世界を平和にする発見
昔。
タイムマシンが初めて出来た頃のお話。
元々の世界ではA国とB国が戦争をしていた。
何百年と続く戦争を。
終わりが見えない戦争を憂い、人々は別のアプローチを考えた。
つまり、タイムマシンを造り過去へ行き戦争が起きる前に相手方の重要人物を殺害するという手だ。
この方法は上手くいった。
少なくとも人々はそう思った。
しかしながら、これにより世界は分岐してしまったのだ。
古くからあるSFでもよく見られるがパラレルワールドというやつだ。
つまり、戦争が続いている世界とそもそも戦争の起きなかった世界が出来てしまったのである。
戦争中であったA国とB国は――より正確には『元々の』A国とB国は互いにタイムマシンによる干渉を行ったが戻ってきた時に何も変わっていないことを目の当たりにし、パラレルワールドが出来てしまったことを悟ると戦前以来数百年ぶりとなる一時的な停戦を結び、とある話し合いをした。
まさにその話し合いこそが世界を平和にしたのである。
――つまり。
*
「『戦争をしていた世界に見切りをつけた。敵国を滅ぼした世界へ移住した――』ということです」
教師はそう言って平和な世界、平和な日常の中で言葉を結ぶ。
生徒達は教師の言葉を聞いても今一つ理解していない様子だが、それもまた教師からしたら織り込み済みだ。
「要するにですね。パラレルワールドが幾つも出来るならば、そちらを本来の歴史にしたい者達が移動すれば良いってことです。A国とB国で言えば彼らは互いに相手を滅ぼした世界に移住することで戦争のない平和な世界で生きることに成功したのですよ」
そう。
なにせ、パラレルワールドは無限に出来るのだ。
ならば『元々の世界』に拘る必要なんてどこにもない。
互いが幸せに生きていける世界を選び取れば戦争も絶対に起きない。
これほど理に叶ったこともないだろう。
「皆さんの家にもタイムマシンはあるでしょう? もしかしたらこっそり使った人もいるかもしれませんね。ですが、それがどういった経緯で出来たかは知っておくべきです」
教師は微笑む。
「私だってもう何人も人を殺しています。まぁ、その度にタイムマシンで『やり直し』をして出来る限り関わらないようにしていますがね」
教師の言葉を生徒達がすぐに理解することは難しいだろう。
なにせ、新しい知識とは中々に飲み込むのが大変だから。
――しかし、その内理解するだろう。
何度かの実践を経て。




