第3話「春の終わりと、最後の飲み会」
四月の終わり。
学内の桜もすっかり葉桜となり、季節は緑の香りをまとい始めていた。
大学4年生として迎える最初の飲み会。
それは、長い学生生活の“一区切り”として、代替わりしたサークルの先輩たちとの送別を兼ねた集まりでもあった。
「お前ら〜今日は楽しもうぜぇ〜!」
と音頭を取ったのは、2つ上の先輩、景だった。
同じく司会進行を務める航や圭吾も忙しく立ち回り、参加者は100人を超えていた。
その中心に、悠真の姿もあった。
すでに「美紅さんの旦那」として多くの学生に知られており、声をかけられるたびに軽く会釈をしていた。
「……俺って今、完全に芸能人の“関係者”だよな……」
「まぁな。でも、お前はお前だろ?」と航が笑って肩を叩く。
◇
テーブルには、ビール瓶や日本酒の升が並んでいたが――
「悠真、飲まないのか?祝い酒だぞ〜!」
「……いや、俺はサワー系でいくわ。ビールとか日本酒は苦手で」
「えぇー⁉︎ でも、結婚したんだろ?男はビール一気だろ!」
「結婚してても、飲めないもんは飲めないんだよ」
そんなやりとりに、女子たちがくすくすと笑う。
「さすが美紅さんの旦那さん……大人だわぁ」
「ってか、悠真くんってサワー似合うし」
「でも、ちょっとくらい酔った顔見てみたいけどねー?」
「やめてくれ、それ絶対拡散されるやつだから……」
◇
飲み会も終盤に差しかかるころ――
先輩の勝が立ち上がって、皆に向けて話し出す。
「今日はみんな来てくれてありがとう。4年生は、いよいよ卒業まで1年――。
今の仲間と過ごす最後の春を、悔いのないように楽しんでくれ!」
歓声が上がる中、悠真はふとスマホを取り出して、画面を見た。
「美紅さん(既読)」のトークルームには、たった一言。
「遅くまでお疲れさま。帰ったら、お茶でも淹れるね」
その言葉だけで、酔いも疲れも、不安も全てが溶けていくようだった。
◇
帰り道――
サークルメンバーと別れたあと、悠真は一人で夜の坂道を歩いた。
春の風はもう少しだけ、冬の名残を連れている。
「……“最後の春”か」
そんな言葉が胸に滲む。
家に帰れば、美紅が待っている。
そして、瑞稀姉さんが「飲みすぎてないでしょうね?」と笑いながら出迎えてくれるだろう。
“変わっていくもの”と、“変わらずあるもの”。
その両方を、今はしっかりと感じていた。
◇
玄関を開けると、柔らかな明かりと――
部屋着姿で、湯気の立つお茶を手にした美紅が、ほっと微笑んだ。
「おかえり、悠真くん。……最後の飲み会、お疲れさま」
「……うん、ただいま」
その瞬間、悠真は確かに思った。
――“この日常”を守るために、俺は進む。これからの人生を、きっと”
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