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ご褒美は極上の


 私の名はアイリーン。世界最高の天才にして、人間に非ざる美貌を持つ天才魔術師だ。


 水妖精の父と火妖精の母から生まれた私だが、魔人族の特徴である紅い瞳をもって生まれた。

 母方の祖母が魔人族だったため先祖返りしたんだろう。

 それに気付いた両親はすぐに魔人族である祖母を呼び出し、私のことを魔人族として育てた。

 魔人族も基本的には普通の人間族や妖精族と同じように育つが、生まれた時から大きな魔力を扱えるため魔術制御が未熟な間は暴発させてしまうことがある。

 そのため同じ魔人族ならその危険も減るだろうと、わざわざ遠方から呼び出したそうだ。

 しかし祖母に言わせると、


『せっかく子育て終わってのんびりしてたらまた子育てを押し付けられるとはね。あんたはそんな親になるんじゃないよ』


 などと小さい時から愚痴られた。

 愚痴ってはいたがそれを理由に娘夫婦と同居し孫の私を毎日可愛がる祖母は基本的に私に対してダダ甘で、むしろ両親から甘やかせすぎないよう見張られていた。

 結果として、


『お母さんのせいであの子はあんな魔術バカになってしまったのよ!!』


『あんたがカネカネうるさいからあの子は値切り姫とか呼ばれるようになったんじゃないか!!』


『二人ともその辺に……』


『『あんた(旦那、娘婿)は黙ってなさい!!』』


『おばーちゃん、きのうおぼえたまじゅつでさっそくまものたいじしたよー。おかーさん、まものたいじしたらおかねくれたからゆうはんのざいりょうかってきたよー。ぎんかさんまいだったけどぎんかいちまいにしてもらっちゃったー』


『『さすが私の娘(孫)!!』』


 家族コミュ二ケーションの絶えない平和な一家が出来上がった。

 この家に生まれた私は本当に幸せ者である。

 そしてそんな家族に厳しくも丁寧に育てられた私が優秀でないはずがない。


 そう、呪いの本(国王の自伝)になど負けるわけがないのだ!


「本当に全部読んだのですか……」


 二十日かけて全て読み切った私に対する宰相の言葉がこれだった。

 感嘆と驚愕を含んだ言葉だったが、それ以上に呆れたように聞こえるのは何故だろう。

 とにかく私にかかれば容易い事だ。


「ところでお聞きしたいのですが、ここのところ騎士が数人奇妙な行動をとっておりまして」


 全く教育のなってない騎士だ。自らの王が居る城に勤めるということを理解しているのだろうか。


「『左腕が熱いっ』だの『見えるっ……俺の右目が疼くっ』だの『俺の左足に住んでる女神が教えてくれるんだ。俺は楽園に行かなければいけないと』などとうわごとのように繰り返してまして」


 精神を犯す魔術でも使われたのか。しかしこの私に気付かれずそんな魔術を仕掛けるとは相当な使い手――


「ちなみにその者たち全員がそうなる前にあの部屋から出てきたという目撃証言がありまして」


「あぁ、あの人たちね。ここの本読みたいって言うから読ませてあげたらああなった。反省はしていない」


「何やってるんですか他の者には読ませないでくださいって言ったじゃないですか!!」


「書置きには『普通の人間』て書いてあったから普通の人間かどうか聞いたら、皆して『自分は貴様なんぞより優れている! 貴様こそ普通の人間より劣る存在であろう!』て言い張ったし。一応止めたけど聞いてくれなかったねー」


 話には聞いてたけど人間族の町に来てようやく実感できたことが一つある。

 人間族のほとんどは人間至上主義で、それ以外の種族は全て人間に劣ると考えている人間が多いということ。

 私が呪いの本を読みにここ数日城に通っているとまー視線が飛んでくる飛んでくる。

 騎士達は変なことしないか怪しんでるし文官や侍女達は悍ましいものでも見るかのようにビビってる。

 魔術師の一部には憧れみたいな視線向けてくる人も居たけども。


 ちなみに普段は魔人族の証である瞳はもちろん妖精族の証である尖った耳も幻魔術で隠してある。

 町では私のことは知られてないからそれで問題なく生活できている。

 試しにちょっとだけ耳の部分の幻魔術解いたら城の人たちと同じ反応されたけど。


 今回おかしくなった騎士達はそんな私を怪しんでる人たちの一部で、どうやら神聖な書物を荒らしてるんじゃないかと思って突撃してきたらしい。


「そもそも部屋に近づくな、本を読むなと命令してあったんでしょ? 命令無視したあっちが悪い」


「うっ」


「しかも内容はともかく本物の呪いもかかってないのにあそこまでおかしくなってそんななのに自分は優秀だーとか、ネタなの? 笑ってあげたらいいの? それとも真顔で蔑んだ方がいいの?」


