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お化け話し―④蔵のおばけ

怖い話と言えば蔵。

そしてひとりよりもふたり。ドラマに出ていたふたりも男女のペア。

今回は3人。

オマージュでもあります。

お化け話し―④蔵のおばけ


薄暗い物置の中から出ると、外がまるで別世界の空気のようだ。

「暑いなぁ」

思わず漏れる俺の声に、一緒に物置を整理整頓していた従妹浅葱が言った。

「そりゃ、今夏だからね。日本の夏のこの感じ忘れてもらったら困るよ」

そう言って笑顔で額の汗を拭っている。

親族の中でもお互いの家が近いこともあり、幼い頃からつき合いがあった。幼稚園・小学校・中学・高校と同じ学校へ通った。

お互いの家で遊んだこともある。携帯電話に連絡先を登録しており、日々何かあれば連絡する仲だ。

大人の色気とは反対側に居ると思ってきたこの従妹が、結婚したのだ。キャラクターが好きで、おしゃれとも無縁な感じだったコイツが。

青天のへきれきである。

好きなアイドルや男の話しは無く、キャラクターばかりだった浅葱が、まさかの結婚報告をしに来たときは驚いた。

俺は思わずこう聞いた。

「どこかの出会い系か?」

父と娘の会話の少なさを表しているような発言をした俺に怒ることもなく、何秒間沈黙した後に浅葱はこう答えた。

「実は結婚することになった切っ掛けは子供だけどね。それでも相手からプロポーズをしてもらったのだ。いいだろう?」

そういって笑顔を見せる。

眩しかった。

今日の日差しのように眩しかった。

あの頃の俺は、子供のころからこうしてつき合いのある従妹に恋愛話しを隠されるくらいの人物だったということだ。

恋愛とは無関係と勝手に思い込んでいた俺は、こいつの親にでもなったのか「嘘だろ?」とか「どこのどいつっていうんだ、その相手は?」などと真面目に問いかけていた。父親か俺は?

いや、違う。だが、その時の俺は言わずにはいられなかった。

それで俺は、その従妹からの衝撃な告白にメンタルも鍛えなおす切っ掛けを与えられた。

本命ではないけれど、試しにお付き合いしてみるということをしていく内に、目的を忘れて遊ぶようになってしまっていた大学ライフ。

一旦整理したいと考え、この従妹に付き合ってもらいながら整理した。

完了し終わった祝いに、ご褒美カフェで乾杯をした。そんな俺と浅葱の二人のツーショット写真を浅葱の旦那に送った。

「お茶はいりましたよ」

浅葱の旦那が声を掛けに来た。

紹介されてさらに驚いたことに、同じ学校で違うクラス出身の男子だった男だった。その男と学生の時から付き合い始めた。

「俺があれこれ調子こいている間に、男女のお付き合いと言う物をしっかりと構築していたわけだ。この従妹はちゃっかりと」

と当時発言したら、「ちゃっかりの意味が分からん」と照れながら返事をされて、イラついた俺はティッシュの紙の箱を足元に投げつけた。

この事実を知っていた妹に盛大に笑われ、親からは呆れられた。そう俺以外の俺の家族は知っていた。

俺はいったい。

自分のアイデンティティさえ疑問を呈するようになっていた。

「順調かい?」

「まぁまぁだね」

「よかった」

「スイカも食べるかい?」

「ほしい」

「わかった。持ってくるね」

俺の前で繰り広げられる若い従妹夫婦の会話。思い出した記憶が今の俺の思考をバグらせた。

「しっかり恋愛している浅葱の姿が映ってる」

呆れた眼差しと心配そうな眼差しに我に返ることができた。

「ごめん。すくってくれてありがとう」

「夏の暑さにやられたかな」

「そうだね」

この従妹の旦那は旦那で、初めて会った時に、学生時代の付き合っていた当初から俺の話しを浅葱から聞いてきたので、初めて会った時に俺に対して親近感を既に持っていた。

本当にあの時は恥ずかしかった。

お祝いは当時のおれが出来る精いっぱいなものを用意して贈った。大き目の座れるクッションと大き目なひざ掛け。大学生でバイト代しかなかった俺の精いっぱいはそれくらいだった。

