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第9話「新しい命の誕生と、内定の知らせ」



六月の中旬――

雨上がりの病院の廊下。

除湿機の静かな音が響く中、ひとり椅子に座っていた悠真の膝の上には、握りしめたスマートフォン。


“いよいよ、今日なんだ”


朝から落ち着かない時間が流れていた。

予定日より少し早く破水した美紅は、そのまま病院へ。

悠真は講義を欠席し、瑞稀とともに病院に駆けつけた。


分娩室の扉の向こう。

助産師の声、医師の指示、そして微かに聞こえる――妻の声。


心配と期待。

喜びと不安。

すべてが胸の中で交錯する中、悠真は両手を組んで、ただ祈るしかできなかった。


「頑張れ、美紅さん……」


そして――


「おめでとうございます! まずは男の子です!」


看護師の声が廊下に響いた。

それから、もうひとつの産声。


「続いて、女の子も無事に産まれましたよ!」


「……っ!」


言葉にならない感情が、悠真の胸に溢れた。

目元を押さえ、深く深く息を吐いた。



ガラス越しに見える、ふたりの小さな命。


ひとりは男の子。もうひとりは女の子。

ふたりとも、しっかりと手を動かしながら、静かに眠っていた。


瑞稀がそっと隣に立つ。


「名前、決めてたんだっけ?」


「うん……男の子は、大翔ひろと。女の子は、遥香はるか


「……いい名前。まっすぐ育ちそうだよね、どっちも」


ふたりの子どもを、ふたりきりで見つめていた悠真。

その手の中のスマホが、静かに震えた。


――件名:「内定のお知らせ」


「……え?」


開いた瞬間、全身が震えた。


『神谷悠真様

弊社の最終選考を通過され、採用内定が決定いたしました。

入社日は〇月〇日となります。詳細は追ってご連絡いたします。』


画面を何度も見返して、悠真はゆっくりと息を吸った。


「……やっと、“父親”になれる気がする」


「もうなってるよ」


瑞稀の言葉に、悠真はゆっくりと頷いた。



病室のベッド。

点滴を付けたまま眠っていた美紅が、うっすらと目を開けた。


「……悠真くん?」


「美紅さん。無事に……ふたりとも、元気に産まれたよ」


「……よかった。ほんと、よかった……」


「そして、俺――内定ももらえた」


その瞬間、美紅の瞳から涙がひと粒、零れた。


「……おめでとう。あなた、本当に……すごいよ」


「ありがとう。

でも、すごいのは……命を産んでくれた、あなたの方だよ」


ふたりの手が、そっと重なり合う。


小さな命がこの世界に生まれ、

ひとりの若者が、“夫”として、“父親”として――

確かな一歩を踏み出した瞬間だった。



最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

もしこの物語に少しでも「面白い!」と感じていただけたなら——


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読者の皆さまの応援が、物語の未来を動かします。


「続きが気になる!」と思った方は、ぜひ、見逃さないようブックマークを!

皆さまの応援がある限り、次の物語はまだまだ紡がれていきます。


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