「申し訳ありませんでしたこちらの不手際でしたっ。彼らも職務に忠実だっただけなんですからそこら辺で許してあげてください」


「許すもなにも怒ってないよ。ただ私の読書の邪魔をしに来たのかなーと思ったら勝手に自滅してっただけだし」


 本当に怒ってないよ? あの程度の雑音は邪魔ってほどでもなかったから平気で読書続けてた。


「そうですか。まぁ貴女が何も言わなくても、種族的なことを言い訳に命令を無視する程度の輩はどうせ降格させられますが」


 人間族のほとんどはと言ったけど、なんと宰相は私が妖精族の血を引いてることを気にしていないらしい。


『種族なんてどうでもいいです。使える能力は使いますし使えないものは使いません』


 会ってすぐに聞いたらこんなこと言われたので、種族を気にしないというよりはただ使える人材が欲しいということみたいだけど。

 部下に恵まれてないんだろうなぁ、きっと。


 とはいえ流石に宰相も私が魔人族の血を引いてるってことは知らない。

 私のことは“妖精族の魔術師が、異世界と交信できる魔術を使っている”ということで探しに来てたから、会う前に瞳だけは隠した。

 さすがにこれ以上の面倒ごとは回避したい。


「それで結果は如何でしたか? 自伝から何か分かりましたか?」


「全然。なーーーんにも分からなかった」


「……そうですか」


 本っ当に時間の無駄だった。いっそ清々しいねっ。

 初代国王の自伝とかは期待してたんだけど、どうやらその辺りを含めた古い国王のものは魔物の被害で焼失してしまったらしい。

 いきなり途中の代から始まっててそこに城が再建されたとか、過去の歴史が失われたという記録があったから間違いないだろう。

 しかもそのすぐ後からあの妄想シリーズになってしまい、まともな記録としては成り立たないものばかりだった。


「今なら全ての自伝のタイトルと内容のダイジェストを無料で披露してあげるけど、聞く?」


「結構です」


「遠慮しなくてもいいのにー」


「いえ、お互い時間の無駄ですから」


「……国王の自伝を無駄扱い……」


「ゴホンッ、とにかく早急に次の手を打ちましょう。まずは調査が終わらないことには――」


「調査はもう終わってるから、もう召還魔術の研究に入れるよ」


「……自伝からの調査は無駄だったのでは?」


「うん無駄だった。だけど口伝からの調査で色々判明したから伝説について調べるのはもう十分かな」


 実は自伝の調査は最初の数代だけでほぼ諦めてた。

 最後まで読み切ったのは調査よりも呪いに対する意地のようなものだ。

 それにネタとして割り切れるようになってからはなかなか面白く読めた。

 呪い耐性の無い騎士達がおかしくなったのは異世界でいう中二病っていう不治の病が発症したんじゃないかな。こっちの世界でも発症するもんなんだねー。


 そんなわけで本からの調査を早々に諦めた私は酒場に行って飲んだ。

 もちろん調査のためである。酒が飲みたかったからではない。

 酒は人間関係を円滑にできる。

 円滑になれば口だって軽くなる。

 詩人に一杯奢れば気持ちよく勇者の伝説を歌ってくれる。

 常連の客から色々な話を聞くこともできるし伝説に詳しいおじいさんの居場所だって聞ける。

 もちろん夜だけでなく朝や昼も複数の店を通って、時には直接家に行って伝説の話を聞いた。

 城に通って自伝を読む、それ以外の時間はずっとそんな調査を行っていた。


「というわけで調査は完了してるの。すごいでしょー惚れてもいいよー?」


「そうですね。仕事ぶりにはその価値があるかもしれません」


 お、これは?


