第10話「家族のかたち、未来の光」
――六月の終わり。
初夏のやわらかな日差しが、カーテンの隙間からリビングを照らしている。
神谷家の朝は、静かに、ゆっくりと始まっていた。
リビングには小さなクーファンがふたつ。
ひとつには大翔が、もうひとつには遥香が、すやすやと眠っている。
ふたりの寝息は、まるで音楽のように優しく、部屋の空気さえも和ませていた。
キッチンでは、美紅と瑞稀が並んで朝食の準備をしている。
「美紅、もう少しだけ火弱めにすると卵ふわっとなるよ」
「ほんと? 瑞稀姉さん、料理ほんと上手になったよね」
「それ、美紅にも言われる日が来るとはね……ちょっと嬉しいかも」
ふたりの間には、まるで実の姉妹のような自然な笑顔があった。
それから、美紅が瑞稀にそっと言う。
「……ねぇ、また女子風呂、行こうよ。たまにはふたりでのんびりしたい」
「もちろん。こっそり温泉でもいいし、近場のスーパー銭湯でも。
あんた、あんな完璧な見た目してんのに、実は風呂場じゃめっちゃ甘えてくるんだもん」
「だって……瑞稀姉さん、頼りになるんだもん」
「ま、困ったことがあったら、何でも聞いてくれていいからね。
悠真のことでも、子どものことでも」
「……うん」
そんな会話をしていると、奥の部屋から寝起きの足音。
「……おはよう。ふたりとも早いな」
「悠真、おはよう! ふたりは今、静かに寝てるよ」
「あぁ、ありがとう……。なんかさ、毎日が夢みたいだな。
学生だった自分が、もう父親になってて、朝からこんな風に……」
瑞稀がふと笑って言う。
「ほんとに変わったよね、あんた。
でもね、あんたがしっかりしてる分、美紅も安心してる。
……母親の顔、ちゃんとしてるよ。あんたの奥さん」
悠真は、ふたりが並ぶキッチンを見ながら深く頷いた。
「俺がこんな風にやってこれたのも、ふたりのおかげだよ」
◇
その日の午後。
ベランダには、ふたり分の小さな服が風に揺れていた。
悠真は抱っこ紐で大翔を抱きながら、ソファに腰掛け、隣では美紅が遥香を抱いていた。
ふたりとも、目元は少し疲れているけれど、表情はとても穏やかだった。
「ねぇ、悠真くん。
これからさ、子どもたちが成長して、話すようになって……
“パパとママって、どんな風に出会ったの?”って聞かれたら、どうする?」
「うーん……“ちょっと特別な出会い方だったんだ”って話すかな。
でも、交際0日婚だったとは……言えないかもな、はは」
「言える日が来るかもしれないよ。
だって、ちゃんと愛し合って、ここまで来たんだもん」
ふたりは顔を見合わせて、微笑み合った。
その瞬間、子どもたちの小さな手が同時に動いて、まるで“家族”という言葉を確かめるように空を仰いだ。
◇
夜――
食後の片付けが終わり、リビングに集まった5人。
悠真は大翔を、美紅は遥香を抱いて、
瑞稀はクッションに寄りかかってリモコンを片手にテレビを眺めていた。
そのまま、美紅がぽつりと口にする。
「これから、いろんなことがあると思う。
だけど……この家の中に、“大切な人たち”がいる限り、きっと大丈夫だよね」
「うん。そう思う」
悠真も、瑞稀も、そしてまだ言葉を持たないふたりの命も――
その静かで温かな“未来の一日”を、しっかりと刻み込んでいった。
そして、神谷家の光は今日もまた、やさしく灯っていた
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