第二十話 遠慮しないで罰を提案したらこうなったでござる
テラは丁寧に道を教えてくれて、私はそれに聞き惚れながら王城内を目指す。
「しぐれ、俺への別の罰とはなんだ?」
「んえ?!」
「なあなあにはできないぞ? なにをすればいい?」
「あー…、えーっと…、んーと…」
もじもじと手を動かす。
もう少し歩けば城の中の自分も分かる場所まで来ているから、他の仕事もあるテラとはこの先で別れることになる。
それを分かって、今ここで言えと促しているのだろうことも理解する。
ここで言っておかないと、聞いておかないと、今夜、テラの部屋で会えるかも分からないし、内容だけでも知っておかないと行動に移せないと思ってくれているのだろう。
「あの、……、……もうちょっと…」
「もうちょっと?」
身を屈めて、顔を覗き込んできてくれる。
身長差があるから、ボソボソ言う私の声が聞こえるように、私の背の高さに合わせて。
肩までの金色の髪が流れる音も聞こえた。
大好きな顔が近づいた、と、心拍数が上がる。思考が溶けかかる。
「しぐれ?」
「ひゃい…、あの、もうちょっと、テラ様といちゃいちゃしたいれす……」
欲望ダダ漏れ。
ワガママでしかない。
「そ…っ、んなものが罰になるものか!!」
叫びかけたテラだったが、どうにか声量だけは落とした。
「お時間を奪います……」
「じか…っ」
テラはすぐに身を正し、片手で口元を押さえた。
見上げた指の隙間から、ニヤついた口元が見える。
「駄目ですか…?」
駄目なら他のお願い事を考えなければいけない。
ほんとは、罰、なんてとんでもない。
お忙しいのに、私のために時間を割いてくれるだけでも、十分罰みたいなものなのに。
「……駄目なわけがあるか。そういうのはご褒美っていうんだぞ? わかってんのか?」
「はい、私にはテラ様の一挙手一投足すべてがご褒美です」
「あんたじゃない、俺にだ」
「ふえ?」
大きな手が、両手が、顔を包み込むように持つ。
そのまま顎を引き上げられて、唇の先が触れるだけの優しいキスが降った。
「何もなければ、夜に、……部屋でな」
「テラアストライガ様、嬉しぃ……」
「ほら、やっぱりご褒美だ」
もう一度唇が触れてから、惜しむように離れていった。
離れたくない、そばにいたい。
「ちゃんと夜まで我慢しろよ? 俺も我慢すんだから」
「はい…っ」
「またな」
「はい」
テラは軽く手を振って、第三兵団兵舎の方へと歩いていった。
その姿が見えなくなるまで見送って、グリシャを探しに城の中を行く。
案外やらなきゃいけないことは多い。きっと忙しくて、夜なんかすぐだ。
……テラ様も、我慢? なにを?
まあ、夜になれば分かるかな?
気合を入れて、自分がやれることをやりに勇み足で進んだ。
登場キャラクターの名前
四方しぐれ
テラアストライガ・ビイ