「デレた」


「意味は分かりませんがやめてください」


 まだかなー?


「ねーねー私のことが大好きな宰相さまー。私おうちが欲しいなー」


「誰がですか! ……とりあえず家の方は用意してあります。城からだと少し距離がありますが、都の西端のほうに用意しました」


 あともうひと押しかなー?


「さっすが宰相ー愛人への貢ぎ物も完璧だー流石やればできる男ー。子供はできないのにねー」


「色々間違ってますし褒められてませんし一言余計です!大体さっきから――」


「さっきから聞いていれば、随分楽しそうですね?」


 はい来ましたー。

 声の方を見れば艶やかな金の髪に吊りがちの目の整った顔をした美女、というより年齢的には美少女。

 豪華なドレスは本人の魅力を損なうことなくしっかりと引き立て、その凛とした立ち姿は美しい花のようですらあった。

 宰相に対しての態度。名前は聞いてないけどきっと宰相の奥さん。

 にしても宰相と比べると……親子というには無理がるけど結構な年の差だね。

 そういう趣味だったのかー。


「ア、アマンダ……どうしてここへ?」


「王妃殿下に呼ばれまして。その用も終わりましたから、せっかくなので様子でもと思いまして。特に――」


 こちらに顔を向けた顔は一切の無表情。


「最近、お忙しいようですので」


 その表情のまま続けられた言葉は、氷山の氷よりも冷たく聞こえた。


「あ、ああ。先日話しただろう、陛下が勇者召還を決意なされたと。それで今担当の魔術師と打ち合わせをしていたところだったんだ。け、決して遊んでいたわけではないんだよ」


「そうでしたか。そんな重要なお仕事でも、楽しく勤めるものなのですね」


「行き詰っていたことが丁度進展を見せてね。つい気分が良くなってしまったんだよ。楽しかったわけではないよ、決して」


 そんな言い分けしなくたっていいのにー私と宰相の仲でしょー。


「そうでしたか。ではそちらの方が召還を行う魔術師様なのですね」


 今度はこっちに矛先向いたー!

 いや視線はさっきからこっち見たままでしたが!


「お初にお目にかかります。私アマンダ・ローズナーと申します。魔術師様に置かれましては此度の重役、大変な苦労の事かと存じます。宰相である“夫”を支えることしかできぬ身ですが、私でお力になれることがあれば何なりとご相談ください」


 わざわざ“夫”の部分だけ強調されたよ!

 無表情じゃなくて笑顔になってるけど目だけ全然笑ってないし凄い破壊力だ!

 これが一流の貴族令嬢というものか……っと返事返さないと。


「この度、召喚士としての命を賜りましたアイリーンと申します。お気遣い、痛み入ります。ですが宰相閣下の――“マチス宰相”のご尽力により事は順調に運んでおりますので、ご安心下さいませ」


