表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/7

 参

 ここでスイダズの提案を受け入れれば、この国は滅びる!!!それでもいいッスかッ!?ビマー!!

 睨んでくる目を無視・・・したかった。でも出来なかった。

 信じろ!!

 ビマーの目はその一点張りだった。

 この国が滅びたら、あんた国はなくなるんスよっ!?王サマは死んじまうんスよ!?

 王様を信じろ!

 あんたの気持はよぉく分かるッス!けど、王を守らないで、そんなくだらねぇセリフ吐くなぁッ!!

 信じるのだ!リリー!!

 馬鹿の一つ覚えがッ・・・!!!

 もう、どうでもいい。王を守れないで死ぬなんてごめんだ。そんなの、信用とは違う、信頼とは違う。

 タッと足を踏み込んだ。スイダズの心臓へ切っ先を向けた槍は、ものすごい勢いでまっすぐ進んでいく。

「・・・うん。いいことだ。ただ、それだけだ。俺は、そんなものいらないよ」

 え・・・・・・ッ!!?

 王の言葉を聞いたリリーは、急停止しようとした。しかし走りこんだ足はそう止められない。無理を承知で、リリーはズザァッと、足を滑らせ――その勢いでこけた。

 何とか止められたぁ・・・。

 そう思っていたのもつかの間、スイダズは、眉一つ動かさず、特に何も言わず、リリーを冷たい目で見た。明らかに疑いの眼だ。

「うぁあっ!?こ、こりゃあ、あ、あ、あれッスよ!!食料供給を他ンヤツより早くとるためのー・・・」

 食糧供給とは、朝、昼、晩と、供給される食事のことで、つまりそう、食事。油断して並び遅れると、最後尾につくハメになり、冷たいメシしか食えなくなるので――

 無視して、スイダズは王に向き直った。

「こんなに良い待遇を拒否すると?」

「拒否じゃない。いらないって言ってるんだ。俺は」

 スイダズは舌を打った。一瞬で頭に血が上ったようだ。王はそれに気付く様子すらない、たるんだ顔をしている。

「いいでしょう・・・全く、マキル王の言うとおりだ」

 スイダズは、服の中に収めてあった短剣を取り出し、鞘を投げ捨てる。ギラリと光る間もなく、短剣を腹辺りにためて、王に襲い掛かっていった。

 急な出来事に、兵士も、ビマーも、反応出来なかった。

 王も全然気付かない。

「お前の命運もここまでだーーーっ!!あの世で悔やむがいいわっ!!!」

 いかん!!王が・・・!!

 ビマーもそこに急ぐが、到底間に合いそうもない。

 ブシィッと、何かが刺さる音と、血が噴出す音がした。

「ジジィ・・・きなくせーんだよ・・・!!」

 刺されたのは、王ではなく、スイダズだった。近くに倒れていたリリーが、槍で心臓を一突きにしたのだ。

 王は返り血をわずかに浴びながらも、鼻をほじっている。ビマーは呆れでもない、安堵の吐息をもらした。

 槍を引き抜くと、スイダズは糸の切れた人形のように崩れ落ち、動かなかった。間違いなく即死。

 周りの兵士たちは目の前で何が起こっているか、今ひとつ理解出来ない顔をしていた。外交官を殺してしまったことに、だ。

 辺りは一瞬沈黙した。虚しい静けさ。何が起きようとも知れないこの冷たい、永遠の一瞬。破ったのは、鼻をほじりながら、たるんだままの顔をした王だった。

「戦争、しよっか」

 それは冷たい雨の日だった。とても冷たい、雨の日のことだった

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