第7話「小さな命と、新たな道」
それは、ひとつの始まりの知らせだった。
――“陽性”という診断。
妊娠検査薬の結果を受け取り、病院での検査を経て、正式に医師から伝えられた。
「妊娠6週目ですね。……双子の可能性もあります。おめでとうございます」
診察室のその言葉に、美紅は一瞬、呼吸を忘れた。
指先が震える。鼓動が跳ね上がる。
だが、それは“怖さ”ではなかった。
これまでに経験したことのない、特別な感情――
“命を授かった”という、圧倒的な実感だった。
◇
家に戻ると、瑞稀がいつものようにリビングでテレビを見ていた。
「おかえり、美紅。どうだった?」
「……妊娠、してた」
「……っ!」
瑞稀が思わず立ち上がり、数秒沈黙した後、ゆっくりと歩み寄って、美紅を抱きしめた。
「おめでとう。ほんとに、おめでとう」
「ありがとう、瑞稀ちゃん……」
瑞稀の目に、わずかに光るものが見えた。
それを見て、美紅もまた涙をこぼした。
◇
その夜。
帰宅した悠真は、玄関で待っていた美紅の表情から、すぐにすべてを察した。
「……できたんだね」
「うん。6週目。しかも、双子かもしれないって」
その言葉に悠真は目を見開き、すぐに美紅を抱きしめた。
「ありがとう……ほんとに、ありがとう」
「こちらこそ……私を、お母さんにしてくれて、ありがとう」
しばしふたりは、何も言わずに抱き合っていた。
◇
翌日、美紅は自らのInstagramに、一枚の写真を投稿した。
《白いニットの上から、お腹に手を当てて微笑む、横顔のショット》
そして、添えられた文章。
⸻
ご報告
いつも応援してくださっている皆さまへ、大切なお知らせがあります。
この度、私・篠原美紅は、新しい命を授かりました。
突然のご報告に驚かれた方もいらっしゃるかもしれません。ですが、今の私の心は、温かく、満ち足りています。
母になるというのは、まだ実感が追いつかないほど大きな出来事です。
それでも、お腹の中に確かに宿る命と向き合いながら、これからの日々を大切に過ごしていきたいと、心から思っています。
体調と赤ちゃんのことを第一に考え、
本日をもって、しばらくの間、モデル・女優としての活動をお休みさせていただくことにしました。
芸能活動を始めてから、数えきれないほどの方々に支えられ、励まされてきました。
私にとって皆さんの存在は、かけがえのない宝物です。
ファンの皆様、関係者の皆様、
そして、どんな時も私を信じて応援してくださったすべての方へ――
心から、感謝の気持ちをお伝えしたいです。
そして何より、夫である彼と、ふたりで支え合いながら、新しい家族を迎える準備をしています。
彼が隣にいてくれることが、今の私にとって一番の安心であり、希望です。
これから母として、ひとりの人間として、また少しずつ成長していけたらと思います。
どうか、これからも温かく見守っていただけたら幸いです。
また皆さんの前に立てる日まで、しばしの間、お時間をください。
20○○年 ○月○日
篠原 美紅
⸻
投稿は瞬く間に話題となった。
「え、美紅ちゃんママになるの⁉︎」
「え、結婚してたの⁉︎」
「しかも相手が一般人ってマジかよ……」
「でも、幸せそう……泣いた……」
「これが本当の“推しの幸せを願う”ってやつか……」
コメント欄は、驚きと祝福の声で溢れた。
◇
瑞稀はそのコメントの一つひとつを見ながら、美紅の背中をそっと支えていた。
「これから大変だよ。でもさ……私たちなら、いけるよね。3人なら」
「うん。……私、絶対に幸せな子にする。悠真くんと、あなたがいれば――絶対に大丈夫だから」
◇
その頃――
悠真は、大学4年生として、就職活動の準備を本格的に始めていた。
「……父親になるって、こういうことなんだな」
カバンの中には、複数の会社資料と、面接練習ノート。
顔には迷いのない表情が宿っていた。
“君のために、家族のために。俺は未来に歩き出す”
最後まで読んでくださり、ありがとうございます!
もしこの物語に少しでも「面白い!」と感じていただけたなら——
ブックマーク & 評価★5 をぜひお願いします!
その一つひとつが、次の章を書き進める力になります。
読者の皆さまの応援が、物語の未来を動かします。
「続きが気になる!」と思った方は、ぜひ、見逃さないようブックマークを!
皆さまの応援がある限り、次の物語はまだまだ紡がれていきます。