「どうしてわざわざ言い直すんですか!?」


「そうですか。それはようございました。私も心配事が一つ無くなったというものです」


 扇で口元を隠しつつ笑うアマンダ夫人。

 ローズナー公爵家、しかも宰相の奥さんだけあって纏う雰囲気は優雅そのもの。

 私が名前の部分だけ強調したのにピクリともしない。

 それでいて凍えそうな空気を出せるとはさすがですねっ。


「あー、アマンダ? そろそろ――」


「ところでアイリーン様、お聞きしたいのですが」


 宰相の発言はまるっと無視された。頑張れ宰相。


「先ほどまで、何をされていたのですか?」


 宰相は仕事、打ち合わせをしていたと言っていたのにこの質問。

 疑われている。

 であれば間違えた時には、きっと考えたくない未来が待っていることだろう。

 だが初めから答えは決まっている。


「宰相で遊んでました」


 真実を伝えるのが一番だ。


「!?」


「そうでしたか」


 私の言葉に驚き身を固める宰相。

 それとは対照的に何も変わらないように返事するアマンダ夫人。

 当然、凍えそうな空気はそのままだ。


「でしたら今後は控えください」


「分かりました、控えましょう」


 明らかにほっとしたような顔をする宰相。

 まだ終わってないよー。そんな油断した君は次の一言で顔色を変えてあげようっ。


「五日に一度くらいならよろしいですか?」


「――――――――」


 よし、青くなった。


「ダメに決まってるでしょう」


 私たちのやり取りに世界の終りのような顔をする宰相。

 だが本番はここからだ。


「ですが私も仕事ばかりでは息が詰まりますし」


「その辺は理解しておりますが、ようやく私も夫で遊ぶのに慣れてきたのです。私が楽しむ時間が減ってしまうではないですか」


「では七日……いえ十日に一度にします」


「それならば構いません」


「…………二人とも……一体何の話をしているのですか?」


「ありがとうございますっ。適度な娯楽は仕事が順調に進みますからねーっ」


「国のために尽力するのは貴族として当然の事。それに私だけではどうしても調きょ……コホン、夫も飽きてしまいますので、私にとってもありがたいのです」


「娯楽!? もしかして玩具は私ですか!? それにアマンダ今なんて言おうとしましたか!?」


「さすが公爵夫人。素敵なお考えですね」


「あなたこそ。妖精族とは思えないほど聡明ですわ」


 気の合う仲間を見つけたように笑いあう私とアマンダ夫人。

 

 そもそもアマンダ夫人は怒っていたわけではなかった。

 最初から最後まで宰相“を”いじって遊んでいただけの事だったのだ。

 初めは自分だけで遊ぶつもりだったんだろうけどそうはさせない。

 私が宰相の名前を強調することで割り込み、一緒に遊ばせてもらった、という事だ。

 好きな人ほどいじめたいってことですね。アマンダ夫人ったらいい趣味してるわー。


「ところでお仕事が終わっているのなら、当家で夕食でもいかがですか?」


「是非いただきます」


 一人呆然としたままの宰相を放置して公爵家に向かい、私たちは楽しく食事を頂いた。

 その後部屋を訪れた文官に対して、宰相から女性との付き合い方について相談を受ける事があったとかなかったとか。


「優秀な女性でないと結婚したくないと婚約を断り続けていれば学園成績常に一位の方から婚約の申し入れがあり、詳しく聞けばその方は初めて会った日に私を一日中睨んでいた少女でしかも会ったのはその一度だけ。どうしてそんな方が私と……と、本気で考えたものです。その後結婚しても態度は何も変わらず、ようやく最近話ができるようになってきたかと思えば初めてあった女性とはすぐに仲良くなり……本当、女性って分からないものです……」




 公爵邸で夕食をご馳走になり、今は公爵の馬車で用意された家へと送ってもらっているところ。

 食事だけのつもりがつい話が盛り上がってしまい、結構な時間が過ぎていたから甘えさせてもらった。


 ちなみに公爵家では妖精族のことを気にする人はいなかった。

 どうやら私が思っていた以上に能力主義の家柄らしく、その家に生まれた宰相が選んだ人物なら敬うことはあっても蔑むなどあり得ないとのことだった。


 そんな宰相と結婚したアマンダ夫人もやはり相当優秀らしく、五歳の時に一目ぼれした宰相(当時二十歳、まだ文官なり立て)と釣り合う女性になるため小さなころから死に物狂いで学び、必死の思いで今の位置を勝ち取ったんだそうだ。

 しかし念願叶って結婚したものの、感情だけが先走っていたため宰相本人の事は何も知らず、しかも他の男性には見向きもしなかったため男性というものに免疫が無い。

 どう接していいか分からない上に目の前には長年憧れた人。

 緊張しっぱなしで結婚後しばらくは会話もできない日々が続いたそうだが、最近は少しずつだが会話もできるようになり幸せだという。

 なんというか最後には完全に惚気話となりました。幸せそうな夫婦で何よりです。


 そんなことを回想しているうちに馬車が止まった。

 暗くてよくわからないけどな大きな家。

 宰相に家を用意してもらったのは魔術の研究のため。

 流石に他人も利用する宿屋で研究するわけにはいかないしねー。

 でもなんか大きすぎないかな?

