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僕らの海/水無月のころ
「僕らの海」
いま、
目の前に広がる僕らの海は
世界中の海とつながっている。
アメリカとも、フランスとも
イラクとも、北朝鮮とも………。
名もない小さな浜辺の向こうで、
世界が大きく騒いでいる。
たくらみ渦巻く荒波に
稲妻さえ爆発し、激しい雨が降る。
いつも日か、その嵐へと
晴れ間がのぞくことを信じて、
僕らは生きる。
生きて……生きて……
生きてゆく。
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「水無月のころ」
雨が降る。
空から水が堕ちてくる。
いつまでも降りたがる
梅雨の水は、
夏がいずれ来ることを
教えてくれる。
この空が晴れたら、
あの河の水が流れたら、
すべてが栄える夏になる。
雨が降る。
春の終わりを告げる、
風が吹く。
あつくもえる、夏が来る。