言ったのだ。
進み方が遅いかな、と思います。しかし、描写を入れようとすると、こうなるし…。まあ、これが一番良いのかもしれませんが、僕にはよくわかりません。
この小説は現実的な感じになっていくと思います。難しい科学が出るわけでもないし、超能力が出ることもないでしょう。
この小説とは関係は無いですが、今読んでいる『秘密』という小説は面白いです。何かの参考になれば良いな、と思いつつ、これで今回の後書きは終了とします。
これからもよろしくお願いします。