第5話「卒業式――僕の妻に、ありがとう」
晴れ渡る青空の下。
大学のキャンパスは、晴れ着やスーツ姿の学生たちで賑わっていた。
卒業証書を手に笑顔を浮かべる者。
友人たちと写真を撮り合う者。
そして、未来への不安と希望が入り混じった、春の風。
その中に――篠原美紅の姿があった。
華やかなワンピース姿に、控えめながら洗練されたメイク。
瑞稀と並んで歩く彼女に、周囲の視線が自然と集まる。
「……やっぱり、目立つなぁ」
瑞稀がぽつりと呟いた。
「仕方ないよ。私、元々表に出る仕事だから」
「それにしても、今日だけは弟の“奥さん”モードでいてよ」
「もちろん。悠真くんの大切な卒業式なんだから」
◇
式典の後――
悠真がキャンパスの一角に姿を現すと、同級生や後輩たちから歓声があがった。
「悠真、おめでとーっ!」
「篠原美紅さんってほんとに奥さんだったんだな……!」
「マジか……奇跡すぎるだろ……」
すると、ひとりの女子学生が恐る恐る手を挙げた。
「あの……握手、してもらってもいいですか?」
美紅はやわらかく微笑んだ。
「写真はごめんなさい。でも、握手と……もし持ってる人がいればサインくらいは大丈夫よ」
瞬く間に、数人の学生が手にしていた写真集を差し出した。
「持っててよかった……」と涙ぐむ後輩男子の姿もあった。
サインをしながら、一人ひとりに「ありがとう」と丁寧に声をかける美紅。
悠真はその姿を、少し照れくさそうに眺めていた。
「……やっぱ、すごいな、俺の奥さんって」
◇
ひと段落ついた頃――
美紅はふいに悠真の頬に、そっとキスをした。
それを見ていた学生たちが一斉にざわつく。
「ヒューッ!」
「見せつけやがって〜」
「こっちは彼氏もできてねーっつーの!」
「お似合いだよ、マジで!」
その声に悠真は顔を赤らめ、美紅も恥ずかしそうに微笑んだ。
だが、その後ろで一人立っていた男がいた。
かつて、美紅に密かに思いを寄せていた同級生――一樹。
「……もう、奪えねーわ。完敗だな」
隣にいた千帆と叶恵――一樹の3つ子の妹たちが、そっと微笑んで言った。
「悠真さん、ほんとにお幸せに」
「兄の分まで……美紅さんを、愛してやってください」
すると、美紅が一歩近づいて言った。
「……確か、一樹くんだったよね?
以前、私の握手会に来てくれてたよね。ちゃんと覚えてるわ。
ねぇ、もし悠真くんに何かあったら……助けてくれる?」
「えっ……」
「あと、千帆ちゃんと叶恵ちゃんも。何かあったら、家族みたいに支えてね?」
3人は言葉を失い、ただただ頷いた。
◇
その様子を少し後ろから見ていた瑞稀は――
悠真の肩に肘を乗せ、スマホをいじりながら笑っていた。
「……ほんっと、あんたってモテるよね。あたしの弟じゃなかったら、ちょっと嫉妬してたかも」
悠真はその言葉に、にやっと笑った。
「姉貴が“瑞稀”でよかったよ。
俺、美紅さんと一緒にいられるのは、きっとそのおかげでもあるから」
瑞稀はふっと息を吐いて、小さく笑った。
「ったく……泣かせんなよ、バカ」
そして、ぽんと弟の背中を叩いた。
――こうして、悠真は大学を卒業した。
けれど、それはゴールではなく、新たな一歩の“始まり”だった。
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