主に従妹の趣味よりのチョイスだったはずだが、文句はいられていない。

「ふふふふふ」

「なんだ」

「実は二人目ができた」

「そうか」

「驚かないんだ?」

「そんなことはない」

「そう? 子供二人目」

「おい、こんな嬉しいことはない」

「あははは」

「お祝いだお祝い」

「はい、お待たせ」

「ありがとう」

「なぁ、お祝いいつにするんだ?」

「え?」

「伝えた」

「そうか。わかった。今度は何をくれるんですか?」

「は。まったく。俺らはまだ新社会人一年目だぞ」

「はい。なのでお祝い期待しています」

「同じ新社会人に向かって言うセリフか?」

「はははは」

「今度、俺。ギフトカタログって奴にチャレンジしてみたいから渡したカタログから選べ」

「なんだそりゃ?」

「祝いと言ったらカタログだろって言ってたしな」

「誰が?」

「テレビのCM」

「それはそのカタログの会社のCMでしょ」

「いいだろう」

「良いの載っている送ってね」

「うるさい。そこはおれが選ぶ」

「ありがとうね」

顔を見ると目が合った。

「おめでとう」

「うん」

「あぁ」

「あー! 彼女持ちのかっこいい彼氏になるどころかだんだん俺おじさんになっていってるな」

「ははははは」

「ははははは」

「違いない」

「そうだね」

「それじゃ、もうひとふんばりしますか」

「おう」

「じゃ、今度は僕も参加します」

「おう、頼む」

三人で蔵に入る。

すると浅葱と旦那が立ち止まって、俺に言った。

「自分たちへのお祝いの前にお清めを頼んでしてもらった方がいいよ」

と言った。

従妹に目線を向けると、従妹は説明した。

「私の旦那ちゃん見えるタイプ。ちなみに私も見えるタイプ」

「わーぉ」

お前はどれだけ俺を驚かせれば気が済むんだ。

「俺たちを恨んだってしかたないだろう?」

誰かに語り始める旦那さん。

「おい、いったい何が」

「君の問題は君の問題だし。俺たちの二人目の子供と君のこととは別の話しだから」

旦那さんが様子をうかがうような姿から、大きくため息をついてから、教えてくれた。

「どうやら納得して帰っていったみたい」

「そうか」

安堵する俺に、

「よかったら僕の知り合いを紹介するよ」

「なるべく早くが良いってことか」

「そうですね。今回はなるはやで」

「わかった。親に伝えておかないと」

「わかりました。それではさっそく連絡してきます」

「掃除して整頓しているから怖くなって出てきたって言ってる」

従妹の衝撃的な発言に、俺は素っ頓狂な声を出した。

「今のお人とは別のお人なのかい?」

「昔の人の話し方になってるよ」

「どっち?」

「あぁ、ここに何人かで住んでたんだって。なのに掃除しに来るからって怒ってる」

「ここは俺の親がそのまた親から引き継いだ家でその一部である蔵ですよ。お分りですか?」

「わかっとるわって」

「いつから住んでいたんですか?」

「お前のじいさんより年上だぞ俺は」

「わーぉ」

じいちゃん。帰ってきて。大事な話がありますから。

「まあまあここはひとつ、お話し合いをいたしましょう」

従妹夫婦が間を取り持ち、浅葱の旦那の知り合いを交えて、数日間に及ぶ話し合いが行われた。

掃除しても良いが服装時にとどめる。

空気の入れ替えはしても良い。

物の配置は、お互いの意見を交える。




主人公の俺はたくさん驚かされていましたね。

みなさんが俺だったら一番どれに驚きますか?


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