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お化け話しー⑦御狐様と狸の引率

うーんと。ギャグ漫画のようなテイストになりました。『ググれこっくりさん』のようなキツネと狸の仲の良さを思い出して描いた気がします。3000字未満なのでサクッと読めてしまうでしょう。

お化け話し―⑦御狐様と狸の引率


古来より日本には御狐様と呼んで親しまれてきました。お揚げは御狐様の好物だ、などと言って自分で食べる人々。実際に御狐様を祀るあるところでは絵馬をお揚げの形にしているところもあるそうな。

そんな親しまれ方をしていらっしゃる御狐様。彼らもお勤めとして人間を助けているが、彼らも感情を持ち合わせた存在。そう、彼らも、人間を化かしにやってくるそうな。

とある夜。居酒屋で与太話をする酔っ払いも居るこの場所。店の隅は薄っすらしていて、店の外で携帯電話片手に誰かと話している会社勤めのこの男も、隣の茂みの暗さに、何がと思ったわけでもないが、何かを察知したのか視線をその暗闇の茂みから店内へと移した。にっこりして電話の相手に話しかける。

「そんなことはありませんって」

相手の声は聞こえないが、

「そうですそうです。いつも感謝しています」

と説得している。

いつの間にか茂みへ背を向けて、ほほ笑み説得が成功したのか、携帯電話の通話を終了し、店内へと戻っていった。

店主へと注文も忘れない。

男の感は当たっていたようで、ひょっこりと顔をのぞかせようとしているキツネが一匹いました。そのキツネに横から狸が前足で制します。

「お待ちなさいな」

「なんだ。じれったい」

ため息をつく狸。

「このお方は。まったく、御付きの人だからお任せしましたくれぐれも宜しくお願いいたしますなどと丁寧にこちらに頼んできたのか」

「はー、まったく」すべて口に出して相手に伝えつつ反省しているのか様子を見る狸。

目を輝かせて通行人の足元を見ているキツネに呆れて何も言わないことにした。

「御狐様。ご承知とは思いますが、人間に姿がバレてはいけません」御狐様の口が開きかけた時に、狸は付け加えた。

「たとえキツネのそのお姿だとしてもです」

「な、やっぱりだめなのか」

「そうです」

「あの者らが言っておったことは真であったか」

「はぁ、私は実際にそんな事態になる前にこうしてご理解して下さって、このうえない安堵感がこみ上げてございます」

これ、今回、これで己の役割が達成できたのではないのかと頭の隅っこで歓喜する狸。

「御狐様。ご確認しますが、参られますか?」

「もちろん。いや、もちのろん!」

「え、いい、いいや。そうでございますか」

あーまったくと心で愚痴る狸は変化をして見せた。

「おー、見事な」

人の姿に化けた狸の姿は先ほど店先で電話の相手と話をしていた男性のような姿になっていた。幾分顔が良いように見える。もともと狸がイケメンなのか。そうしたかったのか。ただただ御狐様に見栄を張りたかったのかは定かではありませんが、なかなかな見栄え。

「それでは我も」

御狐様も変化しました。

そのお姿は、何故かスーツ姿の男性ではありますが、金髪ロングヘアという日本人離れしたイケメンと相成りました。

「どうだ。わ……お、れ、のイケメン振りは」

あっけに取られている場合じゃないと正気を取り戻した狸が言います。

「御狐様。その真にイケオジっぷりが最高でございますが、幾分目立ちます。それゆえ」

「みなまで言うな。計算ずくじゃ」

「な、なにゆえ」

「今回は物見遊山に来たのではない」

「な、何ですと」

てっきり、実際に人間の世界に足を踏み入れて、キャーこれが人間ってものかぁって人間の世界を垣間見るだけかと思っていたと度肝を抜かれた狸は内心助けを呼びながら御狐様に懇願した。

