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1話
あいかわらずの光景だった。
我ならながら趣味が悪い、と思う。それと同時に、少々やりすぎた、とも。
「―――ディオクレス」
冷えた床に人が倒れている。うつぶせで、その顔はもとの容貌が判断できないほどに血でよごれていた。
上半身には何も纏っていない。肩口と左胸に火傷のあとらしきひきつれがあった。それから無数の切り傷。血をべったりと塗り付けたような、背から腰へと流れる傷。どこもかしこも血の流れた痕ばかりだった。
あちこち破れた脚衣。裂け目からは鬱血と深い切り傷が覗く。圧搾機を使ったのだ。さすがの自分でも、眉をひそめた。
「ディオクレス」
名を呼んだ。だが、返事はない。
返事どころか、息をしていない。胸が上下していない。
――――これは。果たして現実なのだろうか。
その名を呼べど、答える声はない。薄く開かれた唇は動かず。本当に息をしているのか、確かめることもできない。