 確かに資料を広げるかもしれないから広い部屋があると助かるって言ったけども。


「なんでも先代当主様が宰相をなされていたころに取り潰しになった貴族の屋敷だそうで、場所柄からその後も放置されていたとのことです」


 御者をしてくれた公爵家の使用人さんが教えてくれた。

 確かに立地は非常によろしくない。

 王都を囲う四角い城壁、北・東・南には大門があり街道が走っているが、西側は森となっており街道は無い。

 一応小さな門はあるが人通りも少ないため、門の周辺にはお店はもちろん民家も無い。

 西門付近は常に『静か』というよりは『陰鬱な』と呼べる雰囲気が漂っている。

 そんな場所にある、誰も居ない大きな屋敷。というとこれはやはりあれか。


「取り潰しになった理由は赤いものが流れたから? それとも魔術で呪われた?」


「そういったものは無かったそうです」


「そうなの。じゃあ普通に犯罪かー」


「いえ、後ろ暗いことも特に無かったと聞いております」


 あれ?


「ある日突然、屋敷内の人間すべてが死んでいたそうです」


「……どうやって?」


「赤い汚れや武器で争った形跡、魔術的痕跡等といった死に至った要因はもちろん、事件を起こした犯人、怨恨や犯罪等の事件に至る原因、その他事件に関わる情報、その全てが何一つとして分からなかったそうです」


「……何一つ、ですか」


「はい。何かを隠ぺいした、その痕跡すら。不気味なまでに何も分かっていないそうです」


 何かを隠すことは必ずどこかに齟齬が生まれる。

 どんなにうまく隠ぺいしようが、その隠ぺいしたという痕跡くらいは見つかってもいいのに、それすらも。


「更に調査を行った騎士や魔術師には何の被害は無かったため、被害にあわなかった一族の関係者が屋敷を使用したところ、再び同様の事件が発生しまして」


「…………関係者というのは?」


「一族の親類及びそれまで仕えていた使用人が被害にあったそうです。屋敷を使用するにあたり急遽雇い入れた使用人数名のみ助かったとのことでした。そのことからこの件はその一族そのものに問題があるとされ、取り潰しになったのです」


「…………じゃあ場所柄から放置っていうのは」


「立地条件だけではなく、この屋敷そのものも含んでおります」


「………………そうですか」


 えーっと。

 つまりこの不思議のお屋敷は。




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 詳しいお話はローズナー公爵家、または王城におります宰相までお気軽にご連絡ください!

 皆様のお問合せ、待ってまーっす☆




 こういうことか。


 ふーん。

 ほほー。

 なるほどねー。

 宰相ってばそんな屋敷をねー。

 そんな謎ばかり秘めた屋敷をねー。

 そっかそっかー。

 そんな危険なもの用意するなんてー。

 これは宰相も呪われても文句言えないってことだよねー。

 きっとそうに違いないねー。

 うんうん。

 よく分かったよー。

 でもその前に宰相には言っとかないといけないね。

 うん。



 でかしたあああああああああ!!!!



 こんっっっっっな面白そうなもの見つけてくるとか素晴らしすぎる!!

 くだらない調査ばっかで面白く無い事ばっかだったけどここに来てやっと面白いことが出てきた!

 宰相……貴方で遊ぶのは面白かったんだけど……やっぱり私、こっちの方がいいみたい!

 これからは自分に素直に生きるって決めたんだから!

 私のステキライフが始まるぞーーーーーーーーー!!


「あ、戻ったら宰相に伝えてください。『家は最高だけど黙ってたことは許さん。そんな貴方には毎日一回ペン先が折れる呪いをかけておいた』とお願いします」


「承知しました」


 言おうと思ってたのにアマンダ夫人に邪魔されて言えなかったという言い訳は聞きませんとも。


 その後使用人さんは屋敷を案内しようとしてくれたけど断って帰ってもらった。

 私が住むために掃除とか食料の備蓄とかしてくれたらしいけど、どこに何があるか簡単な説明を聞くだけにした。

 だってわざわざヒント貰うとかもったいないじゃなーい。

 せっかくのこんな極上ミステリー、一から自分で調べた方が面白いに決まってる。

 調査結果があるのに無駄手間? 私にとってはご褒美ですが、何か?

 何から調べよっかなーやっぱり私らしく魔術的なことから探らないとねー。

 楽しくなってきましたよー盛り上がってきましたよー!


 私の研究生活はこれからだ!



宰相=やっと名前が出ました。ちなみにロリコンではないそうです(自主申告)。

夫人=十五歳差を覆して旦那ゲットした才女。ドSクーデレ。壁ドンされてもやり返します。

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