「こ、今回は私が度肝を抜かれました。このくらいで、ね、かえ、帰りましょう」

「ん? なにをいう。そち、具合が悪いのか?」

「そ、そうです。こりゃいい、そうしておこう。そうなんです。このまま私のた、ために帰りましょう。さすれば面目も立ちましょう」

「ははは。しょうがない奴だなぁ」

あんたには言われたくない。と強くとても強く思った狸はここはもう一押しと、自らの変化を解きます。

さぁ、あなたも変化を解いてください。

そう思って相手を見れば、何故かそこには居ません。

そう、まさかと思い通りを見ると、そこに立っているではありませんか。

あなたは私に対して十分すぎるくらいの衝撃をお与えになさってますよ。これは行けない、と。大事になる前に、いや、もうだいぶ大事になりそうで怖いのだが、彼らを呼んでなんとか穏便に済ませられるように取り計らわなくてわ。

狸は何やら呟いたかと思うと、葉っぱを狸に化かして、その狸にキツネたちを呼んでくるように指示を出して向かわせた。

「はー」

狸はまた同じ人間の姿に変化をすると、通行人に悟られぬように現れた。もちろん、御狐様のそばに。

「若様」

「お、若様とな」

通行人の反応にひやひやする狸。通行人の反応にニヤニヤするキツネ。狸のこめかみに青筋が立っているように見受けられます。

この馬鹿様はまったく、どうしてやろう。と思いますが、思うにとどめて声には出さずに、もう一度「若様」と声を掛けます。

「怒っておるな」

「引率者という身であるので」

「む」

二人の間に沈黙が流れている中、酔った女性二人が笑いながら二人の横を通り過ぎます。

「わはははは」

や、

「がはははは」

「ぎゃ」

「あはは」

などと大きな声で笑う二人は、止まると振り向いて「デキてんじゃないの」と茶化します。

「ははは。よう見破った」

馬鹿様!

狸は急いで狸を引き寄せて、女性たちを手であしらいます。

「なによう」と不満げな声を上げるひとりとは反対に、もうひとりは、「きゃ」と黄色い歓声を上げています。

どういう意味か分かっている狸は、胃薬飲みたいと思っていました。

早く助っ人に現れてくれ。

狸の思いが通じたのか、イケメン高校生たちがわらわらと現れました。狸たちを囲います。

彼らは言います。

「先生たち、探しましたよ。他の先生が待ってますから、ささ、行きましょう」

高校生のひとりと目が合った狸は、彼らが御狐様のもとで働くキツネたちだと分かり、心の底から涙を流し、神に感謝しました。

「わかった。さぁ、行きましょう。若様」

そう言うつもりでいた狸でしたが、最後の最後「馬鹿様」と呼んでしまいました。

女性たちが不思議に思う前に、すかさずフォローをするキツネたち。「若様、どこ行っていたのですか、会いたかったです」

「僕たちに探させてどうするんです。いくら日本の観光がしたいからと言って」

などなど声を順番にかけていく高校生姿のキツネたち。かれらの連携のとれた動きとさせないという意思の強さを垣間見た気がします。実際狸もこうして御狐様でのお願い事が叶えられているのかと感心しました。

わき道を曲がった彼らの姿が見えなくなると、興味を失ったのかまた前を向いて歩き出す女性二人。その姿を影でこっそり確認する高校生のひとり。

「OKです」

安堵する面々。

周囲を確認した彼らは、直ぐに変化を解いて暗闇にまぎれていきます。

御狐様も彼らに安堵する気持ちがあるのか、彼らに続いて変化を解いて暗闇へと消えていきました。



何事も若いうちに学んだ方がいいと言いますが、そんなの金銭的にも時間的にも物理的にも無理だと言える。それを無理じゃないと言い張るのは、きっと自分にも厳しく極限を楽しめるお人なのでしょう。

私には無理でしたので、大人になった今でも知らない世界はたくさんあります。まぁ、テレビや動画で拝見するくらいです。

あなたはどんなところへ連れて行ってもらいましたか?

私は盆踊りや海に連れて行ってもらいました。

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